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by miki tonoto 

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原作 : キャラクターデザイン 神酒 とのと

製品版リライト : 文章修正       福田有人
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Ultimate THREE エピソード サン・フェルミン ~world without end~ 【第一話】

 

この世界はいったいどこまで続くのだろうか…

そう考えるのも面倒くさくなった。

 

いや、この土地の大きさを気にする人間はもうここにはいない。

 

しかし、この先には何があるのか?

その好奇心を大きく揺さぶられている人間は少なくはない。

 

そう、この終わりのない世界は、冒険者達にとって天国なのである。

 

~アークシティー魔術研究所最高階~

 

サン「時間を停止させようとしても、それは一定範囲で一時的にマジックワールドに引きずり込まれているだけ。時間を止めること、それはここだけではなく、宇宙全体を停止させなければいけない。そんな魔力、人間には不可能な話です」

 

 

エリート魔術師「君はマジックワールドを作り出すことに長けてはいるが、それは時空魔法なのか?」

 

サン「時空を操ることは原則魔力でも不可能なのよ。まあ、相手の動きを遅くしたり、止めたりすることを時空魔法と定義するなら、そうなんでしょうけど」

 

エリート魔術師「マジックワールドは時間が影響しない空間と聞いているが?」

 

サン「ええ。術者が作り出した空間内で細胞の劣化や病気の進行を止めることは可能よ。だから、時間が影響していないようにも感じることができますけど」

 

エリート魔術師「マジックワールド内で生活をすることも可能なんだよな?それで細胞の劣化も起きないとは?」

 

サン「現段階ではあくまでも推測でしかないのだけど、その空間では “摂理の逆転” が影響していると考えています」

 

エリート魔術師「摂理の逆転?それはどういった効果があるのですか?」

 

サン「もし現実世界でマジックワールド内で起きている摂理の逆転を使用することができれば、この世界にいながら細胞の劣化、病の進行を止めることが可能になると推測できます」

 

エリート魔術師「それは…つまり、不老不死になれるという事ですか?」

 

サン「そればかりか、若返る事さえできてしまいます」

 

エリート魔術師「こりゃ~凄い魔術の発明だ!サン・フェルミン君!引き続き研究を頼む!」

 

サン「しかし、いいのですか?研究の費用はすでに底を尽きているはず。どうやって、資金を得ているのですか?」

 

エリート魔術師「ははは!おまえが心配することはない!給料もたんまりと払うので、研究に没頭してくれたまえ!この魔術が完成すれば億万長者になれるんだから!」

 

サン「わ、分かりました。しかし、私は夜に用事があるため残業などはできませんけど」

 

エリート魔術師「この研究ができる魔術師はこのアークシティーでも君しかいない!パワハラはしないさ、優秀な人材に居なくなられては困るからね!だから、スカウトされも断ってくれるとありがたい!」

 

サン「まあ、残業がないのならここにいますけど」

 

エリート魔術師「助かる!今日もそろそろ定時だな!」

 

サン「あら?もうそんな時間?上がらなければ!」

 

エリート魔術師「それにしても、定時じゃないとダメだなんて、子育てか何かですか?そういえば、ハロウィンという小さな孤児を弟子にしているとか。その子は時空を支配する魔王アザトースと魔人の間に産まれた子供…なんて噂さえされているが」

 

エリート魔術師「おっと!そんな話はでたらめに決まっている。これもパワハラだったかな?社員のプライベートを詮索するところだったよ。失敬」

 

サン「い、いえ…」

 

~そして定時を迎えたサン・フェルミン、会社から帰宅をする~

 

サン「いいいいいいよっしゃぁぁぁぁぁーーー!やっと仕事が終わったわ!あんな堅苦しい雰囲気、死にそうだった。残業しないのは酒を飲むために決まっているじゃない!」

 

サン「ふぅ…私って…社会人に向いてないよな。でも!美味しいお酒を飲むために頑張らなきゃ!」

 

~サン・フェルミンは帰りにバーや居酒屋に寄ることも多いのだが、今日は真っすぐ帰宅したようだ~

 

サン「さてと!今日は勝負の日よ!あの幻の銘酒 “響 魔法陣貯蔵500年” のオークションがある!絶対に落とすわ!」

 

サン「さて…今の価格は…さん、3000億!?うそーーーん!」

 

サン「私の全財産、いえ!借金をしないと買えないわ!」

 

~オークション終了間近~

 

サン「5500億…ぜ、絶望ね…」

 

サン「は、はは…ははははは…ははははは」

 

ポチ

 

 

“おめでとうございます。サン・フェルミンさんが落札いたしました”

 

サン「ああああ…これで…私の人生も終わったわ…」

 

サン「もう…お酒が届いたら…夜逃げしよう」

 

~数日後~

 

ピンポン

 

サン「はい!」

 

魔導警察官「魔導警察署の者ですが」

 

サン ≪や、ヤバイ…夜逃げしようとしたことがもうバレたの?≫

 

サン「何の用でしょうか?」

 

魔導警察官「君は巨額の脱税をしていると、君の職場の人間からタレコミがあってね。署まで来てもらおうか 」

 

サン「えええええええ!あの給料って、やっぱり脱税したお金だったの?」

 

魔導警察官「君は、知っていて受け取っていたんだね。おとなしく来てくれないかな」

 

サン「ど、どうせ、私の人生は終わっているのよ!分かった、行きますわよ!」

 

魔導警察官「そうしてくれると助かる」

 

~しばらくして、サン・フェルミンは脱税したお金を利用し、5500憶の酒を買ったとして罪に問われ、街外追放の罰を受けた~

 

執行人「さあ、サン・フェルミンさん。思い残すことはないですか?」

 

サン「ま、まだ飲みたいお酒がたくさんあるんです!」

 

執行人「は?」

 

サン「お酒の無いところに飛ばされたら、私…生きていけない!」

 

執行人「こほん。これは、そういう刑ですので」

 

サン「う、う、う…街の無いところ…いえ、お酒の無いところになんか行きたくない」

 

執行人「諦めなさい。君はもうここには戻れない…遠くに飛ばされることになります。例えそこが火の中だろうと、絶対零度の極寒の地であろうと」

 

サン「お、お願い!お酒の無いところにだけは飛ばさないで!」

 

執行人「酒、酒とうるさい女だ。では刑を執行する」

 

サン「だ、誰か…たすけ…」

 

シュン

 

~消えたサン・フェルミン~

 

 

シュン

 

~サン・フェルミンが飛ばされたところは魔獣ばかりの広大なジャングルであった~

 

ギャーーーーーー!

 

サン「ひ、ひえ!何ここ?変な生き物ばかりいる!しかも、こんなうっそうとした森の中でどうやって生きればよいのよ!」

 

一匹の強大な鳥の魔獣がサン・フェルミンに気が付き捕食しようとする

 

グアアアアアア!

 

サン「きゃああああーーー!や、焼き鳥!」

 

ボン!

 

一瞬でその鳥の魔獣は灰となってしまった

 

サン「す、少し焼き過ぎたかな?」

 

鳥を触りだすサン・フェルミン

 

パラパラ

 

サン「や、やっぱり焼き過ぎだわ。でも中の方はまだ食べられるか」

 

サン「やっぱり、焼き鳥には辛口の純米酒よね」

 

サン「偉大なる精霊たちよ、我の魔力を持って神なる生成物を与えなさい…召喚酒…十四代!」

 

~すると、地面に現れた魔法陣から一本の酒が現れた~

 

サン「私が召喚できるのはこの酒しかないのよね…もういいわ!飲んで飲んで死ぬまで飲んで死んでやる!こんなところ、もういや!」

 

 

~あれから数週間が過ぎた~

 

一匹の魔獣がその森に来ていた

 

シーボウ「クンクン…なんか匂うな…いつも嗅いでいる匂いだが…何処からだ?」

 

グアアアアアーー

 

一匹の魔獣がその魔獣シーボウを捕食しようとした

 

ザン!

 

ドサ

 

そのシーボウが持っていたスピアガンのような剣で真っ二つにされた魔獣

 

シーボウ「へへへ。わりぃな。俺はあまり優しくないもんでよ」

 

クンクン

 

シーボウ「あっちから匂う!」

 

そう言って匂いのする方へ向かったシーボウ

 

 

シーボウ「な、なんだこれは!」

 

通信機を取り出すシーボウ

 

シーボウ「おい!聞こえてるか?珍しい生き物を見つけたぞ!」

 

男「なんだって!ハーレクインドラゴンガエルか?」

 

シーボウ「いや、そうじゃねぇ~。おそらく哺乳魔獣だ」

 

男「哺乳魔獣?その地域に生息しているなんて初めて聞いたぞ?」

 

シーボウ「すまん。死んでいるみたいなんだが、俺じゃ判断できない。来てくれないか?トノト」

 

トノト「ああ、分かった」

 

シーボウ「どうやら、酒が主食みたいだな。おまえと同じだぞ?」

 

トノト「酒?まあ、いい、今行くよ」

 

シュン

 

~シーボウの前にワープをして現れたトノト~

 

シーボウ「あ、トノトこの酒の臭い…やばいくらいだぜ」

 

トノト「こ、これは!人じゃないか!」

 

シーボウ「人間か?人間なんてこの世にお前しかいないと思ってたぜ」

 

トノト「確かに珍しいな…人を見るのは十何年ぶりだろうか」

 

シーボウ「おい、どうする?死んじまってるのか?」

 

トノト「今調べる」

 

~というと倒れているサン・フェルミンを触りだすトノト~

 

トノト「む、体温が少しある。乳はデカい…呼吸は?」

 

 

シーボウ「珍しい生き物だろう?助けてペットにできないか?」

 

トノト「どうやら、極度のアルコール中毒にかかっているみたいだ」

 

シーボウ「変な病気ってこと?」

 

トノト「まあ、そうなる。とりあえず、応急処置で回復するかやってみるよ」

 

シーボウ「ああ、この辺は狂暴な魔獣が多い、シークレットモードを忘れるなよ」

 

トノト「魔獣もたくさん焼かれたりしているようだが、この人間がやったのか?」

 

シーボウ「中にイフリートドラゴンもいるじゃないか!こいつを焼いちまうなんて…回復させたらヤバくないか?」

 

トノト「正直、どうなるかは分からない。でも放ってはおけないだろう」

 

シーボウ「シークレットモード発動」

 

トノト「すまない。シーボウ」

 

シーボウ「おまえ、いつもシークレットモードを忘れるからな」

 

~それから3日が経った~

 

シーボウ「おい、トノト!そろそろこいつの点滴が切れるぞ!」

 

トノト「シーボウ、3日も付き合わせてしまってすまない。もし、回復させることができたら、一度戻り一杯やろうじゃないか?」

 

シーボウ「お?ハーレクインドラゴンガエルはいいのか?」

 

トノト「ああ、君がもっと珍しい生き物を見つけてくれたからな」

 

シーボウ「でも、こいつ…懐くかな」

 

トノト「この生き物は酒が好物らしい。同じ酒ばかり飲んでいるが…酒で手なずけられる可能性はある」

 

シーボウ「俺みたいに友達になれたら最高なんだけどな!」

 

トノト「そう期待しようじゃないか」

 

グルルルルル

 

シーボウ「おい、トノト今の聞いたか?こいつ、お腹がなったぞ!」

 

トノト「きっと、腹が減っているのだろう。点滴ばかりだったしな」

 

シーボウ「助かるといいけど」

 

サン「う…う…」

 

シーボウ「おおおおおおお!意識を戻したぞ!トノト!」

 

~トノトがサン・フェルミンの身体を優しくたたく~

 

トノト「大丈夫か?」

 

サン「さ…酒…」

 

トノト「酒?ダメだ。君はこれ以上酒を飲むと死んでしまう。今は飲ませることはできない」

 

シーボウ「こいつ、トノトみたいに永久に飲めるわけじゃないんだな?」

 

トノト「ああ、この人種は極度のアルコールに対応できない生態らしい」

 

シーボウ「やっぱり、トノトとは違う生き物なのか…胸とかでかいし」

 

トノト「それは雌雄の違いだろう」

 

シーボウ「雌雄?」

 

トノト「ああ、私のような生き物はオスとメスがいて、性行為をすることで子孫を増やすことができるんだ」

 

シーボウ「性行為?どんなことをするんだ?」

 

トノト「それはオスの生殖器とメスの…」

 

サン「ちょっとあんたたち!目が覚めたと思ったら何てことを話してるのよ!」

 

トノト「おや?わりと元気だね」

 

シーボウ「俺たちの言葉も通じるみたいだぜ!」

 

サン「は!ていうかあんた!人間じゃない!」

 

トノト「ああ、たぶんだが、君と近い種族だ」

 

サン「おおおお!神よ!私に奇跡を与えてくれるとは!」

 

シーボウ「トノトがおまえを昼夜付きっきりで看病していたんだぜ?」

 

トノト「何を言ってるんだ!シーボウ、君もだろう?」

 

サン「私を…助けてくれたのね?う、う、う…ありがとうございます」

 

トノト「君は酒に弱い体質だが、極度のアルコールを摂取して中毒症状を起こしていたようだ。それ以上飲んでいたら死んでいたぞ?」

 

サン「あのう…これでも私、街一番の酒豪で有名だったんですけど」

 

トノト「なるほど。しかし、しばらくは酒を控えるとよい」

 

サン「う、う…分かりました。命の恩人だもの、言うことを聞くわ」

 

シーボウ「トノト、狂暴な奴でなくて良かったな!」

 

トノト「ああ、助けたかいがあったよ」

 

サン「ありがとうございます」

 

トノト「それと…この辺にある酒なんだが…このジャングルでどうやって手に入れたんだ?」

 

サン「あ、それ…私が召喚したの」

 

トノト「召喚?なるほど…」

 

というとトノトは落ちている酒瓶を持った

 

トノト「飲んでいい?」

 

サン「え?あなたも酒が好きなの?いいわよ」

 

するとトノトは自分のバックからぐい飲みを取り出した

 

サン「え?マイぐい飲みを持参?」

 

トノト「酒飲みの必須アイテムだからね。小樽焼きの酒器が舌触り良く最高だ」

 

サン ≪う、嘘…こんなジャングルで…通?≫

 

トノト「では、遠慮なくもらいますよ」

 

サン「今の私にとっては目の毒ですが…」

 

トノトは十四代をぐい飲みに注ぎ、飲みだした

 

トノト「ふむ。本物ではないな。召喚したものだからなのか…」

 

サン「やっぱり、違います?」

 

トノト「君は十四代を飲んだことがあるのかい?」

 

サン「いえ、伝説だけ聞いていたので憧れて想像で造ってみたのですが」

 

トノト「なんと!本当の十四代を飲まずしてこの味を?それなら、味覚のセンスが良いな」

 

サン「ひょっとして、あなた…本物の十四代を飲んだことがあるのですか?」

 

トノト「ああ。もちろんだよ。昔の故郷がその酒を造っている街でね」

 

サン「す…すごい。私も飲んでみたかったな~。でもその酒はもうこの世にないですよね」

 

トノト「私の施設に保存はしている。劣化を防ぎたいのだが。何か良い方法が無いかと研究をしているのです」

 

サン「嘘?ま、マジックワールド…そう!マジックワールドなら酒の劣化を防げると思います!」

 

トノト「なんだい?それは?…まぁ、いい。もし君が回復したならシーボウと一緒に乾杯をするつもりだった。話も聞きたいので君も来てくれるかい?」

 

サン「も、もちろんです!一生ついて行きます!」

 

トノト「十四代が飲みたいんだね?分かったよ」

 

サン「飲ましてくれるんですかぁぁぁぁぁぁ!う。う、…何という奇跡!」

 

 

そして、トノトの施設へ行ったサン・フェルミン

 

サン「なんですか?ここは!」

 

トノト「私が集めた酒を保管している場所さ」

 

シーボウ「俺たちは、この世界の銘酒と珍しい魔獣を可能な限り集めてるってわけ。まぁ、趣味って言うより、ここまで来たら仕事だな」

 

サン「ちょちょちょちょちょ!私の5500憶円もある!」

 

トノト「響の500年か?まさか5500憶で買ったわけじゃないよね?」

 

サン「そ…それが…」

 

トノト「あはは。ずいぶんと、ぼったくられたね。今販売をしているのはおそらく偽物だろう」

 

サン「う…うそ…。私の人生を狂わせた響500年が…偽物だったなんて…」

 

トノト「そこまで思い入れがあるのなら一度飲んでみると良い。後、腹も減ったろう?」

 

サン「ゆ、夢みたい…私はどう恩返しをすれば」

 

トノト「恩返しか…いらない…とも思ったが、酒の劣化を防ぐ方法を教えてほしい」

 

サン「そ、それなら!」

 

ふらふら…バサ

 

シーボウ「あ、倒れちまったぞ!」

 

トノト「しまった!ご飯を食べさせるのが遅かったか」

 

シーボウ「おい!トノトらしくないな」

 

トノト「つい、酒の話に夢中になってしまってね。点滴を打っているから大丈夫だろうけど」

 

~あれから、少しの時間が経った~

 

サン「クンクン…いい匂い!」

 

目が覚めたサン・フェルミン

 

トノト「目が覚めたようだね!大丈夫かい?」

 

サン「はい!それより…この料理」

 

シーボウ「俺が作ったんだぜ!」

 

トノト「君はジャングルで肉ばかり食べていたと思ったので、川や湖の食材と野菜をメインにしてもらった。シーボウが作った料理は美味いぞ!」

 

シーボウ「本当は俺の故郷である海の食材で作りたかったんだけどな。俺は奴隷として飛ばされ、その海がどこにあるのかも今は分からない」

 

トノト「君を故郷へ連れて行ってあげたいのだが…海とは聞いたこともなくてね」

 

サン「じーーーー…」

 

トノト「あ、すまない!遠慮なく食べてください!」

 

サン「ありがとうございます!」

 

モリモリ食べだすモサン・フェルミン…サンの目からは涙が流れていた

 

シーボウ「おい!泣きながら食べるやつがいるか?」

 

サン「だって、本当に美味しいんだもの!」

 

トノト「そろそろ、君もお酒を飲んでよい頃じゃないか?シラーで仕込んだワインがある、これなら度数もそれほど高くなく体の負担も大きくはないだろう」

 

サン「じゅる…ひ、ひ、ひ…久しぶりの…ワイン!」

 

サン・フェルミンはワインを口にする

 

サン「ぷはーーーー!うめぇ~~な!こりゃ~!」

 

サン「はっ!はしたない真似を…す、すみません!」

 

シーボウ「ぎゃははは!おまえは酒を飲むとオスになるのか?」

 

トノト「ふっ。オスというより、オヤジだろう?」

 

シーボウ「おい!俺たちの前で格好つけて酒を飲むんじゃねぇ~!酒をやらないぞ?」

 

トノト「シーボウ、その罰則は厳しすぎるだろう?しかし、そういうことだ」

 

サン「う、う、う…うっしゃーーー!じゃ!遠慮なくいくぜぇ~!」

 

シーボウ「ああ!それでいい!」

 

トノト「まぁ、本当の酒の美味しい飲み方は人それぞれ違うからな」

 

~それからサン・フェルミンはしばらく食事とお酒を楽しんだ~

 

サン「ああ~食った飲んだ!私は幸せ者だ!」

 

トノト「すっかり元気になったみたいだな。どうやら君は文明の中で生きる人種のようだ。どこの街だ?森で迷っていたのだろう?」

 

サン「そ、それが…例の5500憶は脱税した街のお金を使ってしまい。街を追放されてしまったのです」

 

トノト「そりゃ、困ったな…帰る場所がないのか?」

 

サン「えっと~…もし…よければなんですが…」

 

トノト「いいよ」

 

サン「え?まだ何も言ってませんよ!お願いですから私をお酒探しの仲間に加えてください!」

 

シーボウ「ああ、でも、魔獣探しもあるぜ?かなり危険な冒険になるけど」

 

サン「私…こう見えて、強いんです!」

 

トノト「ああ、分かっている。だからいいって言っているじゃないか」

 

サン「ほ、本当ですか!」

 

トノト「そういえば、十四代を飲んでいなかったよね。今持ってくる」

 

サン「あわわわ。そんな酒ばかり探し回っているなんて…夢みたい」

 

シーボウ「いいんや」

 

サン「え?」

 

シーボウ「俺たちが探しているのはそんなもんじゃない」

 

サン「どういうこと?」

 

シーボウ「これはあくまでも噂なんだけど、この世界には神々が作ったとされる “神酒” と言われているものが世界のあちこちに存在している」

 

サン「神酒?」

 

シーボウ「そう、神のお遊びか何かは知らないけど、その神酒がある場所には必ずと言ってよいほど謎解きやトラップが仕掛けられているのさ。この前はドラゴンが出てきやがった」

 

サン「し、神酒!そ、それって美味しいの?」

 

トノト「もちろんだとも!」

 

そういうとトノトは十四代をサン・フェルミンに注いだ

 

サン「こ…これが…十四代!」

 

トノト「飲んでみたまえ」

 

サン「じゅるり」

 

サン・フェルミンは音を立てて十四代を飲んだ

 

サン「な!なにこれ!美味い!」

 

トノト「やはり本物は違うだろう?」

 

サン「こんな美味しいお酒、飲んだことがなかったです!」

 

トノト「いや、ところが劣化をしていてね。本来であればもっと旨いんだが」

 

サン「信じられない!で、でも劣化を戻すとなれば、摂理の逆転を使えば…」

 

トノト「ひょっとして、劣化した酒も戻す方法を知っているとか?」

 

サン「ええ!でも、そのためには私ももっと魔法の勉強をしなければ!」

 

トノト「悪いが、冒険も含めてその研究もお願いしてはくれないだろうか?」

 

サン「もちろんです!で、でも…研究費用が…」

 

トノト「もちろん費用は私が出します。そうしてくれると助かる」

 

シーボウ「トノトはあることをして、膨大な金を稼いでいる。金ならいくらでもあるぜ」

 

サン「ほんと?やった…やった…やったぞ!酒のために研究ができるぞ!」

 

シーボウ「俺たちの仲間になるべくしてなった感じか…どんだけ好きなんだ?酒が」

 

トノト「まぁ、気持ちが分からないわけではない」

 

サン「あ、後、この保管室を含めた施設…私が作ったマジックワールドに作りましょう!」

 

トノト「君はもう仲間だ。任せるよ」

 

~奇跡ともいう偶然が重なり、トノトと出会うことでどん底から最高の幸せを得たサン・フェルミンだった~

 

 

それからサン・フェルミンはトノトと行動をすることとなり、数カ月が過ぎていた。

 

ヒューーーーーー

 

トノト「さすがに寒い…このままでは凍死しそうだな」

 

シーボウ「地吹雪で前が見えねぇ」

 

~極寒の地に来ていた~

 

シーボウ「一面雪…こんなところに本当に酒があるのか?」

 

トノト「ああ、確かこの辺に入り口があるはずなんだが…そこに凍結酒 “銀河鉄道” がある」

 

シーボウ「酒も凍っちまうのか?そりゃ寒いわけだ」

 

サン「まさか、美味しいお酒を飲むのにこんな苦労をするなんて…ネットでポチっとやってた私が恥ずかしいわ」

 

トノト「ネットで買うなら、その手間賃だけで高額に変わるからな」

 

シーボウ「命の危険を冒して手に入れるんだ、仕方がないんじゃないのか?」

 

サン「しかし、このままではみんな低体温で死んでしまいます…私の魔力で暖めるか…」

 

トノト「サン…一回それで私たちを焼き殺すところだったよね?本当に大丈夫かい?」

 

シーボウ「それで、出直しだからな…俺たちは」

 

サン「わたし…ちょっと、魔力が強すぎて制御が難しいのよ」

 

シーボウ「じゃ、やるなよ。まったく」

 

トノト「魔力を制御する方法か…もし可能なら、魔法を無効化することもできそうだ」

 

サン「魔法を無効化?もし、そんな技術が産まれたら…アークシティーは滅びそう…」

 

トノト「ん?どうしてだい?」

 

サン「私たちアークシティーの周りにはいくつか国があって、戦争もちらほら起きているの。アークシティーはこれ以上その状況が悪化しないよう魔力をもって他国を威圧しているのよ」

 

トノト「もし、君の街が滅びれば、大戦が始まる…そういうことになるか」

 

シーボウ「まったく、人間というのはどうして戦争をしたがるんだ?」

 

トノト「霊長類…サルの習性だ、仕方がないだろう?」

 

グオオオオオオーーーーン

 

サン「!」

 

シーボウ「あ、スーパーマックスノードラゴン!けったいな奴が出て来たぞ!」

 

トノト「あれは、絶滅寸前のドラゴンだ。危害を加えるわけにはいかない」

 

シーボウ「完全に俺たちを狙っているぜ!どうすんだよ!」

 

トノト「ワープは登録した。一度引き返そう」

 

シーボウ「マジか…せっかくここまで来たのに」

 

サン「もっとみんなのお力になれると思ったのに…私の魔力も無意味ね」

 

シュン

 

~トノトたちの冒険は何度も施設へ戻り対策を練り探索を繰り返す、危険を回避し生き残り、酒を手に入れることが目的であるからだ…そう…酒が飲めなければ意味がない冒険なのである~

 

~マジックワールド内施設~

 

シーボウ「ううううう…寒かったぁ!」

 

トノト「燗酒でも飲もう」

 

サン「やった!今日は何?」

 

トノト「不老泉 参年熟成…燗酒に合う酒でね、こいつは冷えた体に染みるぞ」

 

サン「楽しみ~!おつまみは何にしようかしら?シーボウ?」

 

シーボウ「なんで俺に聞くんだ?作れって事か?」

 

サン「あ、私の魂胆がバレちゃった」

 

トノト「いや、誰でもわかるし。つまみはとりあえず燗酒を一杯ひっかけてからだ」

 

シーボウ「トノトの優しさを少しは見習え!サン!」

 

サン「す、すみません」

 

~燗酒を作り出すトノト~

 

トノト「今日の燗酒は45度で飲みたい、酒温計で43度止め、徳利をお湯から出して余熱で2度上がる」

 

サン「上燗というヤツですね。」

 

トノト「ああ、それ以上上げると辛味が気になるのでね」

 

 

~燗酒を飲みながら一休憩するトノト~

 

サン「ふぅ~。お出汁みたい」

 

シーボウ「なんだよ、そのテイスティングコメントは」

 

トノト「心の底から出た言葉だな。正しいコメントだよ」

 

シーボウ「で、俺たちこれからどうするんだ?」

 

トノト「とりあえず、サンの魔法を制御する方法を考えよう」

 

シーボウ「う…ずいぶんと遠回りするな」

 

トノト「いや、サンの魔法が制御できればこれからの冒険にすごく役立つ。近道さ」

 

シーボウ「さん、おまえの事だぞ?何かあてはないか?」

 

サン「アークシティーでは魔法を無効化する技術を開発していないわね。だって、そんなことをすれば、反乱がおきたときに不利になるじゃない」

 

トノト「なるほど、アークシティーの中にも反乱を起こそうとしている人間がいるのか?」

 

サン「ええ、過去にテロを行い捕まった人間がいたわね。でも、マジックシールドで覆われた牢獄を破り逃亡した」

 

トノト「その犯罪者は今どこに?」

 

サン「魔力を追跡したところ、ブレイブシティーというところには行ったみたいだけど、そこから魔力が消えたの」

 

トノト「ブレイブシティー?」

 

サン「ええ、私たちとは冷戦状態にある街なのだけど。あの辺の街の中では一番気を付けなければいけない危険な街ね」

 

シーボウ「魔力が消えたってことは、そこで殺されたのか…」

 

サン「アークシティーとは犬猿の仲と言われているし、殺されても仕方がないわね」

 

トノト「…よし、そのブレイブシティーに行ってみよう」

 

シーボウ「マジか!どうして?」

 

トノト「その魔術師はマジックシールドを破っている。つまり魔力を無効化する方法を何かしら知っている可能性があるわけだ」

 

サン「ま、まさか!」

 

トノト「今、その魔術師はブレイブシティーにいる可能性が高い」

 

シーボウ「ブレイブシティーの行きかたは分かるか?」

 

サン「私が刑を受けた時にかけられたテレポートを逆算すればアークシティーのおおよその場所は分かるわね。そこからだとブレイブシティーにも行けるはず」

 

トノト「では、一度アークシティーに行き、そこからブレイブシティーを目指す」

 

サン「ちょっと待って!わたし街を追放された罪人よ?行けば何をされるか」

 

シーボウ「隠れていけばよくない?」

 

サン「私の膨大な魔力まで隠せるかしら?それにアークシティーでトップの魔術師だから、こう見えて有名人なの」

 

トノト「君に協力してくれそうな人物はいないのかい?」

 

サン「私…弟子が一人いるくらいで…でも、凄い才能を持った子よ!そして、とても可愛いの!」

 

トノト「よし!何としてもアークシティーへ潜入しよう!」

 

シーボウ「おい…」

 

トノト「私たちはシークレットモードでアークシティーへ行く、サン、場所の特定をお願いします」

 

サン「は、はい!」

 

シーボウ≪シークレットモードって魔力も消せるのか?ま、いっか≫

 

~そしてアークシティーの場所の特定を行うサン・フェルミンであった~

 

数日後

 

サン「トノトさん!分かりました!」

 

トノト「さすがサン!純米酒と特別純米の違いまで分かるとは!」

 

サン「違います!どこから出て来たんですかその話が。アークシティーのおおよその場所、私が飛ばされた誤差半径20kmまでの場所を特定できました」

 

トノト「おお!やはりアークシティートップの酒豪なだけはあるな」

 

サン「そっち?で、どうするんですか?かなり遠いですよ」

 

トノト「特定できた場所にはテレポートできないのか?」

 

サン「う…それは…」

 

トノト「ふむ…魔法での移動方法はそれだけか?」

 

サン「そう言えば…テレポストーン!…術者が行ったことがある場所と場所を結ぶ石」

 

トノト「つまり?」

 

サン「わたしが登録したテレポストーンがある場所になら行ける!」

 

トノト「それはアークシティーにあるのかい?」

 

サン「おおよその場所が特定できているし、可能かも…私の響が盗まれていなければ…だけど」

 

トノト「ひょっとして、酒にテレポストーンを?君らしいな」

 

サン「だって!万が一盗まれたら取り戻そうと思っていたから!瓶自体がテレポストーンになっているのよ」

 

トノト「それにかけてみるしかないな。私とシーボウ、複数人をテレポート可能か?」

 

サン「はい!」

 

トノト「では念のためシークレットモードでいこう。お願いします」

 

ガチャ

 

~シーボウが部屋に入って来た~

 

シーボウ「トノト、サン、新しいツマミのレシピを考えたんだけどよ」

 

トノト「お?いいところに来たね!」

 

シーボウ「ん?」

 

シュン

 

~アークシティー~

 

おもちゃがたくさんある部屋に来ていた

 

トノト「ここは…子供の部屋?」

 

シーボウ「つか、ワープするならするって言ってくれよ!」

 

トノト「すまない。しかし、このつまみ悪くないぞ。ほおづきのピクルスか」

 

シーボウ「いきなりつまみ食いか!」

 

トノト「だって、ツマミだろ?」

 

サン「待って!誰か来た!」

 

トノト「シークレットモードだ。心配ない」

 

ドアが開く音がすると小さな子供が入って来た

 

ハロウィン「ううう…また、いじめられちゃった」

 

サン「は!ハロウィン!」

 

ハロウィン「おまえは犯罪者の弟子だ!とかさ…あの優しい先生が悪いことなんかするわけないじゃない!みんなで先生をバカにして!」

 

サン「…う…う…ごめんなさい…ハロウィン…私は…悪いことをしてしまったのよ」

 

ハロウィン「私は絶対に先生の事を信じているから!そして先生みたいな偉大な魔術師になるんだ!」

 

サン「うう…うわ~~ん!ごめんなさい、ハロウィン…私は最後まであなたを見守ることができなかった」

 

シーボウ「…ここは、サンには辛いだろう…トノト、行こうぜ」

 

トノト「ああ…大丈夫か?サン」

 

サン「う、う…」

 

トノト「…に、しても、期待をしていたが年齢対象外だったな」

 

シーボウ「おい、空気を読めよ!トノト!」

 

トノト「その空気を変えただけさ。行けるかい?サン」

 

サン「は、はい…」

 

ハロウィンの部屋を立ち去るトノトたち

 

ハロウィン「!この魔力!せんせい?」

 

~そしてブレイブシティーに向かう三人だった~

 

ハロウィンの部屋を出たサン・フェルミン達、すると辺りは騒然としていた

 

ピーーーーーーーーーー!

 

魔導警察官「危険です!皆さん!早く非難してください!」

 

シーボウ「おい、何かあったのか?」

 

トノト「さぁ?私が聞いてみるよ。君たちはシークレッドモードのままここにいてください」

 

サン「こ…これは…」

 

シークレットモードを解除し魔導警察官の元へ行くトノト

 

トノト「すみません。この騒ぎは何かあったんですか?」

 

魔導警察官「おい!こんなとことに居たら危険だぞ!この近くに大罪人、サン・フェルミンの魔力が現れたんだ!下手をすれば街ごと消されるぞ!早く避難をするんだ!」

 

トノト「へぇ~。そんな危険人物が…私も早々にこの街から出た方が良さそうですね」

 

魔導警察官「ところで君はこの街の人間ではないようですね?許可証は?ってあれ?いない!」

 

サン・フェルミン達の元へ戻るトノト

 

トノト「…らしい」

 

サン「やはり、私がみんなのご迷惑を…」

 

シーボウ「大丈夫だ。まだ迷惑なんてこれっぽっちもかけてないぜ」

 

トノト「やはり、シークレッドモードでは君の魔力までは消すことができないみたいですね。今後の改善点か…」

 

シーボウ「に、しても脱税をしただけでこの騒ぎ…なんかおかしくないか?」

 

トノト「サンの魔力が街にとって危険な存在と認識されていた可能性が高いですね」

 

サン「そ…そんな…」

 

トノト「そこまで恐れられているなら、その魔力が街の外へ出たら深追いされることはないだろう。火に油を注ぐ様なものだからね」

 

サン「…分かりました!街を出ましょう!」

 

シーボウ「て、あれ?サン、おまえ…いつの間にそんな帽子を持ってたんだ?」

 

サン「あ、これ、私の帽子を弟子のハロウィンが持っていたみたいで」

 

レピウス「そんな事より、一刻を争うぜ!サン!フライトの呪文でかっ飛ばそうぜ!」

 

シーボウ「うわ!帽子が喋った!」

 

サン「あ、これ、私が作ったゴーレムなんです」

 

トノト「ほう?珍しい生き物だな」

 

レピウス「お?俺を生き物というなんて、いいやつだな!」

 

サン「当たり前よ!トノトは私よりお酒が強いんだから!」

 

レピウス「なんですと!そ、それはトノト様!大変に失礼をいたしました」

 

シーボウ「かしこまる理由はそこかよ!」

 

サン「では、皆さんをフライトの呪文で街の外へ運びます」

 

トノト「いや、ついでだからブレイブシティーの近くまで頼む」

 

サン「分かりました!」

 

~ハロウィンが近づいてきた~

 

ハロウィン「先生どこ?この辺にいるはずなんだけど」

 

魔導警察官「君!ここに居たら危ないじゃないか!」

 

ハロウィン「サン先生を見なかった?」

 

魔導警察官「き、君は!ハロウィン!サン・フェルミンと会っていたのか?」

 

 

シーボウ「なんか…助けた方が良い空気が流れてないか?」

 

サン「あの子なら大丈夫よ!行きましょう!」

 

ドーーーーーーーン

 

 

シーボウ「ひゃ~!おまえ、飛べたのか!」

 

トノト「飛んだ時に周りの建物が崩壊していったのを見えた気がするけど」

 

サン「ブレイブシティーまで20分で着くわ」

 

トノト「通勤もできそうだな」

 

サン「街の中まで行けばよいのかしら?」

 

トノト「念のため5キロ手前でお願いします」

 

サン「分かりました」

 

 

~ブレイブシティー近郊~

 

 

サン「この辺でよいかしら」

 

シーボウ「めちゃくちゃ早く飛んできた気がするけど、もう着いたのか?」

 

トノト「ふむ。ほうづきのピクルス…ウイスキーと合うと言えば合うけど」

 

シーボウ「トノト、こんな時でも飲んでるのか?いつもの事だけどよ」

 

トノト「サン・フェルミン君…残念なお知らせがある」

 

サン「え?」

 

トノト「君の5500憶…残念ながらやはり偽物だ。絶妙にブレンドはしてあるが」

 

サン「ちょっと!私の5500憶を勝手に飲んだのね!」

 

トノト「心配しなくても、瓶はあの子の部屋に置いてきたよ」

 

サン「トノト…」

 

シーボウ「で、これからみんなでブレイブシティーに乗り込むのか?」

 

トノト「一応、街がどうなっているか知りたいな」

 

サン「では、私のゴーレムで偵察をさせましょう。くまちゃん?」

 

~サン・フェルミンの帽子に乗っているクマのぬいぐるみが動き出した~

 

くまちゃん「ごふ!」

 

サン「お願い!」

 

くまちゃん「ごふ!」

 

ドーーーーーーン

 

凄まじい速さでブレイブシティーへ行くくまちゃん

 

シーボウ「あいつ…俺より強くないか?」

 

サン「スーパーマックスノードラゴンくらいなら倒せるわね」

 

シーボウ「マジか…」

 

トノト「あのゴーレムは君と以心伝心できるみたいだね。私たちはしばらくピクニックとしゃれこもうじゃないか!」

 

シーボウ「ああ、こんなに居心地の良い場所には滅多に来られないしな」

 

サン「肉は?酒は?」

 

トノト「心配しなくても非常用のBBQセットは持参している。しかし、焚き付けがないな」

 

サン「私が火を付けます!」

 

トノト・シーボウ「却下!」

 

シーボウ「サンはおとなしく酒を飲んでろ、俺は何年トノトの助手をやってると思っているんだ?火くらいは起こせるぜ!」

 

サン「男子力高い!ステキよ!シーボウ」

 

 

~サン・フェルミン一行はBBQを楽しんでいた~

 

サン「ところでトノト、あなたがいつも使っている不思議な道具はどこの街で作っているの?」

 

トノト「ああ、この地にはない街だね。テクノっていう惑星都市さ」

 

サン「まさか!この宇宙にあるどこかの惑星ってこと?」

 

トノト「そうなるね」

 

サン「あなた、何者なのよ」

 

トノト「単なる酒好きさ」

 

シーボウ「それを言ったらサン、おまえだってそうじゃないか!変な術を使うし」

 

サン「確かに…返す言葉もないわね」

 

トノト「そんなことは私たちにとって、些細なことだろう?」

 

サン「そういうことにしておきますわ」

 

シーボウ「で、くまちゃんはまだ街には着いていないのか?」

 

サン「私の魔力に気が付き侵入を防ごうとしていたけど、突破したみたいね」

 

シーボウ「突破って…」

 

トノト「サン、それじゃ偵察をよこした意味がないだろう」

 

サン「一応、隠れて行ったつもりでしたけど、くまちゃんの魔力を察知されたみたいで」

 

トノト「ふむ。となると、ますますブレイブシティーに魔術師がいる可能性が強いわけか」

 

サン「くまちゃんが敵を引き付けているから、私たちを攻撃する余裕がないという感じかしら」

 

シーボウ「なら、どさくさに紛れて侵入するしかないか」

 

トノト「いや…」

 

シーボウ「ん?」

 

トノト「サンのゴーレムは魔力で作れているんだよね」

 

サン「そうですが」

 

トノト「では、その魔力が消えたらどうなるんだい?」

 

サン「停止するわね」

 

トノト「では、もう少し暴れてもらうか…ブレイブシティーにその技術を持っているか確認したい」

 

サン「そうか!トノト、頭が良いんですけど」

 

トノト「といわけで、シーボウ。サンの護衛を頼む」

 

シーボウ「へ?」

 

トノト「万が一何かあったら困るだろう?この地の人間が」

 

シーボウ「そうか…知らない土地とはいえ、サンがこの地を滅ぼすのは阻止したいところだな。でも、トノトはどうするんだよ」

 

トノト「魔力を持っていない私がシークレットモードで侵入すれば気が付かれないはずだ。そして、どのように魔法を無効化するのか確かめに行って来る」

 

シーボウ「そういうことは、俺じゃ上手く立ち回れそうにない。頼んだぜトノト」

 

トノト「任せてくれ、ついでに酒を何本かくすねてくるよ」

 

サン、シーボウ「盗賊か!」

 

トノト「サン、くまちゃんは君と以心伝心…つまり、私の指示も聞こえるって認識で良いか?」

 

サン「ええ、トノトの指示があればその通り動かすことも可能よ」

 

トノト「了解した。ではちょっくら行って来るよ」

 

~そしてブレイブシティーに向かうトノトであった~

 

ブレイブシティーの正門にたどり着くトノト、そこには無数の無残な死体が転がっていた

 

トノト「これは酷い…まるで盗賊にでも襲われたかのようだ」

 

ドーーーン

 

街中で大きな爆発音が聞こえる

 

トノト「サン…もう少し手加減はできないものか」

 

ドーーーーン

 

トノト「とにかく、音がする方へ…」

 

 

~ブレイブシティーの中央広場~

 

騎士官「うろたえるな!相手は一匹のぬいぐるみだぞ!」

 

騎士「し、しかしこれほど強い魔獣は見たこともない!」

 

騎士「これは本当に魔獣なのか?」

 

騎士官「相手がなんであろうと、ヤツを城に近づけるな!」

 

騎士「一斉にかかるぞ!四方から攻めればそのうち隙を見せるはずだ!」

 

後ろから何者かが近づいてきた

 

傭兵「おいおいおい!おまえら無能な騎士が一斉にかかればどうなると思う?一斉にやられるだけだぜ」

 

騎士官「おまえは…シグヴァルディ!」

 

シグヴァルディ「まぁ、見てなって。俺があのぬいぐるみの首をちょいとひねってやるぜ」

 

トノトがくまちゃんの近くに来ていた

 

トノト「サン…聞こえるか?」

 

くまちゃん「何かしら?」

 

トノト「城門の兵士…あれは、君がやったのか?」

 

くまちゃん「ええ、みんな気絶しているはずだけど」

 

トノト「なるほど…あの傭兵の仕業か」

 

くまちゃん「え?どういうこと?私はどうすればよいの?」

 

トノト「この国の敵はアークシティーだけではないという事だろうな。察するに騒動の濡れ衣をアークシティーにかけようとしている」

 

くまちゃん「アークシティーとブレイブシティーで戦争を起こさせようとしているって事なの?」

 

トノト「あの傭兵のバックは何か分からないが、遅かれ早かれ戦争が起こることは避けられそうもの無い」

 

シグヴァルディ「気持ちの悪い魔獣だな!何を一人で喋ってやがる」

 

トノト「魔獣とゴーレムの区別がついていない…つまり、彼は意味も分からず指示通り動いているのか」

 

くまちゃん「確かに…あの人からは魔力を感じないわね」

 

シグヴァルディ「頭のおかしい魔獣のことなどどうでもよい。俺はおまえを倒し英雄になるのだからな!」

 

トノト「来るぞ!」

 

シグヴァルディ「うおりゃ!」

 

ドーーーーン

 

シグヴァルディが斧を振り下ろすとその衝撃で周りの建物が崩れ出す

 

騎士官「ま、街を破壊するおつもりですか!」

 

シグヴァルディ「んあ?コイツを仕留めるにはこのくらいのパワーが必要なんだよ!」

 

くまちゃん「トノト、あいつをどうすれば?」

 

トノト「城門の兵士たちを殺した犯人をアークシティーの魔術師と仕立て上げ、それを倒す…くまちゃんの居場所を支持していたとすれば、魔術師の可能性が高い」

 

くまちゃん「つまり?」

 

トノト「あいつを倒さなければ黒幕は姿を現さないだろうな」

 

くまちゃん「あ、倒せばいいんだ」

 

シグヴァルディ「よそ見してんじゃねぇ~よ!」

 

くまちゃん「蹴り?」

 

くまちゃんはシグヴァルディの前蹴りを流しバランスを崩させた

 

シグヴァルディ「!」

 

ドン!

 

シグヴァルディ「ぐほっ!」

 

膝をつくシグヴァルディ

 

くまちゃん「技もパワーもスピードも!甘いわよ!」

 

トノト「君…魔術師だよね?」

 

くまちゃん「このまま大人しくしてなさい!」

 

シグヴァルディに殴りかかるくまちゃん

 

キーーーーーン

 

くまちゃん「!」

 

くまちゃんの打撃を剣で防ぎシグヴァルディをかばう騎士がいた

 

騎士「これ以上は…おやめください」

 

シグヴァルディ「ラモラック!余計なことをしやがって!」

 

ラモラック「あなたには到底勝てない相手です。これ以上戦うことは無意味です」

 

くまちゃん「なかなか歯ごたえのある人が出て来たみたいね」

 

ラモラック「いえ、私にはあなたが悪しき心の持ち主とは思えないのです。ですから、ここはお引き取り願いたい」

 

くまちゃん「あら、せっかくやる気が出たのに残念だわ」

 

トノト「ここは、引いた方が丸く収まりそうだ」

 

くまちゃん「…わかったわ」

 

ラモラック「聖騎士の名に近い、決してあなたの悪いようにはさせません」

 

トノト「…君…世の中はそれほど甘くはないぞ」

 

ラモラック「!だ、誰だ!」

 

ラモラック ≪空耳か≫

 

トノト「さぁ、帰ろうか。サン」

 

くまちゃん「あなた…アークシティーとは戦争を起こさない…そう誓って!」

 

ラモラック「最善を尽くす」

 

後ろから何者かが近づいてきた

 

魔術師「それだと困るんだよね~ラモラック」

 

ラモラック「あなたは!」

 

騎士官「アークシティーを裏切り我が軍についた魔術師…ユダ!」

 

ユダ「せっかくの私の策略を邪魔されると困るのだよ」

 

ラモラック「どういうことだ!」

 

ユダ「…無能な騎士様達は下がっていなさい」

 

ラモラック「城門で殺された兵士たちは首などが切断されていた…しかし、この魔獣は武器などは使用していない…やったのはきさまたちか」

 

ユダ「魔獣~?そんなものどこにいる?」

 

ラモラック「何を言っている!」

 

ユダ「だから無能だと言っているのだよ。君たちの目の前に立っているもの…それは、魔術師が作り出したゴーレムだ」

 

トノト「お目当ての人間が出て来てくれたぞ」

 

ラモラック「魔術師の作り出した兵器がこれほどまでに強いとでもいうのか!」

 

ユダ「いや、ちょっと計算外だね~。通常であればシグヴァルディでも充分に倒せる相手」

 

シグヴァルディ「あんなに強いだなんて…聞いてないぞ!」

 

ユダ「だが、安心したまえ。私にはまだまだ奥の手があります」

 

ラモラック「もう、こんな戦いはやめろ!」

 

ユダ「ちっ…だからあなた方はいつまでたってもアークシティーを落とせないのですよ」

 

シグヴァルディ「ラモラック、おまえが戦え!」

 

ラモラック「断る!」

 

ユダ「ふっ…はなから無能な騎士などは戦力に入れていません。あのゴーレムに闘ってもらうのは…上位精霊のイフリートにさせましょう」

 

ラモラック「い、イフリートだと!」

 

シグヴァルディ「あの、街をも一瞬で焼き払うという…イフリートか!こりゃすげぇ~物が見られそうだぜ」

 

大きな魔法陣が現れた

 

ラモラック「ま、街ごと焼き払うつもりか!」

 

ユダ「安心したまえ。焼き払うのは邪魔な貧困層の地区だけにしますよ」

 

ラモラック「き、きさま」

 

ユダ「王に逆らいたくなければ大人しく見ていなさい」

 

ラモラック「くっ…」

 

騎士官「ラモラック様!我々は…」

 

ラモラック「すまない…貧困街の人々を避難させるぞ、今の私にはそのくらいしか…」

 

騎士官「かしこまりました!」

 

~立ち去る騎士達~

 

トノト「サン、イケそうか?」

 

くまちゃん「余裕よ!」

 

トノト「マジか!では、なるべく周りに被害が出ないように、戦いを長引かせて欲しい…彼がアレを使うまでは」

 

くまちゃん「周りに被害を出さないようにって難しいリクエストね。でも魔法制御を使われたら、くまちゃんは停止するわよ?どうするの?」

 

トノト「そのときは私が何とかする」

 

くまちゃん「分かったわ!やってみる!」

 

ユダ「ふふふ…これも意外でしたねぇ~。君がぶつぶつ独り言を言ってくれていたおかげでイフリートの召喚が成功しましたよ」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

イフリート「グオオオオオーーーー!」

 

ユダ「さあ!イフリートよ!あなたの業火でそのか弱いぬいぐるみを焼き払いなさい!」

 

ドン

 

みぞを殴られ鈍い音と共に膝が崩れるイフリート

 

トノト「おい。戦いを長引かせるって言ったよな?」

 

くまちゃん「周りに被害を出さないようにとも言ったわよね?なら、イフリートに炎を使わせる隙を与えない!」

 

ドーーン、ドン、ドンドン!

 

イフリート「グオオーー!」

 

ユダ「何をやっているんだ!イフリート!」

 

くまちゃん「うりゃーーー!」

 

ドドドドーーーン

 

地面に叩きつけられるイフリート

 

トノト「君…仕事を早く終わらせようとしていないか?」

 

くまちゃん「早く酒が飲みたいのよ!悪い!?」

 

トノト「い、いや…それを言われると…」

 

くまちゃん「とどめよ!イフリート!」

 

シグヴァルディ「おい!やられてしまうんじゃ?」

 

ユダ「くそう!」

 

~その瞬間、黒い光が当たりを包んだ~

 

シュン

 

くまちゃん「あ、あれ…」

 

~空中から落ちていくくまちゃん~

 

ユダ「く…アンチマジック。この手を使うことになるとは」

 

トノト「くまちゃん!大丈夫か?」

 

くまちゃん「まだ、話すことはできるみたいね。完全に魔法を無効化することはできないのかしら」

 

ユダ「この技術はまだ不完全でね。術者の90%の魔力を制御する方法しか開発されていないのだよ」

 

くまちゃん「く…ただでさえ魔力が弱いくまちゃんなのに、90%も削られたらイフリートとは戦えないわ!」

 

トノト「今、凄いことを聞いた気がするんだけど」

 

ユダ「そのとお~~り!まだ不完全とはいえ、このブレスレットがあれば辺り一帯の魔力を90%まで制御できるさ!」

 

シグヴァルディ「…て、ユダ様!おまえ…その腕…」

 

ユダ「い、いでぇ~~~!う、腕が…無い!」

 

シグヴァルディ「これも、あのぬいぐるみがやったってのか!」

 

ユダ「い、イフリート!何をしている!いでぇ~~~!」

 

くまちゃん「きゃ~~~~!なにこれ!トノト!」

 

トノト「ちょうどBBQの肉もキレる頃だと思ってね。調達したのさ」

 

シグヴァルディ「い…イフリートの…頭が…無い」

 

くまちゃん「ちょっと!トノト!どうせなら、頭じゃなくホルモンが食べたかったわ!」

 

トノト「まったく、贅沢なお嬢様だ」

 

シュン

 

シグヴァルディ「イフリートが…消えた…」

 

トノト「私も酒が飲みたくなってきた。貧民街の酒でも買って帰るか」

 

くまちゃん「ちょ、ちょっと人の腕もあるんだけど!」

 

トノト「そのブレスレットは君へのプレゼントさ。一緒についてきた手はシーボウに調理してもらうと良い、出汁くらいにはなるだろう」

 

くまちゃん「あなた達と一緒にしないでよ!まったく」

 

シグヴァルディ「たった一匹のぬいぐるみに…俺たちが勝てないだと?」

 

 

トノト「さて、くまちゃん。帰りの道中、ボディーガードをよろしく頼みます」

 

くまちゃん「はて、あなたに必要かしら?」

 

~くまちゃんとトノトはその後ブレイブシティーで酒を調達し、帰るのであった~