ジェームスは少し飲んで、勢いがついたのか、いつもより若干饒舌で、表情も豊かになった。その分、私がミコラスの話をすると少し、面白くなさそうな表情を見せながらも、私がミコラスと付き合うにあたって悩んだこと、人間関係の事などには真剣に耳を傾けてくれた。
ひとしきり私の事を話した後は、今度は私から、今のジェームスの「気持ち」について、質問をした。
「で、今、ジェームスの気持ちはどう感じてる?」
「今日それを聞かれることはわかっていたよ。僕自身も何度も自分にその質問をしてたんだよ、Hanahに前回言われたことでね。」
今まで、私の意見にあまり耳を傾けようとしなかった頑固な彼には珍しい言葉だった。
「正直言うとね、Mixtureって感じなんだ。ロンドンを出るのは嫌だと言う気持ちと、でもこのままでは嫌だ、何か行動を起こしたいって気持ちと」
その気持ちは凄く理解できた。出会った時から彼は今のキャリアについてどう、キャリアアップしていくのか悩んでいた。正直、彼がしている仕事には彼の学歴や経験はover qualifiedだとはいつも思っていた。でも彼としてはそれでも、新しいキャリアだから0からスタートで良い、と思って始めた。その会社の中で多少の昇進などはあったが、そこからなかなか、何処へもつながらなかった。
そういうのもあって、私との関係を発展させたくなかったのかもしれないし、私が彼にとってそこまで重要ではなかったのかもしれないし、そのあたりはこうやって話していても、わからない。
また、話を聞いていても彼の本当の気持ちはよく分からなかった。もう、今の会社に退社届を出してしまった今、ちいさな街に引っ越すことへのポジティブな面を信じたい気持ちは伝わってきた。だから私はそれ以上は踏み込まず、彼がこの決断を後悔しない事だけを祈った。
だが、何かが思う様に行かないときは、何かの気づきのきっかけであることは大いにある。思い通りにならない仕事、そして前の彼女が新しい人と交際を始めた。寂しくなればいつでも誘えば出てくる友達プラス(体の関係はないけど、まだ私の気持ちはあったと言う意味で)の女友達が少し遠い存在になった…この2つの条件がそろえば確かに何か行動を起こすきっかけにはなりうるだろう。
本題の後は付き合っていたころの様に、馬鹿げた冗談を言い合っては笑い、話は尽きず、レストランの後、パブに移動し、パブが閉店するまで話し続けた。
私はバスで帰る事にしていたので、バス停に行くと言うと、ジェームスはバス停まで送ると言った。彼は自転車だし、面倒だろうと思ったので断ったが、彼は今日は頑固に送ると言った。私が乗るはずのバスを結局、何度見送っただろうか。彼は会話を止めなかった。4台くらい見送ったところで、私から「次のには乗るね」と笑って言うと、ジェームスも「そうだね、さすがに寒くなってきた」と笑った。でも彼がどうしても名残惜しそうなのがわかったので「まだジェームスが仕事終わるまで、1か月あるよ。もう一回会えるよね?」と言うと彼の顔は明るくなった。
そうすると5台目のバスが来た。
「じゃあ2週間後に!」
と言って私達はこの日は別れた。
最後までお読みいただきありがとうございます。ブログランキングに参加しています。以下のリンクにポチして頂けると大変うれしいです。