従来就いていた官職や家業等から離れて生活を送ることを指す。
【隠退】とも言う。

中国や日本には隠遁思想(隠逸思想)が見られるものの、両者には異質な点があり、中国の『後漢書』「逸民列伝」等に見られる隠遁は仕官の場あるいは官僚の世界を離れることを意味した。
日本では『懐風藻』等に中国風の隠逸思想が見られるが、その隠逸思想は、未だ観念的なものだったと指摘されている。日本で中世的な遁世思想が成立するのは平安末期以降のことで、末法思想、出家思想、貴族社会の没落等を背景に生じており宗教的な動機が大きく関与している。なお、官僚制との関係では、日本の上代の律令の注釈書である『令義解』には「凡ソ官人、年七十以上ニシテ致仕スルコトヲ聴セ」とあり、官人が致仕を望める年齢は70歳以上と規定されていた。

民俗学上の隠居の概念は生活単位として隠居を捉える立場と生前相続として隠居を捉える立場に分けられる。

日本の民法上の制度としての隠居は、戸主が生前に家督を相続人へ譲ることを指し、日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第74号)により、日本国憲法の施行(1947年5月3日)と同時に、戸主制の廃止と共に隠居の制度は廃止された。