※これはフィクションです。
Ultimate TWO ~第一話~【果てのない大溝】
~はるか遠い未来の地球~
研究員の男 「んん~ しかし、球体のあの流星群は不思議だ。流美くん」
流美 「はい、まだあの存在に対して我々は何も分かっていないですからね」
研究員の男 「我々は、あれを “Ultimate” と呼んでいるが、普通の流星群よりもはるかに大きい…しかも球体だ」
流美 「それに…取り巻く星の一つ一つが何か計算されたように精密に動いている…どう思いますか?太田先生は?」
太田 「百年ほど前から、星は生命体であると言われ、今では常識になっているが、ではUltimateはその中でも高度な知能を持つ星なのではないだろうか」
流美 「え?流星群の一つ一つが?」
太田 「そう考えても良いかもしれない…あの星たちは自分たちの意思でそれぞれが動いているようにも見える」
流美 「なぜでしょうか? やっぱり不思議ですね」
太田 「ふむ。あの流星群たちは、何かを守っているとか…」
流美 「守る?」
太田 「これはあくまでも憶測でしかありませんが、例えば球体の流星群の中にヒントがあるかもしれない」
流美 「ひょっとして、流星群の中に何かが存在しているの?」
太田 「今の我々の技術ではUltimateの中の情報までは確認できませんがね」
流美 「興奮しますね! いつか分かる日が来るのかしら」
~数え切れぬほどの星たちが球体に集まる “Ultimate” と言われる存在…それは無数の恒星を取り巻く恐ろしく巨大な惑星のような存在であった…この物語はその創造物を舞台に始まるのである~
真っ黒な世界に一隻の飛行艇が飛んでいた。
空は青く、雲も存在しているが地は黒い闇に包まれていた。
ブーーーーーーン
飛空艇の隊長 ブッセ 「まだ、大溝の岸は見えてこないのか?」
レナ 「ええ…まだ何も見えていないわ」
ブッセ 「この最新の飛行艇では飛行可能な距離が 10 倍にもなったが、出発してから何日が経っただろうか…」
レナ 「出発してからだと…約六か月ね」
ブッセ 「そろそろ潮時だろうか。これ以上進めば戻れなくなるぞ」
乗員のピース 「ちょっと待てくださいよ!隊長は諦めてしまうんですか?この冒険を!」
ブッセ 「すまん。このまま進めば、乗員を全て死なせてしまうかもしれない」
副隊長ハゼ 「隊長よ…ここまで来てそりゃねぇ~ぜ」
ブッセ 「ハゼ」
ハゼ 「おまえはどうか知らないが、俺たちはどういう気持ちでこの飛行艇に乗ったか忘れたわけではないよな?」
ブッセ 「し、しかし」
ハゼ 「お前ひとりの旅じゃねぇ~んだよ!」
ブッセ 「分かった…ありがとうハゼ。死ぬかもしれないなんて、旅経つ前に皆で覚悟をしていた。野暮な話をしてしまってすまなかったよ、みんな」
ハゼ 「…に…してもこの終わりのない大溝はどうやって出来たっていうんだよ!」
レナ 「神話によると、神と魔物との戦いで怒った神が大地ごと魔物を切り裂いたとか」
ハゼ 「神ってのは殺し合いを平気でするってことないよな?一体、どんな神だったんだろうか?」
レナ 「その神の名は… “バウンサー” 戦いの神よ!」
ピース 「きゃははははは!そんな話どこから出たんだよ!殺し合いをやったり、昔の人の発想はぶっとんでるよな!ほんとに!」
レナ 「代々伝わってきた神話よ!笑いすぎだから!」
~飛行艇が小さく揺れ動く~
ハゼ 「それより、何か音がしないか?」
バ…サ…
バーサー
ブッセ 「周りや空には何も見えないな。一体どこから聞こえて来る?」
揺れも酷くなっていく飛行艇
ゆっくりと音が近づいてくる
レナ 「下よ!大溝から聞こえて来るわ!」
ハゼ 「大丈夫かよ!近づいて来るぞ!」
~ガタガタガタガタ、飛空艇が揺れ動く~
レナ 「恐らく、私たちの想像を絶する巨大なものが大溝に生息しているみたい」
ピース 「ま、まじか!何を喰ってるんだろ?」
レナ 「しかし、相当深くにいるらしくてレーダーでも感知することができないわ」
ピース 「そんなの、近くに来なくていいよ~!」
レナ 「もっとも、近くにいれば空圧で飛行艇ごと…」
ピース 「ひい!」
~乗員たちはおびえていたが、しばらくするとその音も無くなり消えていった~
ハゼ 「ふ~~~。さすがに死を覚悟したぜ、ま、俺たちの危険が消えたわけではないけどな」
ピース 「あ?ハゼさん!」
ハゼ 「ん?なんだ?ピース」
ピース 「今更だけど、ハゼさんの髪型変すよ!」
レナ 「ピース!失礼よ!」
ハゼ 「ピース…今それを言うか?空気を読めよ!」
ピース 「ひひひ…死ぬ前に言っときたかったんで」
ハゼ 「おい!」
…
…
~謎の多い大溝ではあるが、それから乗員たちは無事に冒険を続けた~
…
≪それから、六か月の時が過ぎた≫
ブーーーーーン
~ブッセは元気がなさそうに座っている~
ブッセ 「ま…まだ岸は見えないか…」
~乗員たちは衰弱していた~
レナ 「さすがにそろそろマズいわね。燃料が尽きてきているわ」
~フラフラになっているハゼ~
ハゼ 「た…隊長…は…話がある…」
~よろけながらブッセの方へ歩くハゼ~
レナ 「ハゼ!大丈夫?」
ハゼ 「すまなかった…隊長…あの時、隊長の話を聞いていればみんな死ぬことはなかった…そして…」
ハゼ 「そんな俺たちのわがままに嫌な顔もせず最後まで付き合ってくれて…ありがとう」
ブッセ 「ハゼ…」
~窓を眺め空を見ているレナ~
レナ 「はーーーーーーーーー!私も結婚してみたかったな~~!」
ピース 「僕じゃダメですか?」
レナ 「あ、あれ?」
~何かに気がつくレナ~
レナ 「ピース!スコープグラスを持ってきて!後、空気を読めない人は苦手よ!」
ブッセ 「何か見えたのか?」
~慌ててレナにスコープグラスを渡すピース、そしてスコープグラスをつけ遠くを見るレナ~
レナ 「何?…あれ」
ハゼ 「何が見えたってんだ?」
レナ 「かなり遠くにだけど、球体の物体が浮かんでるわ…」
ブッセ 「なに?」
レナ 「スコープによると、球体の大きさは約五百キロメートル!かなり大きいわね」
ブッセ 「人工的に作られたものだろうか?いずれにしても俺達には選択肢がない」
ハゼ 「最後の賭けか…面白ぇ」
レナ 「何もないよりはすごくラッキーなことよ!行き先を軌道修正してよいかしら?隊長」
ブッセ 「でかしたぞ!レナ!自動追跡機能を設定してくれ!」
~あれから、しばらくの時間がたちブッセ達は謎の球体に辿り着こうとしていた~
ピース 「やっぱり、あれって人間が作り出したものだよな?」
レナ 「人間かはまだ分からないけど、何かのエネルギーがあるものを覆っているみたい」
ブッセ 「辿り着けたのはよいが、どうコンタクトを取ればよいのだろうか?」
レナ 「これが作られたものであるなら、もう気が付いているはずだわね。すごい技術よ」
ハゼ 「考えてもわからねぇ~なら…突っ込むだけだ」
~球体に迫る飛行艇~
ブッセ 「遠くからは球体に見えたが近づくと壁だな。本当に突っ込むのか?」
レナ 「向こうからはまだコンタクトがないわね。高い文明のはずなのに、どうしてかしら?」
ピース 「なら、突っ込むだけだ」
ハゼ 「ピース!真似してるんじゃね~ぞ!」
ブッセ 「しかし、もうそうするしかないようだ。いくぞ!」
~球体であった大きなエネルギー体に突っ込む飛行艇~
≪飛行艇がエネルギー体の中に入っていく≫
ピース 「通れた!」
~辺りを見渡す乗員たち~
レナ 「想像はしていたけど。想定外ね」
~そこは1000メートルは軽く超える建物が所狭しと立ち並ぶ “文明” であった~
ピース 「人口密度高っ!」
レナ 「今そこ気になる?」
ブッセ 「感動しているところ悪いが…燃料が尽きた…落ちるぞ!」
レナ 「しかも、何か球のようなものが飛んでくる!」
ハゼ 「ぶつかるぞ!」
ビビビビビビビビビ!
ブッセ 「ぶつかった!何が起きた!?」
レナ 「あ、あれ?飛行艇が落ちない。」
ピース 「ははっ、俺たち助けられたみたいだな!」
レナ 「だといいけど…あれは何」
~気が付つくと飛行艇の前に大きな人のような存在がいた~
≪謎の存在はブッセ達が聞いたことも無いような言葉で何かを言っている≫
レナ 「えっ?あれは人?何を言ってるか分からないけど、どうやってコンタクトをすればよいかしら?」
ピース 「デカいな!飛行艇くらいあるぞ!」
謎の存在 「ミルモ!どうやら、言葉が通じないようだ。それに特に男性の二名はかなり衰弱しているぞ!」
~ある研究所のような施設~
ミルモ 「仕方がないわね。本当は禁止されているけど、誰か一名の生体情報を摂取して!緊急事態なので許可は許されると思うわ!お願いメガド!」
メガド 「分かった!誰が良いだろうか?一番状態が良さそうなのは…女か!」
レナ 「こっちを見ている。向こうも困っているのかしら?」
ブッセ 「しかし、飛行艇は飛ぶこともできないので私たちには何もできない」
メガド 「ミルモ!スキャンしたデータは送れたか?」
ミルモ 「ええ、ばっちりよ!取り急ぎ保存されていた脳の情報から彼らの言葉を分析し翻訳できるようにするわ!」
メガド 「よろしく頼む!」
ミルモ 「言語は解析したので、メガドに翻訳データを送ったわ! そ、それにしても。」
メガド 「ありがとう、今は時間がない。話は後でしよう!」
ピッ
メガド 「すまない!これから君たちを保護したいと思うが、同意してくれるだろうか?乗員の二名はかなり衰弱してる」
ピース 「お?言葉が通じるよ!やっぱ助けようとしてくれている!」
レナ 「こちら側の声は聞こえるかしら?」
メガド 「ああ、聞こえます」
レナ 「艦内の声も聞こえるなんて…すごい技術ね」
メガド 「すまないが。今、ここは危険なので避難させていただいてよろしいでしょうか?」
レナ 「避難だって?どうするブッセ?」
ブッセ 「ああ…かまわない」
メガド 「助かる。では保護させてもらう!」
~飛行艇とともに立ち去るメガド~
ドドドドドドッドーーーーーン!
~立ち去った場所辺りから大きな銃声のような音がする~
人相の悪い男 「ひゃひゃ~~!」
人相の悪い男 「さすがウエピナの操縦型ロボット!初めての俺でも自由に動かせるぜ!この辺みんなぶっ壊してやる!」
~操縦型のロボットに乗り、辺りを破壊しよとする人相の悪い男、その近くのビルの屋上に若い男がいた~
若い男 「手から氷!そうだな、ゼロックス社が出している天然水のやつで!」
~彼がそう言うと、まるで魔法のように手から氷ができた~
コロン
グビ
若い男 「んん~。やっぱ、この酒にはロックが合うよな~…みんな炭酸水で割ってしまっているけどよ」
若い女性が近づく 「ち、ちょっとゼクトくん!こんな時に何をやってるの?逃げなきゃダメじゃない!」
ゼクト 「あ?ミオちゃん!すまない!今忙しいんだ」
ミオ 「こら!ゼクト!君にもしものことが起きたら大変なことになるんだからね!」
ゼクト 「分かってるよ~!絶対に何も起きないって!」
ミオ 「こんな状況で言うか? ま、ゼクト言うなら仕方がないけど、私は怖いから帰るからね!べーーーだ!」
~立ち去るミオ~
ドドーーーーン
~銃声が鳴り煙が立ち上がる~
ゼクト 「まったく。なんなんだ!あいつは?俺の楽しい試飲タイムを邪魔しやがって!」
…
ゼクト 「ま、でも?このまま飲んでても助かる気がするな?じゃ~次は…」
ドドドーーーン
~銃声は鳴りやまない…しかしビルの外にはゼクト以外にももう一人の男がいた~
気品のある声の男 “この件は、あまり公にしたくないのでね”
真面目そうな男 「かしこまりました。しかし、ウエピナの制御をくぐり抜けて盗みを働くとは、裏で引いてる人間がいるということか」
気品のある声 “ああ、そのことも調査しておくよ。とりあず、まだ被害が少ない今であれば事故と見せかけることもできる。くれぐれも目立たないようにやってくれたまえ、レヴナント君”
レヴナント 「それで、私に頼んだわけですね。任せてください」
ピッ
レヴナント 「さて…あの暴れん坊さんをどうしますか」
ドドドドーーーーン
人相の悪い男 「くっそーーー!この小さい兵器ではビルを破壊できんな!武器を変えよう!」
レヴナント 「やめたまえ!その兵器だと建物が壊れる」
人相の悪い男 「ああああ~~~ん? って!お、おまえ!なんで宙に浮いてる!」
レヴナント 「今なら、まだ君は軽い罪で済むかもしれない」
~ビルの屋上~
ゼクト 「あ、あれ?なんか人が宙に浮いてないか? つか、アブね~だろ?あのおっさん!」
人相の悪い男 「うぜ~な?おまえ!宙に浮いているのもウエピナの技術だろうけどよ、おまえごとビルを破壊してやるぜ」
レヴナント 「やれやれ、どうして悪党はどいつも人の話を聞こうとしない!」
人相の悪い男 「いちいち、ムカつくやろーー―だぜ!うっせーーーんだよ!黙らせてやる!」
ドーーーーン
~大きな兵器でレヴナントを攻撃する人相の悪い男~
ゼクト 「ま、マジか!やめろ、おっさんの後ろにある店は俺が良くいく美容室なんだよ!」
レヴナント 「ふぅ」
~手をかざすレヴナント~
~大きな兵器で撃った弾はビルに当たる前に止まった~
人相の悪い男 「きさま!どうやって止めた!」
レヴナント ≪確かに空気を掴み弾を止めたはずだが、その前に止まっていたような…手応えがなかった。何故だ?≫
人相の悪い男 「これもウエピナの技術か、ムカつくぜ…しかしよ…これならどうだ!」
レヴナント 「いかん!私を的にしてビルから狙いを外させる!」
~宙を飛びあがるレヴナント~
人相の悪い男 「無駄だ、このレーザー砲ならさすがに止められまい!」
ドキューーーーー
~人相の悪い男が撃ったレーザー砲はレヴナントに直撃し、彼は消えてしまった~
人相の悪い男 「バカな奴だったぜー!」
ゼクト 「あっちゃ~~~!やっちまった。ま~おっさんも可哀想だったがよ、諦めるよりしょーがねぇ~な」
ゼクト 「ま、ウエピナのガーディアンが何とかするっしょ!俺も帰るか」
人相の悪い男 「このレーザー砲、使えるなぁ。次はビルをぶっ壊すか!」
~レーザー砲でビルを狙う人相の悪い男~
人相の悪い男 「今度はちゃんとぶっ壊れろよ――!」
ドーーーーーーン
人相の悪い男 「えっ?」
~彼が乗っている操縦席のところから手が生える~
人相の悪い男 「な、な、なんだってんだよ!」
~操縦席から生えた手は人相の悪い男の首を絞めた~
人相の悪い男 「ぐ、うっ、嘘…だろ…ごぼ」
~気を失う人相の悪い男~
~操縦席から生えた手は人相の悪い男を失神させた後、手から肩、胴体となっていく~。
レヴナント 「任務は終わりましたが」
ピッ
気品のある声 “完璧だったなレヴナント君、被害もほとんどない。死者はゼロだ”
レヴナント 「ロボットの銃撃程度ではビルに傷もつけられないウエピナの技術のおかげでしたけど」
気品のある声 「ま~そう謙遜するな。それより早急に操縦盤から制御ロックを外してくれないか」
レヴナント 「気が付かず、すみませんでした。では私もこのまま乗っているので遠隔で本部まで戻してください」
気品のある声 「ああ、分かった」
~盗まれた操縦型兵器は遠隔操縦で彼らの本部へ戻っていった…この事件はのちにAI による誤作動という事になったようである~