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【映画】『白いリボン』(ネタバレ)

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★★★★☆

あらすじ



第一次世界大戦前夜、ドイツ北部の小さな田舎町。
地主である男爵が支配するこの町で、ある日、帰宅途中のドクターが落馬して大けがを負う。道に張られていた細い針金が原因だった。
その次には、男爵の製材所で女性の事故死が発生する。さらに、男爵のキャベツ畑が荒らされ、挙げ句に男爵の息子が行方不明になる。
犯人がわからぬまま、敬虔な村人たちの間に不安と不信が拡がり、次第に村は重苦しく張り詰めた空気に覆われていく。

感想

死ぬまでに観たい映画1001本』掲載の映画より、『白いリボン』。
(関連記事:『死ぬまでに観たい映画1001本』を、死ぬまでに観てみるという軌跡のもくじ。

正直なところ、この映画に対するぼくの感想を一言で言うならば「よくわからなかった」と言わざるを得ない。
『死ぬまでに観たい映画1001本』から仕入れた前知識で、「モノクロ」「140分」もある映画だということがわかり、「これはきっと小難しい映画で、よくわからないかもしれないな~」という予感はあったんだけど、その予感とは全く違う意味でよくわからない映画だった。

物語は第一次世界大戦が始まる前のドイツの田舎が舞台。
村では、「誰かが仕掛けた針金のトラップで、村の医師が落馬して骨折」「小作人の妻の工場での事故死」「村の権威である男爵のキャベツ畑のキャベツが切り刻まれる」「男爵の息子が誘拐→逆さ吊りでむち打ちにされた姿で発見」「男爵の納屋がで火事」「牧師が飼っていた文鳥が殺され、串刺しにされる」「医師の補佐である助産婦の息子が行方不明→目を潰された姿で発見される」という具合に、次々に奇妙な事件が起こり、「これらの事件の犯人は誰?」というミステリーが、この物語の本筋。
そして、全ての事件にゆるーく関わりをもつ村の教師が、本作の語り手となる。

これらの事件については、一部をを除いて、「犯人は○○!」と作中で断言されることがない。
ただ、「事件の犯人がわからない=この映画がよくわからない」というわけではないのが、この映画の特殊なところ。
犯人を断言はしないものの、犯人が誰であるかを匂わせるカットは過剰なほどで、普段からミステリーを読み慣れていない人であっても、おそらく犯人の正体がわからないということはないだろう。

また、複数のエピソードが並行して語られるなかで、やっぱり「核心を語らない」という演出が多いのも特徴的。
例えば、村でも有数の厳格な男である牧師が、息子に対し「お前には失望した!」「あんなことをやっていると、病気になって死ぬんだぞ!」と怒鳴りつけ、ベッドに縛り付けるシーンがあるんだけど、ここでも「牧師が息子を叱る理由」が、はっきりとは描かれない。
ただ、やっぱりここでも、断片的に提示される情報から「息子が自慰行為をしていた」んだろうということが容易に想像がつくように作られている。

このように、作中であたかも「謎」のように語られるエピソードは、全て作中の情報で解決できる問題で、要素を細かく見ていったところで「よくわからない」部分はない。
それなのに、物語全体を見ると、何を言いたくて、何が起こったのかが「よくわからなかった」と思えるのが本作。
つまり、「細部は理解できるのに、全体を見るとよくわからない」物語。
言い方を変えれば、「ものすごく「具体的」なエピソードを積み上げて作られているはずの作品なのに、積み上ってしまうと何故か非常に「抽象的」に見える」もの。
それが、本作「白いリボン」の印象なのだ。

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そんなわけで、感想を一言で言うと「よくわからなかった」わけなんだけど、まあせっかくブログを書いたわけですし、自分の考えをまとめる意味でも、僕なりの解釈を整理してみることにする。

本作を見ていく中で、ずっと気になっていたのは、なんで本作のタイトルが「白いリボン」なのかということ。

具体的に「白いリボン」とは、映画の冒頭で牧師が娘と息子の腕に巻くリボンのこと。
牧師曰く、「このリボンはお前たちが無垢であるように戒めるためのもの」であり、「お前たちが子供の頃、もう大丈夫だろうと外したのが私の間違いだった」と、再度巻かれたものだ。
この「白いリボン」のエピソードは、たしかに印象的ではあるんだけど、本作全てを内包する象徴のようなシーンには思えなかった。
その後、終盤までは「白いリボン」とはあまり関係がない話が続くんだけど、最後の最後で本作のタイトルが「白いリボン」である理由が理解できた。。。。。。ような気がする。

ここで思いっきりネタバレになってしまうが、終盤で、冒頭に書いたいくつかの事件の犯人の正体が「牧師の娘と息子を中心とした子供たち」であることが示唆される。
それだけ見ると、抑圧された子供たちが解放の場として犯罪行為に手を染めているという風にも見えるんだけど、実際はそういうわけでもない。
彼らが犯罪を犯したのは、不倫をしていた医師や、権力を笠に着た男爵の息子や、純粋さを装う助産婦の息子への粛正に近いもので、「無垢であることを強いる教育への反発」ではなく、あくまで「無垢であることを遂行している」ようにも見えるのだ。
それは、言わば、「無垢」の原理主義者とも言うべき姿だ。

そして、おそらく自分の子供たちが一連の事件の犯人であることに気がついた牧師は、映画の終盤で、彼らの腕から「白いリボン」を外してしまう。
プロローグで、「お前たちが本当に無垢になるまでこのリボンを外してはいけない」とはめたリボンを、このタイミングで外すのだ。

これは2通りの解釈ができて、一つは「犯罪を犯した二人は、想定していた<無垢>ではないんだけど、牧師が「自分の教育が間違っていなかった」と思い込むために、二人を<無垢>だと認める体を取った」という解釈。
そして、もう一つが「二人の「無垢」原理主義者っぷりを見て、ただ純粋に、二人を<無垢>だと認めた」という解釈。
医師の表情からはどういう解釈が正しいのかまでは読み取れないが、どちらにせよ、子供たちの<無垢>さが大人たち(自分たちを棚に上げて、子供たちに無垢であることを強いるという欺瞞)を駆逐した瞬間であり、<無垢さ>を振りかざす子供たちが心底おそろしいと思う終わり方だった。
(歴史的にも、本作で描かれた時代の数年後にドイツでは「ナチス」が生まれているわけで、具体的な後日談は描かれないにせよ、この子たちがナチスの中枢になっていくことを考えると、本当にゾッとする結末です。。。)

そういうわけで、結局のところ、「白いリボンを身につけてから外すまで」を描いた本作のタイトルは『白いリボン』であるのが必然だと思うのでした。

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もう一点、本作の特徴的な点が、大人たちのゲスっぷりの不愉快さ。
全員がなかなかのものなんだけど、特にひどいのが医師だ。

「医師」は、村の権威としてみんなから尊敬をされている人物ながら、一緒に仕事をしている助産婦を“性的な意味での奴隷”として長年奉仕させ続けるような男。
それでいて、最近17歳になっていい感じの成長を見せている娘に絶賛乗り換え中のクズなのだ。
(だからこそ、子供たちの<無垢>の標的になるんだけど。)

これだけでも充分クズなんだけど、用済みになった助産婦への発言が、マジで衝撃的に酷い。

あまりに酷いので、ここで全文を書いてみよう。
お前は醜く 汚く 皺だらけで 息が臭い
カバーを殺菌しとけ
ふぬけた死人のような顔をするな
疲れたんだ、他の女を思いながらお前と寝るのは
いい匂いがして 若くて 皺一つない女
だが私の夢想はかなわない
結局またお前が相手で 反吐が出る思いがして
自分が嫌になる その繰り返し。

妻の死後 痛みのはけ口が欲しかった
相手は誰でもよかった 雌牛でもな
娼館は遠いし二ヶ月に一度では私には不十分だった
被害者面をしてないで帰ってくれ


その発言を攻め、責任を取れと迫る助産婦に対して、さらに、
帰れ!お前には自尊心がないのか

と怒鳴りつける始末。

まったく、映画史に残るクズ発言!

なんだかんだと映画本編の分析的なことを書いてはみたものの、この台詞こそが一番印象的で、その結果として、「なんだか嫌な気分になる映画だった。」というのが、本作に対する正直な気持ちだったりもするのでした。

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というわけで、映画本編の影響なのか、感想も断片的で全体を通して何を言いたいのかがわからなくなってきた感もあるけれど、まあ、そういう映画だったということでしょう。

謎は謎として残っている部分もあって、医師や助産婦が最後にいなくなってしまう理由なんかも謎なんだけど、最大の謎は語り手である教師と恋人のエヴァのその後が描かれないところ。
二人の出会いや、恋のエピソードを散々描いておいて、最終的には何も見せないという演出の意図がまったく意味不明だった。

ものすごく丁寧で緻密に作られた映画なのは間違いなくて、「モノクロ」の効果で名画感3割増しなのも事実なんだけど、細かい部分での意味不明の積み重ねが、映画全体の印象を「意味不明」「抽象的」なものにしているということなんでしょう。

そういう意味では、本作『白いリボン』の鑑賞が、他の映画では味わえない不思議な映画体験であるのは間違いない。
「不思議」「不愉快」「意味不明」ではあるものの、「それもまた映画!」という意味で、オススメの一作なのでした。
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