【書評】『「予測」で読解につよくなる!』石黒圭 | 『e視点』―いともたやすく行われるえげつない書評―

【書評】『「予測」で読解につよくなる!』石黒圭

「予測」で読解に強くなる! (ちくまプリマー新書)「予測」で読解に強くなる! (ちくまプリマー新書)
石黒 圭

筑摩書房
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★★★★☆

あらすじ

予測は、つぎに出てくる内容を絞ることで、読解を、速く楽しく正確にするものである。
豊富な具体例でそのコツを体感しながら、読み上手・書き上手をめざそう。
感想

僕はミステリーというジャンルが好きだ。
映画であれ、小説であれ。
そして、いわゆる「名作」と呼ばれるようなミステリーには、
いまだに、すっかり騙される。

まあ、上手いこと騙されることを楽しむのが、ミステリーの醍醐味ではあるものの、
あんまり騙されまくるのも悔しいわけで、
こんなタイトルの本を手にとった。
「予測」で読解に強くなる!

でも、この本で言ってる「予測」ってのは、
僕が思った「予測(例えば、ミステリーの犯人を当てる、とか)」とは、全然違っていた。
そういう意味では、この本にも、騙されたわけです、僕は。


この本における「予測」とは、
今読んでいる文をとおして感じられる理解のモヤモヤを、
そのあとに続く文脈で解消しようと期待する読み手の意識

と、定義されている。

つまり、なんらかの文章を読む時に、
接続詞などから、次に来る文章がこれまでの文章に対してどういう文章なのかを「予測」したり、
最初の文章に不足している情報があって、次の文章でそれを補う情報が語られることを「予測」したり、
と、そういう「予測」。

漠然とした「読み」という行為の最中の、思考のプロセスが語られた本だ。
なんだか、中学、高校での「国語の授業」っぽい。

中学、高校では、とにかく国語が嫌いだった。
まず、漢字が覚えられないっていのもあったし、
古文はまだしも、現代文の何を勉強するんだ、と思っていた。
「その時作者は何を考えていたでしょう?」と、問われても、
その瞬間に、作者が「SEXして~!」って思っていなかったことを証明する術は無いじゃないか、と。

しかし、高校卒業して10年。
その間、国語の授業的なアプローチで、文章に接することは無かったけれど、
今となっては、こういうアプローチも面白い。

たぶん、それは、この10年の間で、僕の中に、ある程度の文章が蓄積されたからなんだろう。
中学、高校のころは、自分の中にあんまりデータが無い状態で、
そのデータの分析方法を学んでいたわけで、
いろいろな理論を言われても、実感を伴えるだけのデータが存在していなかったんだろう。
今は、その理論に耐えれるだけの十分なデータが揃ったから、
国語の授業も楽しめる。

国語に限らず、今、高校の授業を受けたら、結構楽しいかもしれない。


まあ、タイトルはちょっと誤解をまねく本書ですが、
本を読むときに、自分の頭の中で何が起こっているかを知れる、面白い本だった。

引用されてる文章も多くて、古今さまざま。
読んだことの無いもので、興味を引く文章にも、いろいろと出会えた。
そして、いくつか引用されていた、夏目漱石の文章。
その完成度の高さに、あらためてうっとりした。
(いまでも、一番好きな小説は、夏目漱石の「こころ」だったりする。)


昔から本を読むっていうのは好きで、
あんまり深く考えずに読んできたけれど、
たまには、こういう本で、本を読んでいる時の頭の中の働きを確認するのも面白い。

速く読める本と、そうじゃない本があるのは、
こういう「予測」の精度の差なんだろう。
よく知っている分野の本は、やっぱり速く読めるし。
同じ作者の本は、2冊目以降は、速く読めるし。

もっと沢山の本を読みたくて、そのためにはもっと速く読みたくて。
そのためには、予測の精度を高める必要があって。
そのために、もっともっと本を読もう、そう思える一冊だった。

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