Ultimate ONE ~第八話~【バウンサー】
サボ 「なんか、飛空艇の中を漁った後、部屋にこもりなかなか出てきませんねー リサさん。」
ギブ 「今頃、コアってのと話してるんじゃね~か?」
サボ 「それにしても、このおんぼろ飛空艇に、使えるものなんてあったんですかね?」
ギブ 「おい、サボ。おんぼろとはどういう意味だ?」
サボ 「す、すみません。」
ギブ 「それよりもよう、色気がなくなって寂しいじゃね~か? な、サボ」
サボ 「確かに、リサさんがいると華やかっていうか、元気にはなりますけど。」
ギブ 「お? おまえもやっと覚醒したか!」
サボ ≪えっ?覚醒って≫
~飛空艇内リサの部屋~
リサ 「よしっと!これで完了かな?」
リサ 「後はスイッチを入れて…重力変動装置を上手く使いこなせるかしら?」
リサ 「ま、いっか! えいっ!っと。」
コアのスイッチに電源を入れるリサ、そして怪しく光りだすコア
シューーーーという音を立てながら浮かびだす
リサ 「こ…こんにちは…?」
シューーーーー…コアの表面から丸い光が現れる
その光はゆっくりとリサの方向へ向きだす
リサ 「こん…にちは?」
コア 「ビ…ビビビビビ…」
リサ 「あ~、やっぱり脳の移行なんて無理だったかしら…」
コア 「ビビビビビ…」
コア 「ビッチ?」
リサ 「第一声それ!?」
コア 「それに…ここはどこじゃ!いつもと感じがちごうとるわい!」
リサ 「ああ~よかった!とりあえず移植は成功したのね!」
コア 「よくはないじゃろう! わしは気を失ってしまったが、あの化け物はどうなった!?」
リサ 「ああ~…説明…必要ですよね。」
コア 「おぬしが生きておるということは、あの化け物は倒せたのだな?」
リサ 「あの骸骨のような化け物は…たぶん消えたわ…」
コア 「そうか!奴は実体をもっておらんかったので、わしのオーラではなければ斬れんかったのう!がははははっ!」
コア 「で、刀はどこじゃ?」
リサ 「DQNのワンドのことですね。」
コア 「DQN?バカを言えい!あれはもともとわしの刀じゃ!それを勝手にいじくりおって!」
リサ 「えっ!あれはバウンサーさんの刀だったんですか?」
バウンサー 「お?わしの名前を憶えてくれていたのか?さよう…あれはわしが友人から授かった大切な刀である、”妖刀オロチ”じゃ」
リサ 「妖刀オロチ…」
バウンサー 「わしが旅をしている最中に盗賊に盗まれてのう…探し回りようやく見つけたが、あんなガラクタにされていたとはのう。」
リサ 「DQNの技術をつぎ込んだ武器がガラクタ…」
バウンサー「あれはガラクタ以外の何物でもないわ!わしはどんな物質でも切り裂くオーラを持つ。元のあの刀はそれに応じてくれておったわい。」
リサ 「あの刀に付与した能力はどんなものでも斬ることができる力…能力が競合して不具合を起こしたのね。」
バウンサー 「で、あの刀はどこじゃ?」
リサ 「あ、持ってきますね!」
部屋の片隅からオロチを持ってくるリサ
リサ 「刀ならここに…それに…」
バウンサー 「それに?」
リサ 「いえ…ごめんなさい!大切な刀を勝手に改造してしまって。そのせいでバウンサーさんが…」
バウンサー 「わしがどうしたというのじゃ!いつもと変わらんじゃないか!刀の件もそもそもわしが盗賊になどに油断して盗またのがいかんのじゃ!」
リサ ≪意外と…というより、かなりいい人だわ≫
バウンサー 「武士が己のミスを他人に押し付けるようなことはせぬわ。」
リサ ≪え?今、私の心を察した?≫
バウンサー 「オロチさえ無事なら、武士として本望…この刀が手になじ…む?」
バウンサー 「えええええええええーーーーーー!刀が持てん!」
バウンサー 「それに、目は?ある、手は?ない、耳は?ある、鼻は?ない、って明らかにおかしいじゃん!」
リサ ≪じゃん?≫
バウンサー 「これはどういうことか!?説明してくれぬかビッチ殿。」
リサ 「だから、ビッチじゃありません!リサです!」
リサ 「ちゃんと最後まで聞いてくださいよ!」
バウンサー 「ワン!」
ことの経緯を丁寧に話すリサ…普通、平常心を保てないであろう話も冷静に聞き入れるバウンサー
バウンサー 「…なるほど…では…わしは今、生きているのかのう?」
リサ 「生命の定義は呼吸をしているとか、細胞を持っているとかではなくて、命を持っているもののことを言います。」
リサ 「バウンサーさんは、自分の考えを持ち、行動し、そして優しさを持っています…あなたは間違えなく生きていますよ!」
バウンサー 「うむ。しかし…刀を持てぬ侍は死んでいるのと同じよのう。」
リサ 「…戦うのって怖いと思うんですよね…なのに、バウンサーさんはなぜ戦う道具である刀が必要なんですか?」
バウンサー 「リサ殿…良い質問じゃのう!武士も最初は刀を持つ資格などはない、戦とは無縁の子供なのじゃ。」
リサ 「え?」
バウンサー「生まれながらの武士などはおらぬ。武士の剣技とは大切な人に託された宝なのだよ。」
リサ 「んん~…ちょっと分からない。」
バウンサー 「自分の身に置き換えれば分かるじゃろうて。わしが強き侍になれたのは、わし一人では叶わぬこと、だがわしに剣技を教えてくれた師匠、わしを健康に育ててくれた家族、わしを武士に導いた運命、そしてわしを間違えた道に進まぬよう命がけで守ってくれた友のおがげだ。」
リサ ≪さすが侍だわ、そこいらの剣士とは志が違う…大切なものを敬う気持ち…≫
リサ 「分かりました!」
バウンサー 「なんじゃ!?」
リサ 「私、バウンサーさんが刀が使えるようにします!」
バウンサー 「それはまことか!?」
リサ 「ええ、約束します!責任がありますから!私はいたずらにあなたをコアにしたわけではありません!」
バウンサー 「命までつないでいただいたうえに、再び刀を持つことを許されるとは…武士は刺し違えても敵を倒すことを教えられてきたが…死してもなお生きることは教わなんだ。」
リサ 「では、まずはコマースへ向かいましょう!そこに、力になってくれそうな人がいますから!」