大村千吉さん(1922~1991)。亡くなる前年の1990年頃まで数々の映画・ドラマに出演、ギョロ目の独特の風貌で一度見たら絶対忘れられない存在感である。「キングコング対ゴジラ」(1962)のファロ島探検隊の通訳・コンノ役を覚えている方も多いだろう。このファロ島上陸の一連のシークエンスはまさに抱腹絶倒で、何度見ても大笑いである。この映画では大村さんは比較的普通の役で出番も比較的長い。というのも大村さんの他の作品と言えば

ウルトラQ第一話「ゴメスを倒せ!」(1966)のアル中の工事人とか(アル中を雇うなよ!笑)

ウルトラセブン第二話「緑の恐怖」(1967)のワイアール星人に襲われる酔っ払いとか(また!笑)そんなんばっかり!

ウルトラマン第29話「地底への挑戦」(1967)では炭鉱夫の役だが金(きん)に取りつかれてちょっと気がヘンになった上、高熱を出して更におかしくなりイデ隊員に絡んだりする(汗)途中は殆ど活躍しないとはいえ、エンディングまで出番がある珍しい役ではある。

「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964)の阿蘇山の帽子拾い屋は出番も短く、復活したラドンのため命を落としてしまうが、大体がアル中か、すぐ死んじゃう(笑)短い出番で印象を残すエキスパートといえるだろう。

強い印象を残す役と言えば本来ならこれは外せない。

「怪奇大作戦」第24話「狂鬼人間」(1969)の狂人役である。このエピソードは現在欠番扱いで封印されており見る事が叶わない。ウルトラセブンの第12話「遊星より愛をこめて」と並ぶ円谷作品の2大封印エピソードだ。ただ、「遊星より愛をこめて」が封印に至る経緯がハッキリしているのに対してこの「狂鬼人間」は封印に至った理由がいまだにハッキリとは判明していない。自主的な封印なのか、どこからか抗議をされたのかさえ不明である。精神に異常を来した者による犯罪というデリケートな問題を扱っているため、軽々しく封印を解け、などとは言えないのであるが、私は以前幸いにも一度だけこの作品を見る機会があった。問題提起作として非常に重要な作品であると感じたし、なにより単純に面白いのだ。正直言って「遊星より愛をこめて」より良く出来ていると私は感じた。

臭い物に蓋をするのは簡単だが、「遊星より愛をこめて」ともども是非何とか公開して、一体何が問題なのかきちんと議論を深めて欲しいと思っています。

大村さんの怪演を見るためにも・・・。