古代ローマを起源とする異様な人物や動植物等に曲線模様をあしらった美術様式。

語源は、地下墓所や洞窟を意味する grotta(イタリア語)。
隠れた場所(ギリシャ語の krypte)に遡る地下墓所、洞窟(ラテン語の cryptaに由来する)である。ここで「洞窟」というのは、西暦64年のローマ大火の後にネロが建設を開始した未完の宮殿群「ドムス・アウレア」の部屋と回廊のことを指す。これらは長い間放置され地中に埋もれていたが、15世紀になって再発見された。

ドムス・アウレアの宮殿群は過度な装飾様式の美術品で飾られており、再発見されてから模倣されるようになった。

そこには人・動物・植物などをモチーフとした装飾壁面が施されており、自然法則や本来の大きさを無視して人から植物へ、さらには魚、動物へと連続して変化する奇妙な模様が見られた。盛期ルネサンスの16世紀に、ラファエロがその模様をバチカン宮殿回廊の内装に取り入れ、これが「地中 = 洞窟(grotto)で発見された古代美術」から【グロテスク装飾】と呼ばれるようになった。また、ラファエロが復興させたグロテスク文様を指して、「ラファエレスク文様」とも呼ぶ。グロテスク装飾は、マニエリスムの時代にも多く使われた。

昨今【グロテスク】と云う語は、奇妙・奇怪・醜怪・不調和・不気味・奇抜なものを指す総称的な形容詞として、風変わりで歪んだ形を指して使われるようになってきている。
日本語では、この場合グロ、グロい等とも略される。