Ultimate ONE ~第九話~【トノト】

 

リサ達を乗せた飛空艇はコマースへ辿り着こうとしていた。

コアとなったバウンサーもモブたちとはうまくやっているようである。

モブの依頼主、そしてリサが会おうとしているトノトとはどんな人物なのか。

その答えはこの先にある…

 

モブ 「おい!バウンサーさんよ。もう少しでコマースへ着くぜ!その後どうするつもりだい?」

 

バウンサー 「何故わしに聞く。リサ殿に聞いてくれぬか?」

 

モブ 「あ、そうだったな!俺らはトノトっていう依頼主にブツを渡しに行くんだが、リサも一緒に行くだろう?」

 

バウンサー 「トノトだと!?」

 

モブ 「おうよ!確かそうだったよな?リサ。」

 

リサ 「はい!彼に少しお願いしたことがありまして…バウンサーさんも一緒に行きましょう!」

 

バウンサー 「あ…いや、わしは遠慮しておくよ。やることがあるのでのう。」

 

リサ 「え?やること? じゃ~仕方がないですね。モブさんたちは一緒に行きますよね?」

 

モブ 「ああ、もちろんだ!」

 

サボ 「あまり、ハメ外さないでくださいよー」

 

モブ 「大丈夫だって!俺は酒癖は悪くないからな!」

 

サボ ≪女癖は悪いでしょうが…≫

 

バウンサー 「では、ワシは用事を済ませつつ留守番をしておるので、遠慮せずに行ってまいれ。」

 

モブ 「おうよ! さーそろそろ町だぜ、みんな準備しておくんだな。」

 

飛空艇はハッチに着き、ようやくコマースへ辿り着く。

コマースは小さな町ではあるが、飛空艇の行き来が多い各街への中継地点でもある。

そのため、飲食店や旅館などの施設が多数あり、観光地としても有名である。

モブたちは料理屋で待つトノトと会うために飛空艇から降り立つ。

 

モブ 「さー! トノトさんにガッツリおごってもらおうぜ!」

 

サボ 「なんか、報酬までもらってさらに接待されるのは申し訳ないですね。」

 

モブ 「ま、俺もワンドを運ぶのは初仕事なんだが、そういうもんなんだろ?」

 

リサ 「トノトさんは私…あ、いえDQNのお得意様でもあるので、お金持ちなんでしょうね。」

 

サボ 「お金持ちの人って…なんか、堅物っていうか…神経質なイメージがありますね。粗相のないようにしないと!」

 

モブ 「そうだな。変なことをして仕事がなくなっちまったら大変だ、気を付けろよな、サボ!」

 

サボ 「い、いや~気を付けなきゃいけないのは僕じゃなくて…。」

 

リサ 「ところで…私たち、どこへ向かっているんですか?」

 

モブ 「ああ。この町でも有名な料理屋でな、そこに来てくれって頼まれてる。」

 

リサ 「私たちもお腹が空きましたね。」

 

サボ 「飛空艇じゃ、あまり美味しいもの食べられなかったし、久しぶりに美味しいものにもありつけそうですね!」

 

モブ 「飯もいいが、俺はまず酒が飲みてぇ~。 飛空艇を乗っている間は飲酒運転もできないしな。」

 

サボ 「モブさんも酒も飲まず、よく頑張りましたね! さ、そこの角を曲がればお店に着きますよ!」

 

リサ 「私…ウエピナ以外の料理を食べたことがないので楽しみです!」

 

モブ 「はははは!ハンバーガばかり食ってたら、体壊すぜ~。」

 

リサ 「なんで知ってるんですか!?」

 

リサ達はコマースでも有名な料理屋 「野武士屋」 に入る。

お店の中は庭園のようになっており、とても綺麗に整備されていた。

 

サボ 「ここは地元の人間でもなかなか入れない、格式の高いお店ですからね。私も来るのは初めてです。」

 

モブ 「たぶんこの部屋だな。 大広間か? 俺たち入れて4人なのに広すぎじゃないか?」

 

サボ 「それは…金持ちの力の見せどころじゃないですかね?」

 

モブ 「あ、ああ~そういうことか! じゃ、遠慮なく入ろうぜ!」

 

部屋に入るリサ達

人がたくさんいる。

その中に酒を持ちながら人に何かを説明している男がいた。

 

男 「この仙流という酒は、標高39050メートルの山にある滝の中で129年間寝かせ…」

 

リサ 「確か…あの方がトノトさんですよ。」

 

 

トノト 「…では! これを飲ませたときにどういう化学反応が起きるか!だれがどういう反応をするか、見てみましょうか! そこの君!」

 

モブ 「え?俺?」

 

トノト 「そうです! まずは飲んでみましょう!」

 

モブ 「あ、ああ。」

 

モブ 「って、なんじゃこりゃ~~! こんなうまい酒飲んだことねぇ~ぞ!」

 

トノト 「そうでしょう。そうでしょう!」

 

サボ 「あ、あのう…私たちワンドを持ってきたんですが。」

 

トノト 「ほう! 忘れてました、ワープリングですね!」

 

サボ ≪わ、忘れてた? 本題なのに、この人どんな人なんだろう? 謎~≫

 

サボ 「ところで、トノトさんは何をやっていたんですか?」

 

トノト 「いやいや、君たちが少し遅れると言っていたのでね。 暇だから酒の勉強会を開いていたんですよ。」

 

モブ 「それにしても、美味い酒だったな~。 この世のものとは思えなかったぜ。」

 

トノト 「ふむ!君は私が依頼した…モブさんですか? 仙流の味がわかるとは筋が良い!」

 

トノト 「酒もそうなんですが、お腹も空いたでしょう。 ここの料理も最高なので皆さん楽しんでいってくださいね! では。」

 

モブ 「おっと、トノトさん! ブツを忘れてますぜ!」

 

トノト 「あ、ワープリングですね! 忘れてましたよ。」

 

サボ ≪この人、本題を 2 回も忘れてるし。 謎過ぎますよ~っと≫

 

モブはウエピナで受け取った荷物をトノトに渡す

 

モブ 「これで…間違えないのか?」

 

トノト 「ありがとうございます! 確かにワープリングですね。」

 

モブ 「それに~。 ちょっと付き合ってくれねぇ~か。 一緒に飲みてぇ~。」

 

トノト 「そういう話なら、お断りできませんね。 もちろん良いですよ!」

 

モブ 「ありがてぇ~。 リサもトノトさんに話があるっていうしな。」

 

トノト 「リサ? ああ~、君がDQNのリサさんですか? ウエピナの研究員がなぜここまで?」

 

サボ 「ああ、長い話になりそうなので、トノトさん、席はありますでしょうか。」

 

トノト 「おっと、気が付かず、すみません。 席なら向こうにありますよ。 では、今日はモブさんとエンドレス利き酒でもやりましょうか!」

 

モブ 「おう!望むところよ!」

 

サボが小声で言う

サボ 「リサさんあの二人…飲むことしか考えていないみたいですよ。」

 

リサ 「はは…二人ともお酒が好きなんですね。」

 

サボ 「早めに伝えるべきことは話しておいた方が良いです! 忘れられないうちに!」

 

そして席に向かうリサ達

 

しばらく、食事を楽しむリサ達

 

モブ 「くは~!美味かったが、酔っちまったぜ。 トノトさんは全然酔っていないみたいだな? 強すぎにもほどがあるぜ。」

 

トノト 「ええ。 私は "酒の国 キモト" 出身なので、酔いたくても酔えないんです。」

 

モブ 「ん? キモト? 聞いたこと」

 

サボ 「って、えええええええええーーーーーー!? トノトさん!キモト出身なんですか? あの伝説の侍たちが住むという!」

 

トノト 「ええ。私はキモト出身の酒人 (サキンチュ) です。」

 

リサ 「え? 侍たちが住む? バウンサーさんもそこの出身でしょうか。」

 

トノト 「ほう、そのバウンサーという侍とはお知合いですか?」

 

リサ 「え、ええ~…しかし。」

 

リサは今まで起きたことをトノトに話す

 

トノト 「なるほど。 そのバウンサーという名の侍らしき犬は妖刀オロチという刀を取り戻しに来て、戦に負け、死に…いまは機械に意志を移行されていると?で合ってる?」

 

リサ 「はい…私たちの調査が足りなかったばかりに、彼の命を失うことになってしまいました。」

 

トノト 「ふむふむ…で?」

 

リサ 「≪で?≫ あ、バウンサーという侍とはお知り合いではなかったですか?」

 

トノト 「んん~。 知らないですねー。 そもそも酒人は人間と見た目は変わらないので侍が犬っていうのもおかしい話ですね。」

 

リサ 「そうですか…」

 

リサ 「あ? では。お願いがあるのですけど…」

 

トノト 「良いよう? 美女のお願いならね!」

 

サボ ≪モブさんと気が合うわけだ≫

 

リサ 「私たちをワープリングでメタリッカへ連れて行ってくれませんか?」

 

トノト 「メタリッカかぁ…あそこはワープリングでマーキングはしているはずだ。 確かに飛空艇で行くには遠すぎる街だが、ワープリングならすぐに行くことができるな。」

 

リサ 「では!私たちをそこへ連れて行ってください!」

 

トノト 「まぁ~ あそこならそのバウンサーという犬のボディを製造する技術があるかもしれない。 ただ、硬い金属を作る街としては有名だが、動く機械を作る技術は果たしてあるのかな?」

 

リサ 「それは、私がやります!」

 

トノト 「なるほど!メタリッカの技術とDQN最高の研究員がコラボするのか! そりゃ面白い!」

 

リサ 「バウンサーさんにはどうしても刀を使えるよう、戻してあげたいんです!責任がありますから!」

 

トノト 「その犬も志だけは侍のようですね。 分かりました、いいでしょう。」

 

リサ 「本当ですか! ありがとうございます!」

 

トノト 「しかし、気を付けてほしいこともあるな。」

 

リサ 「な、何でしょう?」

 

トノト 「メタリッカには最近、辺りの人間を多数撃ち殺している銃士が現れたと噂で聞いています。 くれぐれも巻き込まれないように気を付けて!」

 

リサ 「そんなことが…いえ! 大丈夫です! 十分に気を付けますから!」

 

トノト 「後~…」

 

リサ 「はい。」

 

トノト 「その格好で街を歩くのはまずい。 服を買うことと、それにボディーを作るのにも金が必要だ…これを持っていきなさい。」

 

リサ 「え?いいんですか?」

 

トノトがリサにカードのような機械を渡す

 

トノト 「そのカードは私のお金を自由に引き出せるもの…好きなように使うといいよ。」

 

リサ 「あ、ありがとうございます…でも…本当にいいんですか?」

 

トノト 「もちろんだよ! ワンコちゃんに刀を使えるようにしてあげてください。」

 

サボ 「僕もなりたいな~…あんなお金持ちに…」

 

トノト 「じゃ、モブちゃんも寝ちゃったし、私は他に行きたい店があるので今日は失礼するよ。 飲みたいだけ飲んで、食いたいだけ食ったら好きな時に帰るといい。」

 

リサ 「あ、では私たちはいつワープさせてもらえるのでしょうか。」

 

トノト 「明日の朝、私がハッチに行けばよいかな?」

 

リサ 「分かりました! サボさん大丈夫ですよね?」

 

サボ 「もちろんですよ! モブさんはこのまま寝かせておきましょう!」

 

店を立ち去るトノト

リサとサボは幸せそうに寝ているモブを店に置き、ハッチへと戻った。