Ultimate THREE ~episode musashi~【私ができるただ一つの約束】

 

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原作 : キャラクターデザイン 神酒 とのと
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Ultimate THREE ~episode musashi~【私があなたにできるただ一つの約束】

 

ここはフレイヤたちが住むトゥランキルタウンからはるか遠くにある大きな山に点在する村の一つである。

ここの山自体に魔力が発生しており、その進化の中で産まれた “魔物” という生き物が住んでいた。

その魔物の絶対数は少ないものの人間を襲い、苦しめることで生み出された負の魔力を食らい栄養源としていた。

 

また、盗賊なども多くおり村ごと襲われることも少なくはない。

村の一つであるこのケップ村も同じ運命をたどろうとしていたのである。

 

村人「おまえはいい女なのに片腕とは、それでは男も寄り付かないだろう?もったいない話だな。」

 

女「片腕であっても花の世話くらいはできる。私はそれで十分だ。」

 

村人「まったく、綾芽(あやめ)よ、おまえは欲がないというか…性格は悪くはないのだがな。もう少し色気を身に着けたらどうだ?」

 

綾芽「花のようにか?」

 

村人「そうよ!花のように華やかでしおらしくすれば、おまえにもいい男ができるかもしれんぞ。」

 

綾芽「花は花、私は私だ。私は花にはなれん。」

 

村人「おまえのそういうところだ。変に男っぽいというか女にしておくのはもったいない性格ではあるんだが。」

 

綾芽「私は男にもなりたいとは思わん。だが、剣術は習ってみたいものだ。」

 

村人「おまえは道場の娘だからな。だがこの村は女が剣術を習うことを禁じているからそれも無理な話よ。」

 

綾芽「何故なんだ?」

 

村人「ああ、なんでも剣を持っている人間を襲う魔物がいるそうで。」

 

綾芽「女であろうが戦えばよいだろう?解せぬ。」

 

村人「女は男に比べると戦いには向いていない。無駄に命を落とすこともないだろうよ。」

 

綾芽「そういうものか…」

 

村人「さ、おまえのお守りも飽きてきた。そろそろ屋敷へ戻ろう。」

 

綾芽「めんどうをかけたな。ありがとう。」

 

村人「おまえの父上もなぜおまえのお守りを俺に頼むんだろうな。口の悪い俺にさ。」

 

綾芽「私は何も出来ぬゆえ、護衛をかねているのだろう。最近は盗賊も現れ物騒だからな。」

 

村人「なるほどね。」

 

 

~綾芽の屋敷~

 

綾芽の父「武太郎、綾芽の護衛ご苦労だった。今日は飯でも食っていかんか?」

 

武太郎「いえ~。嫁さんが待っているので早く帰らなければ恐ろしいことに。」

 

綾芽の父「剣術では優秀なおまえも嫁には敵わんか。」

 

武太郎「ははは!あいつは魔物より怖い。」

 

綾芽「おまえ、そんなに強かったのか?」

 

武太郎「敵道場の師範、善三郎には勝てないけどな。あいつだけは別格だ。」

 

綾芽「ほう?その善三郎というものも一度会ってみたいものだ。」

 

武太郎「あいつは冷酷な人間だ。やめておけ。」

 

綾芽「わかった。今日は世話になった、武太郎。」

 

武太郎「ああ…また明日も来るぜ。じゃあな。」

 

~屋敷を出ていく武太郎~

 

綾芽の父「さあ、綾芽よ私たちも飯にしよう。」

 

綾芽「母の料理は何を食べても美味い!それだけでも生きている価値があるというものだ。」

 

綾芽の父「愛情がこもっているからな。あいつの料理には。」

 

綾芽「感謝しきれん。」

 

 

~屋敷の外を歩く武太郎~

 

ササササ

 

武太郎「ん?なんか変だな…誰かいるのか?」

 

ササササ

 

武太郎は刀に手をかけようとする

 

ザンッ

 

腹を斬られる武太郎

 

武太郎「き、きさま…何やつ!」

 

ザン!

 

その瞬間に武太郎の首を斬り落とされる

 

盗賊「く、首を…一太刀で。」

 

盗賊の長「行け。」

 

~盗賊たちが屋敷に向かっていく~

 

綾芽「母上、今日も美味かったぞ!」

 

綾芽の母「あんたが美味そうにご飯を食べてくれるのを見ると、作り甲斐があるというものよ!」

 

綾芽「私も母上の手伝いがしたい、片腕でもできることはないか?」

 

綾芽の母「あんたは無理をしなくて良いのよ?美味しそうに食べてくれさえすれば私は幸せなの。」

 

綾芽「私は片腕がない状態で産まれてきた、だがそれで私を苦しめるものは何もない。素晴らしい両親がいるのだからな!だから、あまり娘を甘やかさないでくれぬか。」

 

綾芽の母「まったく、あんたって人は…」

 

ガラガラ…

 

~玄関を開ける音がした~

 

綾芽「武太郎か?」

 

綾芽の父「待て!錠はしたはずだ。おまえたちは下がっていろ!」

 

~そういうと刀を持って立ち上がる~

 

タタタタタ

 

~盗賊が綾芽の父目掛けて襲ってくる~

 

綾芽の父「盗賊か!」

 

盗賊「死ね!」

 

綾芽の父「笑止!突!」

 

綾芽の父は盗賊の斬撃をかわし刀で突きさした

 

綾芽の父「き、きさま!」

 

盗賊は刺された刀をつかんで離さない

 

盗賊「今だ!」

 

後ろからもう一人の盗賊が斬りかかった

 

ザン

 

綾芽の父「ぐあっ!」

 

ドン

 

斬り殺されて倒れる綾芽の父

 

綾芽「父上!」

 

綾芽の母「あ…あなた!」

 

綾芽「ここは私が時間を稼ぐ!そのうちに母上は逃げろ!」

 

盗賊「片腕のおまえに何ができる?心配をするな。全員殺すつもりだからな。」

 

綾芽の母「綾芽だけは…この子だけは助けてあげて!この子は何もできないのよ!」

 

そういうと綾芽をかばうように抱きしめる綾芽の母

 

綾芽「ダメだ母上!私のことはかまうな!」

 

盗賊「いい親子愛だね。では、母親から死んでもらうとするか。」

 

ザン

 

綾芽の母「ぎゃああ!」

 

斬り殺される綾芽の母

 

綾芽「母上!」

 

綾芽≪母上は…私を助けようとして…生かそうとして…殺された…≫

 

盗賊「どうだ?目の前で両親が殺された気分は?」

 

綾芽≪両親は…私を生かそうとして…殺された…≫

 

盗賊「どうした?ショックで正気を失ったか?」

 

綾芽≪両親は…何故生かそうとした…この私を…≫

 

盗賊「…つまらんな…もっと恐れる顔を見たかったぜ…まあよい…死ね!」

 

ザン

 

綾芽は盗賊が刀を振り下ろすとすばやくかわし、テーブルの箸を持つ

 

盗賊「くそ、まぐれでかわしやがったか!」

 

もう一度綾芽に刀を振り下ろす

 

盗賊「ぐあ!」

 

刀をかわし盗賊の目に箸を刺しこんだ綾芽

 

盗賊「ぐああ!きさまーー!」

 

後ろから盗賊の仲間が集まってきた

 

盗賊「何をてこずっている!」

 

盗賊「今度こそ、ぶち殺してやる!」

 

綾芽の近くには殺された父が持っていた刀が落ちていた

 

盗賊「死ね!」

 

ザン

 

盗賊「ぐは!」

 

父の刀を持ち盗賊を斬った綾芽

 

綾芽「わ…私は…人を…殺めてしまった…」

 

盗賊「おい!やられたぞ!一斉にかかれ!」

 

綾芽≪私は…死んでは…いけない…≫

 

ザン

 

盗賊「ぐは!」

 

綾芽に斬り殺される盗賊達

 

盗賊「くそ!娘が剣術を習っていたとは聞いていないぞ!いつの間に習っていやがったんだ!」

 

綾芽「見様見真似だ!」

 

最後の盗賊は逃げようとしたがその奥にもまだ人がいたようだ

 

盗賊「善三郎様!」

 

善三郎「きさま…今…逃げようとしたな?」

 

盗賊「あの女!予想以上に強いのです。」

 

善三郎「わかった。」

 

盗賊「では、善三郎様が!」

 

善三郎「ああ。」

 

綾芽「おまえが善三郎か。」

 

善三郎「武太郎を殺したので、安心していたんだがね。まだ君のような生徒がいたとは。」

 

綾芽「剣術など習ってはおらん。」

 

善三郎「こいつらも一応は私の生徒たちでね。そんな噓が通用するとでも思ったか?」

 

綾芽「私は斬り合いなど望んではいない…帰ってはくれぬか。」

 

善三郎「断る。この村に二つも道場はいらないのでな。」

 

綾芽「く…そんな理由のために…」

 

善三郎「では、きさまがどの程度の腕を持つか試してやろう。」

 

刀を構える善三郎

 

綾芽≪私は…生きなければいけない≫

 

善三郎は下から斬撃を救い上げる

 

かわそうとする綾芽

 

善三郎「一呼逆風唐竹!」

 

ドサ

 

切り上げた斬撃はそのまま斬り落とす斬撃と変化し綾芽の刀は左腕ごと斬り落とされる

 

綾芽は膝をつきうずくまる

 

綾芽「ぐっ。」

 

善三郎「ふはは!斬り落とせるものが無くなってしまったな!では次は首を落とすか!」

 

善三郎はあることに気が付く

 

善三郎「きさ…ま…腕ごと斬り落とされた刀を咥えて何をしようとしている!」

 

綾芽≪私は…生きたいだけ≫

 

ダンッ

 

綾芽は咥えた剣で善三郎に向かっていく

 

善三郎「くそっ!」

 

少しうろたえた善三郎だったが逆風で切り上げると綾芽の目を斬った

 

綾芽を斬ったことでわずかに油断した善三郎

 

綾芽≪私は…生きなければならない≫

 

グサ!

 

それでも刀を離さず、善三郎の胴体を刀で貫いた綾芽

 

善三郎「ぐは!」

 

ドサ

 

盗賊「こ、こいつ…やりやがった。ば、バケモノだ!」

 

というと逃げていく盗賊

 

綾芽は咥えていた刀を離し倒れそうになるも歩き続ける

 

綾芽≪私は…生きなければ、いけ…ない≫

 

綾芽≪父上と母上が生かしてくれた…命を…無駄に…は…≫

 

意識が失われ倒れそうになるも持ちこたえる

 

綾芽「生きろおおおおおーーーー!」

 

そう叫ぶと綾芽の意識は失っていった

 

 

綾芽は目が覚めようとしていたが、まだ目を開けることができない

 

綾芽≪私は…生きているのか?≫

 

綾芽≪私は…人を…殺めてしまった≫

 

 

なにか子供のような声も聞こえてきた

 

子供「ぐすっ…お母さん…」

 

綾芽≪こど…も≫

 

子供「お母さんは僕を守って死んだんだ…ぐす。お母さん…」

 

綾芽≪この子も…わたしと…おなじ…≫

 

また気を失う綾芽

 

だが、時々意識が戻ることもあったようだ

 

子供「それにしても…こんな怪我で生きているなんてどんな身体をしているんだろう?」

 

子供「お母さんにそっくりだから、ほっておけないけど、僕…これ以上ここにはいられないんだ。」

 

子供「僕…魔物に狙われているから、これ以上ここにいたら、おばさんも襲われちゃう。せっかく助けてやったのにさ。」

 

綾芽≪この子も助けてくれたのか≫

 

子供「あの山を越えたら、それ以上は魔物が襲ってこないって聞いたんだ!だから、僕行かなきゃ。おばちゃん!元気でな!」

 

綾芽≪や…ま…≫

 

また気を失う綾芽

 

~そして1日が経った~

 

綾芽の目は開くことができた

 

綾芽「私は…生きている…」

 

起きようとする綾芽

 

綾芽「腕と目…手当をしてくれたのか。」

 

綾芽の近くにはおにぎりが置いてあった

 

綾芽「あの子が…」

 

そういうとおにぎりにかぶりつく綾芽

 

綾芽「お礼を言わなければいけないな。確か山を越えると言っていた」

 

外に出る綾芽

 

綾芽「ここは神社か…家はどうなった?」

 

一度家に戻ろうした綾芽だったが、引き返した

 

綾芽「今家に戻っても、私にできることはない。私は村の人を殺めた…それより、あの子を…」

 

その後綾芽は村を出て天坊山を目掛けて歩き出した

 

~数週間後~

 

綾芽は生きていた

 

道なりに進んできた綾芽はある村の近くまで来ていた

 

綾芽「道なりに来たが…村を通らないと先には進めないのか…崖もあり私では遠回りするのも難しそうだ。」

 

綾芽「私が村を通ると周りの人間に迷惑をかけてしまう…できるなら通りたくはないが」

 

しぶしぶ歩く綾芽だったが、人通りがある村の入り口まで来ていた

 

村人「なんだアイツ!両腕がないぞ!」

 

村人「汚い女ね!村に来るならお風呂くらい入りなさいよ!」

 

村人「くっさ~~い!あの人、垂れ流しているよ。おえ~!」

 

綾芽は両腕がないため、服を脱ぐこともできず、身体を洗うどころか汚物も垂れ流すことしかできなかった

 

村人の罵声を浴びながら歩く綾芽は何かに気が付いた

 

綾芽「蛙…」

 

グチャ

 

蛙を踏みつけ殺すと這いつくばり食べだす綾芽

 

村人「ひええええーーー!蛙を殺して食ったぞ!こいつやっぱり魔物だろ!」

 

村人「近寄ったら殺されるわよ!」

 

綾芽が蛙をむしゃむしゃと食べていると後ろから声が聞こえた

 

子供「おばちゃん…」

 

綾芽はその声が聞き覚えのあるものだと思い出す

 

綾芽「おまえは!私を助けてくれた子か!礼がしたかったのだ!なんでも言え!」

 

子供「い、いや…その状況で何でも言えって言われてもな。」

 

綾芽「し、しかし何もしないわけにはいかないのだ!」

 

子供「そ、その前にこの臭い…村の人にも迷惑だから川に行こうよ!」

 

綾芽「川?し、しかし私は…」

 

子供「俺が綺麗にしてやるって!」

 

綾芽「ほんとか?し、しかし…これ以上おまえに恩を受けたら私はどうやって礼を返せば。」

 

コジロウ「いいんだって!それに、俺の名前はコジロウって言うんだ!」

 

綾芽「すまぬ!コジロウ!その辺の蛇を捕まえて来てやるぞ!」

 

コジロウ「いいってば、早く川に行こうぜ!臭くてたまらない。」

 

 

そして綾芽を川に連れていくコジロウだった

 

 

コジロウ「ふぅ~。髪も洗ったし、これで綺麗になったな!」

 

綾芽「すまなかったな。コジロウ」

 

コジロウ「おばちゃん…なんであんな怪我をしていたんだ?」

 

綾芽「家が襲われてな。」

 

コジロウ「盗賊にか?」

 

綾芽「まあ、そんなところだ。」

 

コジロウ「そうか…僕も魔物に…」

 

口を押えるコジロウ

 

綾芽「おまえは…魔物に狙われているのだろう?」

 

コジロウ「え?聞こえてたの?」

 

綾芽「ああ、それでコジロウは天坊山を目指しているのだろう?魔物から逃れるために。」

 

コジロウ「うん。魔物はいつ襲ってくるか分からない。だから、僕の近くにいたらダメなんだ。」

 

綾芽「私もその天坊山まで連れていけ!お礼がしたい!」

 

コジロウ「えっ?なんで?」

 

綾芽「ほら、いざというときは私が囮になればよい!その間にコジロウは逃げろ!どうだ?」

 

コジロウ「そんなのダメだよ。」

 

綾芽「何故だ?」

 

コジロウ「だって、僕…おばちゃんには死んでほしくないもん!」

 

綾芽≪死んで…ほしくない…≫

 

コジロウ「だから、ごめんね。」

 

綾芽「そうか…」

 

ぐぅ~~~

 

綾芽のお腹が鳴った

 

綾芽「腹が減ったな…蛇でも捕まえてくるか。」

 

コジロウ「おばちゃん!そんなのばかり食べてたらお腹壊すよ!」

 

綾芽「心配するな!私はお腹を壊しても我慢する術を覚えたのだ。」

 

コジロウ「もう…おばちゃん、ろくなご飯食べてないんでしょう?今日はおごってあげるよ。」

 

綾芽「いや、これ以上コジロウの世話になることはできない。」

 

コジロウ「せっかく盗んだ金でおごってやろうと思ったのに。」

 

口を押えるコジロウ

 

コジロウ「じゃ、おばちゃん!元気でな!」

 

後を去るコジロウ

 

 

村の中を歩くコジロウ

 

コジロウ「で?」

 

綾芽「で?」

 

コジロウ「なんで付いて来てるのさ!」

 

綾芽「魔物が出るかもしれんだろう?それに、礼もまだしていない。」

 

コジロウ「もう!」

 

逃げるコジロウ

 

綾芽「待て!コジロウ!」

 

 

綾芽「コジロウ!どこに行った?」

 

コジロウを追いかけたが見失ったようだ。

 

探しているうちに裏路地に入る

 

ドン!

 

コジロウ「いてて…。」

 

村人「おい…俺の金を盗むなんて、度胸があるじゃねぇ~か。」

 

コジロウ「お腹が空いていて…どうしても、食べ物が…」

 

ドン

 

コジロウ「ぐえ!」

 

村人「腹が空いてりゃ、人の金を盗んでいいってか?いいわけねぇ~よな?」

 

綾芽がコジロウに気が付き駆け寄った

 

綾芽「コジロウ!大丈夫か?」

 

村人「誰だ?このお姉ちゃんは?」

 

コジロウ「この人は…関係がない。」

 

綾芽「コジロウ…おまえ、盗んだ金は返したのか?」

 

コジロウ「今、全部取られた。」

 

綾芽「そうか…すまぬが、今回だけこの子を許してはもらえないだろうか?」

 

村人「許す?それはできねぇ~な。」

 

綾芽「たのむ。」

 

村人「ほう?おまえ…両腕はないが、よく見るとなかなかいい女だな。」

 

コジロウ「おばちゃんは関係ないって言ってるだろ!」

 

村人「この姉ちゃんはそうでもなさそうだぜ?」

 

綾芽の周りを回り歩きながら匂いを嗅ぎだす村人

 

村人「このガキを殺すか…もしくはおまえが…」

 

綾芽「何をすればよい?」

 

村人「がははは!話が早くて気に入ったぜ。俺に付いてきな!」

 

綾芽「わかった。」

 

コジロウ「おばちゃん…」

 

綾芽「コジロウはどこか安全なところに。」

 

そういうと村人について行く綾芽

 

 

コジロウ「確か…こっちの方に来たはずなんだけどな。」

 

綾芽をあちこち探しまわるコジロウ

 

 

コジロウ「空き家はあるけど、こんなところにいるかな?」

 

こそっと空き家に入るコジロウ

 

コジロウ「いないな…奥の部屋に行ってみるか。」

 

コジロウが奥の部屋に行くと人の影があった

 

その人影は裸の姿になっていた綾芽であった

 

綾芽「う。」

 

コジロウ≪泣いている?≫

 

コジロウ「おばちゃん!大丈夫か?」

 

綾芽「こ、コジロウ!なぜここに?」

 

コジロウ「なんで裸なんだよ!」

 

綾芽「まあ…いろいろあったんだ。」

 

綾芽は少しカタカタと身体を震わせている

 

コジロウ「寒いのか?今服を着せてやるよ!」

 

綾芽「すまない。」

 

綾芽に服を着せるコジロウ

 

綾芽「コジロウ…」

 

コジロウ「あ、後…これ」

 

というと綾芽にイヤリングを付ける

 

綾芽「なんだこれは?」

 

コジロウ「これ…死んだお母さんの形見。」

 

綾芽「そんな大切なもの!もらえん!」

 

イヤリングはぼんやりと光り出す

 

コジロウ「あれ、なんで光っているんだろう?」

 

綾芽「私ではイヤリングを外すこともできん。返すから取ってくれるか?」

 

コジロウ「嫌だよー。」

 

綾芽「コジロウ…では礼というわけではないが、そこにお金がある…それで好きなものを食べろ。」

 

コジロウ「え?おばちゃん、このお金…どうやって?」

 

すると外からさっきの男の声がする、他の男もいるようだ

 

村人「ホントにまだいるのか?」

 

村人「ああ、あいつには両腕がない、つまり服も着られない。外には出られないってことさ。」

 

村人「両腕がないってことだと、買い手も付かないだろう。」

 

村人「いや、あの女の抱き心地は最高だ!きっとあのお方も気に入ってくれるはずだぜ。」

 

綾芽「コジロウ!そのお金を持って隠れろ!」

 

コジロウ「で、でも。」

 

綾芽「いいから、早く!」

 

ドーンという音がして男が入ってきた

 

村人「さてー。お姉ちゃんはいるかな~?」

 

綾芽「ここにいる。」

 

村人「お、そうだ。お姉ちゃんというのもなんだから、おまえに呼び名を付けてやろう。」

 

綾芽「名前などいらん。」

 

村人「まあ、そういうなよ。ムサシってどうだ?男らしくてよいだろう?」

 

綾芽「ムサシ…」

 

村人「本名だとあれなんでな。ムサシってのは昔いた剣豪の名前だ。ひゃひゃひゃ。」

 

綾芽「何がおかしい。」

 

村人「い、いや…あれ?おまえ、どうやって服を着たんだ?」

 

綾芽「そんなことより、何の用だ?」

 

村人「ああ、おまえに会わせたい人がいてね。付いて来るよな?」

 

綾芽「断れば?」

 

後ろから薬のようなものを吸わされ、眠りに落ちる綾芽

 

 

~ある屋敷~

 

村人「おい、さっき連れてきた女、何やら呪文のような言葉をずっと喋っているぞ。頭もおかしくなったんじゃないのか?」

 

村人「奴を眠らせる薬が強すぎたのか。さっきまでは普通に話せていたんだが。」

 

村人「このまま、目が覚めないなら廃棄処分だな。」

 

~牢屋~

 

綾芽「…ぬあ…ざ…ば…うん…さ…」

 

コジロウにもらったイヤリングはまたぼんやりと光っている

 

意識が朦朧としている綾芽に耳に何かが聞こえてきた

 

「…ば…さん…」

 

「お…ば…さん…」

 

綾芽≪おば…さん≫

 

コジロウ「おばさん!」

 

綾芽「こ…コジロウ…」

 

目が覚める綾芽

 

綾芽「コジロウ!なぜここへ来た?見つかるぞ!逃げろ!」

 

コジロウ「おばさんを助けに来たんだ!今、牢屋を開けてやる!」

 

綾芽「無理だ!私のことは捨てておけ!」

 

コジロウ「僕は…僕は男なんだ!」

 

綾芽「コジロウ…」

 

コジロウ「鍵を開けるのは慣れている!もう少しだ。」

 

屋敷からドーーーーーンという大きな音がした

 

村人「ま、魔物だ!魔物が出たぞ!」

 

綾芽「くそ。こんな時に。」

 

コジロウ「だぶん。僕を嗅ぎつけてきたんだ。」

 

村人「ぎゃああーーーー!」

 

多くの屋敷の人間が殺されているようだった

 

コジロウ「あ、開いた!おばちゃん早く!」

 

牢屋を出た綾芽…そしてまがまがしい光景を見た

 

綾芽「これは…」

 

魔物「ぐへへへ…見つけたぞ!コジロウ。」

 

それは屋敷の人を殺しむさぼり食べている魔物の姿であった

 

綾芽「コジロウ…私が食い止める!おまえは今すぐ逃げろ!」

 

コジロウ「く…魔物め、また出てきたな。」

 

というと腰にしまってあった小さなナイフのような刃物を取り出した

 

綾芽「おまえには無理だ!」

 

コジロウ「おばちゃんを置いて…行けない!」

 

魔物「刃物…刃物か…私の刃物とどっちが斬れるかな?」

 

綾芽「こいつ、刃物を持った人間を襲う魔物か!その刃物を捨てるんだ!おまえから狙われるぞ!」

 

コジロウ「い、嫌だ!おばちゃんを守るんだ!」

 

綾芽「おまえには母に守ってもらった大切な命があるだろう!刃物を置いてさっさと逃げろ!」

 

コジロウ「魔物め…お母さんの仇だ!」

 

綾芽「コジロウ!その刃物を!」

 

綾芽が心の中でコジロウの刃物を取り上げようと考えると刃物が勝手に動き出す

 

コジロウ「えっ?」

 

刃物は綾芽のもとに行った

 

綾芽「これは…まるで私が、両手で刃物を持っているような感覚だ。」

 

コジロウ「お、おばちゃん。」

 

魔物「刃物がおまえに?良いだろう、おまえから切り刻んでやる!」

 

ドドドドド

 

刀の斬撃のような衝撃波がものすごい勢いで綾芽の方に飛んでくる

 

ひらり

 

綾芽はその斬撃かわした

 

綾芽「かわせた?」

 

魔物「なに?俺の攻撃をかわしただと?」

 

綾芽「はーーーーー!」

 

というと刃物と一緒に魔物方にすばやく飛び込んだ

 

魔物「早い!しかし今度こそ!」

 

一瞬辺りは静寂する

 

魔物「き、消えた?どこに?」

 

コジロウ「おばちゃんが消えた?」

 

綾芽「見えるものすべてを斬ったのだ!視斬!」

 

魔物「う、上か!」

 

綾芽「おまえは真上に斬撃を飛ばすことができないだろう。」

 

魔物「くそ、だが俺の身体は岩でできている。おまえに私を斬ることができるのか?」

 

綾芽「いや、斬る!」

 

ザン!

 

小さな刃物で魔物を真っ二つにした

 

綾芽≪なぜ…わたしは…魔物と戦える?≫

 

魔物「ぐは。」

 

コジロウ「おばちゃん!すげーーー!」

 

綾芽に駆け寄るコジロウ

 

すると隣のの部屋から声が聞こえた

 

「ぎゃあああーーーー!く、食われる!やめてくれー!」

 

綾芽「コジロウ!おまえはここに!」

 

コジロウ「おばちゃん!まさか?」

 

綾芽「まだ生きているものがいるかもしれん。助けに行く。」

 

コジロウ「だって、おばちゃんを牢屋に入れた人間だぞ?きっと奴隷にするつもりだったんだ。」

 

綾芽「命に過ぎたる宝なしというだろう?それに…わたしがそうしたいのだ。」

 

部屋から触手のようなものがコジロウ目掛けて伸びてきた

 

コジロウ「えっ?」

 

触手に連れていかれるコジロウ

 

綾芽「コジロウを返せ!」

 

部屋に行くと大きな植物のような魔物がいた

 

辺りの人間たちは首などをもがれ死んでいる

 

綾芽「きさま!すべての人間を殺したのか!」

 

魔物「大人は不味い…だが、この子供は美味そうだ。ぐへへへ。」

 

そういうとコジロウを身体に取り込んだ

 

綾芽≪コジロウは…まだ生きている≫

 

魔物「俺の身体に取り込まれた者はすぐに消化されるのさ。俺を斬れば子供も斬られる…助けられなかったなぁ!ぐへへへ」

 

イヤリングが光り出す

 

綾芽≪この感覚…≫

 

魔物「おまえは大人だから殺してやるよ!」

 

綾芽は刃物を魔物に向けた

 

魔物「そんな小さな刃物で何ができ…ぐ…う…動けねえ…」

 

綾芽「鎖之剣 (くさりのつるぎ) …」

 

綾芽≪何故私は…剣を扱える…≫

 

魔物「きさま!俺の身体に何をした?」

 

綾芽「…せん…ぼう…」

 

魔物「まさかおまえ、子供ごと俺を斬るつもりじゃないだろうな?子供はまだ生きているぞ!」

 

綾芽「とう…せん…ぼう…」

 

魔物「よ、寄るな!」

 

綾芽は少しため息のように息を吐きだすと構えた

 

綾芽≪なぜ…私は…これほどまでに…≫

 

綾芽「獅犬抜刀流 (しけんばっとうりゅう) …」

 

綾芽≪これほどまでに…強い≫

 

魔物「や、やめろ!」

 

綾芽≪大切な人に守られた私の命…いや…今は大切な人を守るために…≫

 

綾芽「透閃暴 (とうせんぼう)!」

 

綾芽は目に見えないような速さで魔物を切り刻んだ

 

ぐえええーー!

 

綾芽「私は生きなければいけない!」

 

バラバラ切り刻まれる魔物、そして魔物を斬った刃物は綾芽の前の畳に刺さった

 

コジロウ「う…う…。」

 

魔物はバラバラに切り刻まれたがコジロウには傷一つついていなかった

 

コジロウ「おばちゃん…これ、おばちゃんがやったのか?」

 

綾芽「ああ…」

 

綾芽≪私はこの子の命を守ることができる…≫

 

コジロウ「凄いよ!おばちゃん…あ?」

 

綾芽「なんだ?」

 

コジロウ「おばちゃん…名前は何て言うの?聞くのをすっかり忘れてたや。」

 

ムサシ「私か?私は…ムサシだ。」

 

コジロウ「ムサシ…ムサシがこんなに強かったなんて知らなかった!」

 

ムサシ「悪いが…コジロウ。」

 

コジロウ「なんだい?」

 

ムサシ「魔物に襲われて死んだこの人たちを弔ってはくれぬか?」

 

コジロウ「え~~?だってこいつら!…いや…いいよ。やってやるよ。」

 

ムサシ「恩に着る。」

 

≪た…す…け…て≫

 

ムサシ「誰だ!」

 

コジロウ「どうしたの?もう、魔物はいないだろ?」

 

≪助け…て≫

 

ムサシが声をする方に行くとそこには飾られている刀があった

 

ムサシ「おまえか…」

 

≪一緒に…つれて…いって≫

 

ムサシ「わかった。」

 

コジロウ「ん?細くて高そうな刀だな。侍の刀だろうか?」

 

ムサシ「侍とは?」

 

コジロウ「なんでも、遠い遠い土地のどこかに侍という刀を使う戦士がいるんだって!」

 

ムサシ「サムライ…」

 

コジロウ「これ、売ったら金になるのかな?」

 

ムサシ「いや、この刀を私の腰に付けてくれぬか。」

 

コジロウ「ムサシ…これで…魔物を?」

 

ムサシ「ああ、これでおまえにもお礼ができそうだ。」

 

コジロウ「僕に…付いて来てくれるのか?」

 

ムサシ「もちろんだ、天坊山まで連れて行くと約束しよう。」

 

コジロウ「普通の人間は魔物を斬ることができない。でも、ムサシなら…」

 

ムサシ「あと、盗みはもうやめろ。」

 

コジロウ「でも…そうでもしないと。」

 

ムサシ「金は私が何とかする。また、危険な目に合うだろ?」

 

コジロウ「わかったよ…」

 

ムサシ「さあ、では死んだこの人たちを…」

 

コジロウ「ひええ~重労働だなこりゃ。」

 

 

ムサシ≪今なら、両親が命を犠牲にして私を守った理由がなんとなくわかる≫

 

ムサシ≪私もこの子を守りたい≫

 

ムサシ≪だが…この子を守るために…私は絶対に死なない。≫

 

 

そうしてムサシとコジロウの天坊山へ向かうたびは始まったのである

 

Ultimate THREE ~episode musashi 完