【映画】『デビル』 | 『e視点』―いともたやすく行われるえげつない書評―

【映画】『デビル』

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★★★★☆

あらすじ


ロザリオを握りしめた男が、高層ビルから転落死した。
現場に急行した刑事は自殺と断定するが、時を同じくしてそのビルのエレベーターに、5人の男女が閉じ込められた。
警備員が調べても異常は発見できず、いたずらに時間だけが過ぎていく。
そんな中、不意にエレベーター内で停電が起こり、わずかな間に5人のうちの1人が無惨な死を遂げる。
自殺の一件を調査していた刑事が、急遽エレベーターの死亡事件の指揮を執る事になるが…。

感想


【警告】物語の核心についてのネタバレがあります。「最後まで何が起こるかわからない」系の映画なので、映画を未見の方はお気をつけ下さい。


冒頭から聖書の引用のナレーションが入り「悪魔」についての独白が入ったことで、正直、僕の気持ちはいきなり萎えてしまった。

僕は、「悪魔」がテーマの映画がちょっと苦手。苦手というか、よくわからないと言うべきか。
「悪魔」って、日本人にとっての「お化け」や「幽霊」とかとは明らかに違う存在っぽいし、「妖怪」的なものでもなさそう。宗教的な存在だからといって「閻魔大王」とか「鬼」なんかともニュアンスが違う気がする。
そのせいか、「悪魔憑き」「エクソシスト」なんかがテーマの映画も多いが、いまいちピンとこない事が多い。

そんなわけで、本作のタイトル『デビル』が意味するものが、文字通りの『悪魔』であることを匂わせるオープニングで、いきなり心が折れかけてしまった。
「ああ、きっと僕にはよくわからないタイプの映画だぞ」と。

でもねー、めちゃくちゃ面白かったですよ!!

『悪魔』なのに面白い。
もう、これだけで僕の映画史に残る作品になっちゃった。

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何が素晴らしいって、『悪魔は存在する』という大前提はありつつも、物語自体のテイストがサスペンスであるっていうところ。
「悪魔」ネタ一本で振り切ってしまうと完全に「ホラー映画」になってしまうところに、「エレベーターに閉じ込められた5人の中の誰かが悪魔」なんじゃないかな?という「謎解き」要素が加わっているのはかなり効果的。
しかも、「5人の中の誰かが悪魔」と断定せず、あくまで「「5人の中の誰かが悪魔」なんじゃないかな?」でとどめているのが絶妙。

その結果、この映画が「ホラー」なのか「サスペンス」なのかさえ、最後までわからないのだ。

時々カットインする「明らかにホラー映画的なビジュアル」で「ああ、やっぱり悪魔の仕業か」と思わせたかと思えば、「5人の共通点」「殺人の動機を持っている人物」が発覚することで「やっぱり『悪夢のエレベーター』っぽいサスペンスなのか?」とも思えてくる。
(『悪夢のエレベーター』:木下半太の小説。偶然乗り合わせたエレベーター内でのサスペンスだが、実は「偶然」ではない計画犯罪だった、みたいな話)

でも、最終的に生存者が一人づつ減っていき、生存者が二人になった時点で、どう考えてもどちらも『悪魔』ではないという展開。
さらに一人が瀕死になることで、「結局5人の中に『悪魔』はいなかった」という結論に至る。
まあ、「666」は悪魔の数字なんて呼ばれていまして、本作の舞台のエレベーターが「6号機」だったりもしまして、「エレベータに乗り合わせた5人+『悪魔』」で「6人」が乗っていたってことで、「『6』推し」する感じで終わるのかなー、、、
と思いかけた瞬間に『アレ』ですよ!!

お前が『悪魔』やったんかい!!!
いやー、本気でビックリしました。

「オチが解ったと思って完全に気を抜いた瞬間」という絶妙のタイミングでの脅かし。
かつ、大どんでん返し的な表現としての気持ちよさも秀逸。
物語全体を象徴するように、「ホラー」と「サスペンス」のイイトコ取りな終わり方。
個人的には、『SAW』(第1作目)のラストシーンにも通じる、気持ちいいほどの驚きだった。

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さらに、そもそも映像がかっこいいっていうのもポイント。

結局のところ、僕が映画に求めているものて「映像」なんですよ。(もちろん、そういう僕の嗜好を押しのけて、魂まで届いてくるような映画、例えば『息もできない』みたいな映画もありますけども)
佐々木希が「ぐるぐるぐるぐるぐる、どんたっちみー」なんて歌っていても、あんだけ可愛ければ全て許されるように、
「かっこいい映像」とか「今まで見たことがない映像」が見れたら、それだけで満足できてしまう部分っていうのが映画にはあるわけですよ。

そういう意味で、本作ではオープングで速攻ヤラれてしまった。
街を俯瞰した映像を上下反転させただけなんだけど、それだけで、あそこまでの「不穏さ」が生まれるのがスゴイ。
色味の調整などにすごく気を使っているというのもあるんだろうけど、完全に「普段見慣れた景色によく似ているけれど、決定的に何かが違う世界」に見えた。
この世界が「悪魔の招集」か!!


さらにもう1点良いところを挙げると、本編の尺が約80分ってところ。
僕がおっさん化しているせいか、最近は「100分くらいの映画がちょうどいい」と思ってしまうんだけど、短くて、でも怖くて、驚ける映画って、それだけで素晴らしいじゃない!


そんなわけで、「そうは言っても「悪魔」っていうところが引っかかるよ」っていう人はいるだろうけど、基本的に悪いところが無い映画。
以前、「完全なる報復」の感想「アイデンティティ」の感想では「それがアリなら、何でもアリじゃん!」という酷評を書いていて、本作『デビル』もそういうところがある映画ではあるんだけど、「密室ミステリー」っぽい物語展開がたまらなかったせいか、すごく満足できる映画だった。

一つだけ注意しておきたいのは、普段「エレベータ」をよく使う人は、用法用量を守って、自己責任で見ていただきたいというところ。
映画の影響力って意外とあるもんですよ!
(僕は『ファイナルデスティネーション』のせいで、東京→博多の移動に飛行機を使うのを止めました。)

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同じくエレベータ閉じ込められモノのミステリー。「悪魔」じゃなくて「悪夢」ですが。
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なんとなく共通点がある映画。これもシリーズ化しなければよかったんですけどね。。。
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