Ultimate ONE ~第十五話~【クロスランド】

 

~時は少しさかのぼり、場所がわからないところにある誰も来ることがない墓場にて~

 

墓の上に座っている一人の少女がいた

 

謎の少女 「うん!今日もいい星空!町の人は誰もいなくなっちゃったけど。」

 

謎の少女 「あの時からどのくらいたったかな?町が滅びたあの時から…」

 

謎の少女 「最初はみんな魂だけでもここにいたのに、長い年月の中諦めて去っていき…私はたった一人…。」

 

謎の少女 「ふぅ~。ずっと独り言を言い続けているのも退屈ね。でも、私は諦めない…パパたちが戻ってくるまでは。」

 

謎の少女 「でも、なんか今日は違う…胸騒ぎがする…誰かと会える気がする…パパたちかな?」

 

ドーーーン!

 

<地面から何かが飛び出る>

 

謎の少女 「えっ?何?」

 

~地面から飛び出たものは人の腕であった~

 

謎の少女 「腕?墓の死体が蘇った?まさか?」

 

~手は動き地面から出ようとしている~

 

謎の少女 「地面から出たいの?でも、ごめんなさい。私は手伝うことができないの。」

 

レヴナント 「ぶはっ!」

 

謎の少女 「あれ?町の人ではない!あなたは誰?」

 

~地上に出でることができたレヴナント~

 

レヴナント ≪ここは?…私は生きているのか?≫

 

レヴナント 「驚かせてしまったようですみません。私はレヴナントといいます。」

 

謎の少女 「おじさん、いい人?」

 

レヴナント 「いい人?いえ、それは違います。私は市民を守るためとは言え人を殺している。それは善とはいいません。」

 

謎の少女 「ふ~~ん。魂は綺麗な色をしているから、人殺しには見えないけど。」

 

レヴナント 「魂? つまり、ここはあの世…なのか。やはり私は死んだのか。」

 

謎の少女 「うん。おじさんはたぶん死んでいる…私が見えている時点で。でもここはあの世ではないよ。」

 

レヴナント 「あの世ではない?ではここはどこなのだ?」

 

謎の少女 「えっと~。教えてもいいでけど、条件があるの。」

 

レヴナント 「条件?その条件を聞いても良いですか?」

 

謎の少女 「私と遊ぼう?」

 

レヴナント ≪遊ぶ?…そうか、ここはどこかは知らないがこの子はずっと一人でいたようだ…寂しい思いをしていたのか…≫

 

レヴナント 「そういうことなら、喜んで! 何をして遊びましょう?」

 

謎の少女 「う~~ん。鬼ごっこをしたいな!私を捕まえればおじさんの勝ち!」

 

レヴナント ≪鬼ごっこか…一瞬で終わりそうだがそれだと彼女は満足しないだろう≫

 

レヴナント 「では、私が君…そういえば名前をまだ聞いていませんでしたね。」

 

レンナ 「私はレンナ!おじさん、今手抜きをしようとしたよね。それじゃ絶対に捕まらないよ!」

 

レヴナント 「分かりました!本気でいきますよ!」

 

レンナ 「うん!はじめ!」

 

ドン!

 

~レンナを捕まえようとするレヴナント、しかしものすごい速さで逃げるレンナ~

 

レヴナント 「!早い!子供なのになぜこんなに何速く動けるのだ!」

 

レンナ 「すごーーい!こんなに早い人は初めてみた!でもそれじゃ私を捕まえることは無理よ!」

 

レヴナント 「では次こそ本気で!」

 

~それから、鬼ごっこは数日間続いた~

 

レヴナント 「くっ…」

 

レンナ 「今のは惜しかったね。もう少しかな…でもそこから長かったりするけど。」

 

レヴナント 「き、君は何日間も休まず鬼ごっこをしていて疲れないのかい?ご飯も水も取っていないだろう?」

 

レンナ 「ご飯…お水…お母さんの作るご飯、また食べたいな…」

 

レンナ 「えっ?」

 

レヴナント 「捕まえ…」

 

~スキをついて捕まえようとしたレヴナントだったが腕がレンナの身体をすり抜ける~

 

レヴナント 「なんだと!」

 

レンナ 「ははっ!あっぶな~~い!でもレヴちゃんは死んでいるのに私を掴めないのね?」

 

レヴナント 「ひょっとして、君も死んでいるのか?」

 

レンナ 「そう!私もレヴちゃんと同じ!」

 

レヴナント ≪そうか…だから異常な速さと、食事や水を取らなくても平気だったのか≫

 

レンナ 「ひょっとして、レヴちゃん…生きている時みたいにして物を捕まえようとしている?それじゃ掴めないよ!」

 

レヴナント 「実体のないものを掴めるのか?」

 

レンナ 「レヴちゃんならきっとできるよ!」

 

レンナ 「鬼ごっこ再開だね!今度はズルしないでよ!」

 

レヴナント 「わ、分かりました。」

 

~そしてまた数日間鬼ごっこを続けるのであった~

 

レヴナント 「つ、捕まえたぞ!」

 

レンナ 「きゃーーー!レヴちゃんすご~~い!」

 

レヴナント 「ほ、ほんとに実体のないものを捕まえられた!」

 

レンナ 「レヴちゃん、飲み込み早すぎだから!」

 

レヴナント 「はは、レンナさんがいろいろ教えてくれたおかげですよ。」

 

レンナ 「レンナって呼び捨て!」

 

レヴナント 「ああ、レンナ、ありがとう。」

 

レンナ 「レヴちゃんが頑張ったからだよ!それにしてもそんなに頑張って何か用事でもあったの?」

 

レヴナント 「そうだ!私はウエピナという街で殺されてここに来た。もしこの場所がこの世であるなら仲間たちのもとへ戻りたい!心配だ。」

 

レンナ 「いろいろあったのね…あ、そうだった。約束…守らないと。」

 

レヴナント 「私も不思議に思っていたのだが…あの世であるのに墓があるのはおかしい…ここはどこなんだい?」

 

レンナ 「ここ…昔は町があったの。クロスランドって町だったけど、悪い人たちに滅ぼされちゃって。」

 

レヴナント 「なんだって!クロスランドといえばコマースから5万キロほど南へ離れた場所にある神聖国であったと言われている。本当に存在していたのか。」

 

レンナ 「うん!ここには昔教会がいくつもあって人々は神と交信しながら暮らしていたの。」

 

レヴナント 「神も存在するのか。」

 

レンナ 「もちろん!この地を取り巻く無数の恒星のどこかに彼らが住んでいる場所があるはずだよ。」

 

レヴナント 「恒星…なるほど。これだけたくさんの恒星がこの地を取り囲んでいれば、恒星に属する惑星の中に生命体がいる可能性はあるか。」

 

レンナ 「うんん。光り輝く恒星の中に神は住んでいると言われているわ。」

 

レヴナント 「にわかには考えにくいが温度の影響を受けない生命体が生息しているのか。」

 

レンナ 「考えにくくないよ!レヴちゃんも焼かれて死んでも蘇るでしょう?」

 

レヴナント 「た、確かに。死ぬことはないだろう」

 

レンナ 「この地はどんなことでも起こり得るのよ!」

 

レヴナント 「レンナは何故魂のままこの地に存在しているんだ?」

 

レンナ 「神の加護を受けて産まれるクロスランド民は死ぬと転生して神の星へ行くの。そのためには転生するためにの承諾をしなければいけないんだけど、私はここでやることがあるからまだ承諾できないの。」

 

レヴナント 「何故、承諾しないんだい?一人で寂しくはないのかい?」

 

レンナ 「もちろん寂しいよ…とても。でも、パパたちが戻ってくるのを待たなきゃ。」

 

レヴナント ≪クロスランドが滅びてから16000年は経っている…もう生きてはいない。レンナに伝えるべきか?いや、この子もそのくらいは分かっているはずだ。≫

 

レンナ 「ここには永久結界が張られていて、神と契約した者同士の導きがないと場所さえわからず辿り着くことができないの。」

 

レヴナント ≪レンナは家族の先祖が戻ってくることを信じているのだろうか…それにしても、彼女の言う結界が張られているにも関わらずクロスランドへ侵入し滅ぼした存在がいるということか。≫

 

レヴナント ≪クロスランドが滅んだあと、それらの存在は他の国々に害を及ぼした言う伝承はされていない。その存在の目的がクロスランドを滅ぼすことだとすれば。いや、クロスランドの民を滅ぼすことであれば、レンナの先祖が生きていた場合狙われる可能性はあるか。だから待っているのか?それを伝えるために。≫

 

レンナ 「やだ!レヴちゃん暗い顔して黙っちゃった。」

 

レヴナント 「あ、ごめん。」

 

レンナ 「そういえば、仲間に会いたいって言ってたよね!どこにいるのかな?近く?」

 

レヴナント 「い、いやすごく遠い場所さ…それにそこにいるとは限らない。」

 

レンナ 「じゃ~!肉体を持ったままじゃ無理かな?」

 

レヴナント 「そうだね、仲間も生きているか分からないし。私もレンナと一緒にここにいるよ。」

 

レンナ 「私分かるよ…私が待っている家族がここに来て、それで悪い奴に見つかって襲われたときに助けようとしてくれているのを…嬉しいけど。」

 

レンナ 「でも、仲間が生きているかどうかちゃんと確かめなきゃだめ!」

 

レヴナント 「レンナ…」

 

レンナ 「私も本当はパパたちを探しに行きたいけど、クロスランドの民は魂の状態でこの結界を超えると、他の人間たちと同じく消えてしまうの。たぶんそれが私たちの死…」

 

レヴナント ≪なんとなくだが、この民の生態系がわかってきた。魂だけでは温度は干渉しない…ただしこの地で存在するには肉体か結界の力が必要だと。つまりレンナは神だ。≫

 

レヴナント 「しかしどうやって、ウエピナへ戻るのか。」

 

レンナ 「レヴちゃんは地面から出てきたよね?たぶんそれって生命エネルギーの地脈を通ってきたんだと思う。普通はできないんだけどね。」

 

レヴナント 「肉体を消し去り、地脈というところを通ればここに来たようにまた戻れると?だが私の意識はなく運よくここに辿り着いただけだが」

 

レンナ 「実体をとらえることができる今のレヴちゃんなら魂の状態でも意識を持てるはずよ!」

 

レヴナント 「そうなのか?」

 

レンナ 「魂の私が言うんだから間違えない!」

 

レヴナント 「ではどうやって仲間のいるところを探せるのだろう?」

 

レンナ 「地脈にはこの地の生命の情報が集まっているの。だから仲間だった人の生命を探せばよいわ!」

 

レヴナント 「果たして私にそれができるだろうか。」

 

レンナ 「簡単よ!理論上はね!私は地脈に入ると消えちゃうからできないけど…」

 

レヴナント 「可能性があるならやるしかないか。ウエピナの人たちが心配だ。」

 

レンナ 「じゃ、あとは肉体を消滅させるだけだね!」

 

レヴナント 「簡単に言うが、それも難しいな。」

 

レンナ 「いや、簡単!クロスランドの民は神聖魔法を行使する技術を持っているの。もちろん私も。」

 

レヴナント 「神聖魔法?」

 

レンナ 「うん、レヴちゃんみたいなアンデッドの肉体を消滅させることは簡単にできちゃんだから。魂だけの状態でも魔法は使えるわ。」

 

レヴナント 「消滅したら天国に行ってしまうのでは?」

 

レンナ 「レヴちゃんは神の加護を受けていないから大丈夫よ!」

 

レンナ 「言い方悪かったかな。ごめん。レヴちゃんと私は形が似ているだけで、生態が全く違うのよ。レヴちゃんなら消滅したら地脈に行くことができるわ。」

 

レヴナント 「言いたいことは分かる。だが蘇るにはどうすれば?」

 

レンナ 「それは、レヴちゃん自体の能力だと思う。たぶんクリエーション。」

 

レヴナント 「クリエーション?」

 

レンナ 「そう。創り出す能力…地上に出たときのことを思い出して。」

 

レヴナント 「完璧ではないがなんとなく覚えている…クリエーション…それが私のオーラなのか。」

 

レンナ 「だから大丈夫!早く仲間のところへ行ってあげて!」

 

レヴナント 「分かった、やってみる。頼めるかレンナ。」

 

~レンナは小さくうなずき何かをつぶやきだした~

 

レンナ 「…ラーデレン!」

 

≪徐々に消滅していくレヴナント≫

 

レヴナント 「言い忘れるところだった…もし、レンナのご家族に会うことができたなら、君のことを伝えておくよ。」

 

レヴナント 「君はとて…も…いい…」

 

~完全に肉体が消滅したレヴナント~

 

レンナ 「ふぅ~。いっちゃったなレヴちゃん…レヴちゃんもいいおじさんだったよ!」

 

レンナ 「…寂しいけど、また一人で頑張るか!」

 

そして、舞台はメタリカへ戻る。