閉鎖系に於いては時間が経過しても物質の総質量が保たれるという物理学及び化学の法則である。閉鎖系内で物質が移動したり、その形状が変化することはあっても質量そのものが生み出されたり、消失したりすることがないことを意味する。
例えば、化学反応の前の質量と後の質量は等しくなる。
質量保存の概念は、化学・力学・流体力学等の多くの分野で広く使用されている。化学反応に於ける質量保存の法則は、18世紀後半にアントワーヌ・ラヴォアジエが精密な実験を行い、提唱した。この法則は、錬金術から化学の現代自然科学への進歩の歴史において非常に重要であった。
実際には、古典力学に於ける仮定のひとつに過ぎず、自然の基本法則ではないことが知られており、特殊相対性理論に於ける質量とエネルギーの等価性に従うように修正する必要がある。さらに非常にエネルギーの高い系では、素粒子物理学に於ける核反応や粒子 - 反粒子消滅の場合のように、質量の保存は成り立たないことが示されている。

【質量保存則】ともいう。

素粒子論・核物理・宇宙論などを除く自然科学のほとんどの分野で実用上用いられている法則である。

化学反応の前後で質量変化が実験的に観測されなかったことから生まれた法則だが、現在では相対性理論に基づく質量とエネルギーの等価性がより根本的な法則で、その近似に過ぎないとされている。尤も、質量とエネルギーの等価性は、自然科学の多くの分野では問題とならず、多くの場面で運用上有効な法則である。

物質の根源に迫ることを目的とした素粒子論や宇宙論等の研究対象に於いては、全く成り立っていない。例えば、培風館の物理学辞典には、かつて『物質は不滅だ』などと考えられていた時代があったので、こうした法則が主張されたが、『こうした考えは捨てなければならない』と書かれている。

核反応の世界では実験的に十分に測定可能なだけの質量変化が起こっており、反応の前後で元素の種類や各々の物質量も変化していく。さらに、素粒子論の世界では物質・質量の生成や消滅が広範に起こっている。これらの世界に於いては、この法則や物質の不変性・不滅性は全く成り立っていない。

化学反応に於いても、反応によって放出または吸収されたエネルギーに相当する質量変化が起こっており、質量は厳密には保存されていないとされる。そのことを考慮に入れると『化学反応の前後で、それに関与する元素の種類と各々の物質量は変わらない』という表現がより正確な表現となる。

アメリカやヨーロッパの初等教育では『化学反応の前後で、質量の総和は変わらない』というような law of conservation of mass の指導はあまりされておらず、化学反応で保存されるのは物質量であることを強く押し出す為、principle of mass/matter conservation と表記される。