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【映画】『メリダとおそろしの森』(ネタバレ感想)

$『e視点』―いともたやすく行われるえげつない書評―-メリダとおそろしの森
★★★★☆

あらすじ



馬に乗って弓を射るのが得意で、王家の伝統に反発する王女のメリダは、王女らしく気高く優雅に振る舞うよう求める母としばしば衝突する。
ある日、不思議な炎に導かれるように森の奥へと足を向けると、魔女の家にたどり着く。
メリダは、森の魔法を人間が使ってはならないという森の掟を破り、魔女に向かって、自分の運命を変えてほしいと願う。
魔女が彼女の願いをかなえるために呪文を唱えると、王国全体に恐ろしい呪いがかかる。
王国と家族を救うため立ち上がったメリダは、やがて森に隠された自分の運命を知る――。

感想

予告編から漂う「ピクサーっぽくない」ビジュアルイメージ。
主役の声優はAKB48の大島優子という不安感。
公開劇場の縮小スピードから伺える、明らかにふるっていない興行成績。
なんだか「ピクサー史上最低作」なんじゃないかという予感すら感じさせる作品だったけど、そこはさすがにピクサークオリティー。
一定水準は余裕で越えてくる傑作だった。

2008年からのピクサー3部作(勝手に僕がそう呼んでるだけですが)、『WALL-E』『カールじいさんの空飛ぶ家』『トイ・ストーリー3』といった“神映画”としか言いようのない作品と比べると"次点”ではあるものの、『トイ・ストーリー』から続くPIXERの精神、すなわち「新しいことにチャレンジする姿勢」をはっきりと感じる作品であることは間違いない。
(ま、『トイ・ストーリー』からの生粋のピクサー信者の僕のひいき目っていうのも多分にあるんでしょうけども!)

要するに、「ピクサーっぽくないビジュアルイメージ」こそが、これまでの成功にこだわずに新しい表現を追求するピクサーの「チャレンジングな制作姿勢」を如実に表しているってことで。
それはつまり、本作においては、「ピクサーっぽくない」ことこそが最大の「ピクサーらしさ」ってことなんですよ!

先述した『神3部作』と比べると「完璧!」と言えない部分(粗)はもちろんあるんだけど、誰しもが『ピクサー=神集団』ってことを文句なしに認めている状況でもなお、挑戦し、成長することを止めないピクサーの精神にシビれてしまうのだ。

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そんな『メリダとおそろしの森』のチャレンジングな部分っていうのは、大きく2つあると思っている。

一つは、本作が「母と娘」の物語であるという点。

まあ、過去のピクサーの作品の中でも、要素の一つとして「母と子」の姿が描かれたことはあった(『Mr.インクレディブル』や『トイ・ストーリー3』など)
でも、ピクサー映画の多くは、「父親の物語」だ。
ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』などの「父」そのものを描いた作品だけでなく、『モンスターズ・インク』の主題は「初めて子供を持った父親のとまどい」なんだろうし、『トイ・ストーリー』3部作を通して変化してゆくアンディーに対するウッディーの視線は、限りなく父親のそれに近づいていく。

そんな中、本作ではピクサー映画で初めて「母と娘」という関係性にスポットを当てている。

そんなわけで、「父親=男」の物語である過去作に対しては「これは、俺の物語だ!」というテンションでのめり込んでしまっていた僕にとって、本作は少しだけ距離感をもって向き合うことが出来る映画だった。
その結果、これまでのピクサー作品を観た時のように「気が違えたかのように号泣!」となることはなかったんだけど、少しだけ冷静に(もっと言うと、少しだけシニカルに)シナリオの妙を堪能することが出来た。

例えば、本作の主題である「母と娘の確執」のシーン。
母娘の親子喧嘩に限らず、ケンカっていうのはどちらも引かないからこそ対立するもの。
本人たちにとっては切実だったりするんだけど、外野から冷静に(シニカルに)眺めると、「結局その対立って、同じところにこだわってるってことやん。お前ら似てるな~。」と微笑ましく見えたりすることって、ままあることだ。
本作においては、その「お前ら似とるな~。」を、言葉ではなく映像編集的に表現している。
ひとしきり喧嘩した後、「感情をぶつけ合うだけじゃなく、自分の気持ちを聞いてもらわなきゃ!」という同じ結論に達した2人は、それぞれ、母は父を、娘は相棒の馬を相手に会話のシュミレーションをする。
そして、顔を合わせていないはずの2人の言葉は徐々にリンクしてゆき、最後には全く同じ「私の話を聞いて!」という言葉を叫ぶのだ。

このリンクが「お前ら似とるな~。」と微笑ましく、どちらが悪いわけでもなく、必然の通過儀礼としての確執の描写として巧いな~と関心してしまうのでした。

まあ、度々歩み寄りを見せそうになりながら。悪い意味で毅然とする2人に、「何も言えない」「何か言ったら責められる」という意味での父親シュミレーションが出来るという意味では、「父親の映画」と言えないこともないんですけどね。

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さらにもう1つのピクサーの挑戦は、本作が「ディズニー映画のフォーマット」をベースにしているという点。

「プリンセスが主役で、王様がいて女王がいて、街の外れに魔女が住んでて、、、」というキャラクターの配置はディズニーのプリンセスストーリーの定番の配置。
さらに、「呪いにより動物に変えられる、、、」という点もディズニー映画的だ。

それでいて、その「ディズニーフォーマット」を、明らかに意図的に壊している点が、本作のチャレンジングなところだ。

一番わかりやすいのは「悪役の不在」だろう。
母親に呪いをかける魔女ですら決して悪人ではなく、本作の「呪い」はいくつかの「手違い」「メリダの過失」により完成する。
また、女王がメリダ目線で「悪役」として機能しているシーンでも、その直後に「メリダに投げつけた言葉」「やってしまった自分の行動」を自責する姿を描くことで、本作に「悪役」がいないことを印象付けている。
要するに本作はファンタジーではなく、ファンタジーのフォーマットで描かれた「生々しい人間の物語」なのだ。

だから、エピローグも「悪が滅んで幸せになりました」ではなく、「むかついたりもしたけれど、私はもともと幸せでした」的ハッピーエンドで。
これは、反抗期を経て大人になって、なんだかんだで親との関係が良好になった人(つまり、俺!)が感じる「若干の諦観を含んだ幸せ」そのものじゃない!
そんなわけで、こんなもん共感せざるを得ないし、この「当たり前の幸せ」は気持ちよくて仕方が無い。

「メリダの反省が甘い!」「メリダはもっと母に謝るべき!」
そんなことを思わなくもないし、劇場を出る人たちの間でそういう会話(考察)がされているのを耳にしたけど、「さんざん迷惑かけて泣かせた親に対して、じゃああんたはちゃんと誤ってんですか?」ってことですよ。
そんなもん、親に対して僕は今でも「甘ちゃん」だし「謝り足りている」なんてことはないですよ。
それでも、「むかついたりもしたけれど、私は今も昔も、ずっと幸せだった」って思える今は、幸せですよ!
甘いかもしれないけど、それでいいじゃない!

というわけで、「メリダは子供なんだからこの程度の誤り方でいい」んです。
だって、彼女はすでに親の愛によって許されているのだから!
っていうのは、子の甘えなんでしょうか。。。

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そして「ディズニーフォーマット作品を作った」というピクサーの挑戦に関して言うと、さらにピクサーが(というかピクサーのトップ「ジョン・ラセター」が)すごいのは、彼はディズニー映画ではそれをやらなかったってことだと思う。

『プリンセスと魔法のキス』『塔の上のラプンツェル』の感想で散々書いたけど、ピクサーを立ち上げ、ピクサーの初期の映画の監督をつとめ、その後も全ての映画の製作総指揮をつとめるジョン・ラセターは、今では本家ディズニー映画の指揮も務めている。
そんな彼が手がけたプリンセスストーリーが『プリンセスと魔法のキス』『塔の上のラプンツェル』の2作。
ディズニー映画史的にも重要なこの2つの傑作の感想の中で、僕は生意気にも「カエルのままで愛し合えたのに、結局最後は人間に戻っちゃうのがなぁ~。」とか、「悪役が取って付けたように「悪」だったのがなぁ~。」とか感想を書いたわけですが、今となっては「たわけ!」と言いたい。

「ディズニーらしさ」を好きな人に、「ディズニーらしいディズニー映画」を届けるのが「ディズニー映画」の役目。
それを壊すのは、ディズニー映画がやるべきことではないのだ。

まったく、その通り。僕が間違っていました!!!
無数の批判と期待の中、ディズニー映画を守り、壊したジョン・ラセター。
僕ごときが言うことでもないですけど、ジョン・ラセターおそるべし!です。

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というわけで、やっぱり大好きなピクサーの作品ともなると言いたいこと(書きたいこと)が止まらず、今日のブログもまた馬鹿みたいに長くなってしまったけれど、「人気がなさそうだから。。。」で観ていないとしたら本当にもったいない作品。
ついでに言うと、同時上映の短編の出来も素晴らしいんです。(『トイ・ストーリー』の短編しかCMされていないけれど、もう1本がヤバい。ピクサーの傑作短編『ワンマンバンド』にも匹敵する作品ですよ!これについてはまた長々と語りたいので、また今度!)

吹き替えのAKB大島優子は確かにちょっと微妙だったし、僕が観た映画館の3Dの方式がEXPANDっていう僕が嫌いな方式だったりした、なんてところに不満はあるんだけど、『神』集団ピクサーの最新作、やはり観るべき映画で間違いないのでした。

最後に、ブログの序盤で「ちょっと冷静に観れた」「シニカルな視点で観れた」と書きましたが、いやいや全然冷静じゃないよ!という点をお詫び申し上げます。ごめんね~

今日の余談

ピクサー映画といえば、第1作目の『トイ・ストーリー』からずっと「ピザ・プラネットのトラック」「ピクサーボール」が作品のどこかに登場することが有名。
今回も注意深く探していたけど、ピザ・プラネットのトラックしか見つけることができなかった。
(魔女の木彫り作品の一つがトラックでした。)

でも、「ピクサーボール」の方は発見出来ず。。
Blu-rayが出たらもう一度チェックしてみますが、「見つけた!」という人がいましたら、ご連絡お待ちしております!

ピクサーで一番好きな映画。というか、僕のオールタイムベスト映画です。
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