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Ultimate ONE エピソード ラセツ【善と悪】

 

リサ達が生まれる前…しかし、そう遠くない過去…そこには鬼人の町、ホーンタウンがあった。

鬼人とは、いわゆる人間を主食とする人種であり、彼らにとっては必要不可欠な栄養素である。

 

善や悪は人それぞれに違う価値観であるが、人の生命を脅かす存在を悪というのか。

いや、善も人を殺める…そう、自分自身以外に善と悪を判断することはできないのである。

 

これは、鬼人として産まれた ラセツ の物語である。

 

~ホーンタウンのごく普通の家庭…そこでラセツは生まれ育った~

 

ラセツの母 「ラセツ…あなたは今一番幸せなのよ?なぜなら私のお乳で生きられるんですから。」

 

ラセツの父 「おい。そんな甘いことを言っていてはラセツが大きくなった時、辛い思いをさせるだけだろう。」

 

ラセツの母 「だって…。」

 

鬼人にとって一番生存率が高いのは、母乳で生きられる赤子の時である。

それ以後は生きた人間を捕食しなければいけなくなり、殺されたり、捕食できずに死ぬ鬼人がいることも珍しくはない。

 

若いころの鬼人は親から肉を分け与えられるが、大きくなると自分で狩りができるように教育させられる。

これは、子孫をつなげるために必要な行為で、成人した鬼は、またその子に肉を与えられるようにならなければいけない。

 

もちろん、人間を主食しているのだから人の近くに生息しなければいけないが、最近の人間たちは兵器を持つようになり、鬼人が狩りをすることも難しくなってきた。

 

また、このあたりの人間の政府組織から規制が入り、許可なく人を狩ろうものなら駆除の対象とさえされていた。

 

そんな鬼人にとっては危機的な状況の中、ラセツは育ち成人になろうとしていたのである。

 

~同じ年頃の鬼人に石を投げつけられるラセツ~

 

鬼人 A 「臆病者で病弱なラセツ!おまえなんか、とっとと死んじまえばいいんだ!」

 

ラセツ 「い、痛い…石を投げるなんてひどいじゃないか!」

 

鬼人 A 「人間を食べないおまえなんか!鬼として失格だ!早くこの町から消えろ!」

 

ラセツ 「俺は人間が好きだ!おまえなんかと違って、優しいし、この前なんか怪我した俺を助けてくれたんだぞ!」

 

鬼人 A 「人間が優しいだと?鬼人が人間に愛着を持ったら死ぬだけだ!」

 

ラセツ 「くそっ!俺は…人間を…食べない!」

 

~人間を食べることを拒否している鬼はラセツ以外にもおり、最近ではその趣向も強くなってきている。

 

しかし、人を捕食しない鬼の寿命は恐ろしく短く15~20年程度であり、人を捕食する鬼は300年ほどである。

 

この趣向は鬼にとっては危険的状況と鬼人たちも判断しているが、人間を捕食しようとして逆に殺される例も多く、現在ではどちらが正しいとは言えないのが実情である~

 

そんな中…政府組織は弱体化した鬼の町を滅ぼそうとしていた。

 

~学校のような施設から帰るラセツ~

 

ラセツ 「ただいま。」

 

ラセツの母 「おかえり。あんた、また狩りの授業をさぼったんだって?」

 

ラセツ 「人間を殺して食べるなんて、俺にはできない。」

 

ラセツの母 「そんなことじゃ、自分に子供ができてもご飯をあげることさえできないじゃないの?」

 

ラセツ 「俺は…人を殺すくらいなら…一生一人でもいい。」

 

ラセツの母 「あなた自身の身体のこともあるのよ?あなた…だいぶ弱っているじゃない?早く人を捕食しないと。」

 

ラセツ 「じゃ~言うが、人を殺してまで、生きる価値なんかあるのかよ!」

 

ラセツの母 「辛いのは分かるわ…私だって嫌だもの…。でも、あなたは鬼人として産まれてしまったのよ。」

 

ラセツ 「父さんだって、町一番の強さだったのに、人に殺されたじゃないか!」

 

ラセツの母 「ラセツ、お父さんを悪く言うのだけはやめて!お父さんは他の鬼人のために命を張って人間達と戦っていたのよ!」

 

ラセツ 「…なんで…なんで俺は鬼人なんだよ!くそっ!」

 

~家を出ていくラセツ、周りは薄暗くなっており、家の遠くで煙が上がっている~

 

ラセツ 「何があった?火事か?」

 

~町の鬼人がラセツに近寄る~

 

鬼人 B 「ラセツ!この辺も危ないぞ!おまえは逃げろ!人が襲ってきた!」

 

ラセツ 「人?煙りあがっているところって…人を食べない人たちが集まっている地域だよな?」

 

鬼人 B 「人を甘く見るな!俺たちを根絶やしにするつもりだ!」

 

~すると背後からもドーーーンという音の後に煙がたった~

 

ラセツ 「い、家の方からか!」

 

鬼人 B 「くそっ!潜んでいやがった。すでに囲まれてるぞ!」

 

ラセツ 「俺は、お母さんを避難させる!」

 

鬼人 B 「人間め…」

 

~鬼人 B は街の中央の方へ向い、ラセツは自宅へ戻る~

 

 

ラセツ 「俺の家も火に焼かれている!お母さんは?」

 

~ラセツが家に入ると人間の男とラセツの母の姿があったが、母の首は斬り落とされていた~

 

兵士 「はははは!恐ろしい鬼人たちめ!一匹殺してやったぜ。」

 

ラセツ 「きさまーーーーー!」

 

兵士 「おまえもわざわざ殺されに来たか?気持ちがよいね。害虫どもを駆除するのは。」

 

ラセツ 「お…俺の母さんを…許さん!」

 

~ラセツは逆上し、理性を失い…気が付くと、その兵士を殺しむさぼり食べていた~

 

ラセツ 「お…俺…やっちまった…。だが、なんだ…このみなぎる力は!」

 

~人を食べることで自分にとてつもない力あることに気が付くラセツ~

 

ラセツ 「はっ!町のみんなは?」

 

~彼が正気に戻るともう一つ人の気配があることに気が付く…そこには不思議な雰囲気を放つ男が立っていた~

 

ラセツ 「おまえは!鬼人ではないな!人間なのか?」

 

不思議な男 「俺を食べたければ食べろ…食わせてやる。せめてもの罪滅ぼしだ。」

 

ラセツ 「な、なんだと?気は確かか?おまえ…普通の人間じゃないな!」

 

不思議な男 「今のおまえに言われたくはないが…気が確かではないのは事実だ。」

 

ラセツ 「言っている意味が分からん!おまえも俺たちを滅ぼそうとしているのか!」

 

不思議な男 「状況を冷静に判断しろ。きさまが足りていないところはそこだ。」

 

~気分を落ち着かせて辺りの様子が静かであることに気が付く~

 

ラセツ 「静かだ…人間たちは兵を引いたのか?」

 

不思議な男 「俺の言葉を聞いていなかったのか?罪滅ぼしだと言っただろう?」

 

ラセツ 「どういうことだ?」

 

不思議な男 「俺はおまえの餌となるべき人間たちを…すべて殺した。」

 

~少し考えるラセツ…そして目の前の男がとてつもない強さを持つことを感じ、答えは出たようだ~

 

ラセツ 「ど、どうやって…この短時間で全ての兵士を殺したのか?」

 

不思議な男 「食ったのさ、俺の斬撃でな。」

 

ラセツ 「お前は…何者だ?」

 

スレン 「…スレン」

 

~ある鬼人がラセツの部屋へ入ってきた~

 

鬼人 B 「おい!大丈夫だったか?ラセツ!」

 

スレン 「ふん。」

 

~そういってスレンは部屋を出ていく~

 

鬼人 B 「お…おまえのお母さんが…そして兵士は…食われている…お前がやったのか?」

 

ラセツ 「ああ。兵士は俺が殺した、母の仇だ。」

 

鬼人 B 「今出て行ったヤツは?あいつ…俺たちを襲った兵士ではないようだが。」

 

ラセツ 「わからん。」

 

鬼人 B 「怪しヤツではあったが…」

 

ラセツ 「他の鬼人たちは?」

 

鬼人 B 「数十名は人間たちにやられたが、後は無事みたいだ。それより、人間の兵士たちはかまいたちが出現したと同時に全て無残に斬り殺されている。」

 

ラセツ 「俺たちは…助けられたんだ…」

 

鬼人 B  「まあ~。奇跡ってあるよな?」

 

ラセツ 「きっと、奴だ…すまない。」

 

~というと、スレンを追いかけるように外に出るラセツ~

 

ラセツ 「ヤツ…いや、スレンはどこに行ったんだ?」

 

 

~その後、政府組織は送り込んだ数千の兵士が一瞬で殺されたことを知り、極めて鬼人が危険な人種と認識したため、それ以上の攻撃を仕掛けることはなかった。

政府組織は一団体の単独行動としたが、それにしては兵の数が多すぎたことと、計画された破壊行為だということを鬼人たちも理解をしていた。

また、鬼人たちが解決した問題ではなく、偶然町が救われたこと、次に襲われたときは確実に町が滅びることを知っていたため鬼人たちは目を伏せ、口を閉ざすのであった~

 

数年後

 

~ラセツはたくましく育っていた…父のように~

 

 

鬼人 B 「あの事件から、おまえとはなんとなく親友みたいになってるけどさ。本当に町を出て行くのか?餌はどうするんだ?政府から送られてくる餌 (人間) はもらえなくなるんだぜ?」

 

~政府組織は罪を犯した人間たちをホーンタウンに餌として送っていたのである~

 

ラセツ 「ああ。分かってる。」

 

ラセツ 「俺は…人を食うことにした。ただし、人間にとって悪い奴らだけな!」

 

鬼人 B 「あんなことがあったのに、まだ人間が好きなのか?」

 

ラセツ 「俺たちだって人間じゃないか!」

 

鬼人 B  「え?鬼って言われてるけど…俺たちも人間の仲間なのか?」

 

ラセツ 「ああ、もちろんさ。政府はいずれ俺たちを駆除することを考えているから別種としているが、確かに俺たちは人間だぜ。」

 

鬼人 B  「そっか…他の鬼人たちはおまえを変人扱いしていたけど、俺はおまえと接してきているからわかるぜ、お前が一番世間のことを知っている。」

 

ラセツ 「そうでもないさ…あの事件の時、英雄に言われた…もっと冷静に状況を判断しろって。」

 

鬼人 B 「おまえはその英雄とやらを探しに行くんだな?」

 

ラセツ 「ああ…俺たちは彼に救われた…その恩は返さないと。」

 

鬼人 B 「伝説の鬼人か…」

 

ラセツ 「ん?なんのことだ?」

 

鬼人 B 「いや…小さなころから言い聞かされた、おまえの父のことだ。」

 

ラセツ 「俺も今は父のことがなんとなく理解できる。鬼人を他の人間達に絶滅なんかさせたりはしない!」

 

鬼人 B 「大きく出たな。だがわかるよ。おまえはやってくれる男だって! いなくなるのはさみしいけど、英雄さんにもよろしくな!」

 

ラセツ 「ああ、わかったぜ!鬼人たちが救われる道を考える。彼なら力を貸してくれると思う。」

 

~そうして、ラセツは町を救ったスレンという男を探しに旅に出た。彼とスレンが出会ったのは、それから数年後の話になる~