【書評】『「予測」で読解につよくなる!』石黒圭
![]() | 「予測」で読解に強くなる! (ちくまプリマー新書) 石黒 圭 筑摩書房 売り上げランキング : 226129 Amazonで詳しく見る |
★★★★☆
あらすじ
予測は、つぎに出てくる内容を絞ることで、読解を、速く楽しく正確にするものである。
豊富な具体例でそのコツを体感しながら、読み上手・書き上手をめざそう。
感想
僕はミステリーというジャンルが好きだ。
映画であれ、小説であれ。
そして、いわゆる「名作」と呼ばれるようなミステリーには、
いまだに、すっかり騙される。
まあ、上手いこと騙されることを楽しむのが、ミステリーの醍醐味ではあるものの、
あんまり騙されまくるのも悔しいわけで、
こんなタイトルの本を手にとった。
『「予測」で読解に強くなる!
でも、この本で言ってる「予測」ってのは、
僕が思った「予測(例えば、ミステリーの犯人を当てる、とか)」とは、全然違っていた。
そういう意味では、この本にも、騙されたわけです、僕は。
この本における「予測」とは、
今読んでいる文をとおして感じられる理解のモヤモヤを、
そのあとに続く文脈で解消しようと期待する読み手の意識
そのあとに続く文脈で解消しようと期待する読み手の意識
と、定義されている。
つまり、なんらかの文章を読む時に、
接続詞などから、次に来る文章がこれまでの文章に対してどういう文章なのかを「予測」したり、
最初の文章に不足している情報があって、次の文章でそれを補う情報が語られることを「予測」したり、
と、そういう「予測」。
漠然とした「読み」という行為の最中の、思考のプロセスが語られた本だ。
なんだか、中学、高校での「国語の授業」っぽい。
中学、高校では、とにかく国語が嫌いだった。
まず、漢字が覚えられないっていのもあったし、
古文はまだしも、現代文の何を勉強するんだ、と思っていた。
「その時作者は何を考えていたでしょう?」と、問われても、
その瞬間に、作者が「SEXして~!」って思っていなかったことを証明する術は無いじゃないか、と。
しかし、高校卒業して10年。
その間、国語の授業的なアプローチで、文章に接することは無かったけれど、
今となっては、こういうアプローチも面白い。
たぶん、それは、この10年の間で、僕の中に、ある程度の文章が蓄積されたからなんだろう。
中学、高校のころは、自分の中にあんまりデータが無い状態で、
そのデータの分析方法を学んでいたわけで、
いろいろな理論を言われても、実感を伴えるだけのデータが存在していなかったんだろう。
今は、その理論に耐えれるだけの十分なデータが揃ったから、
国語の授業も楽しめる。
国語に限らず、今、高校の授業を受けたら、結構楽しいかもしれない。
まあ、タイトルはちょっと誤解をまねく本書ですが、
本を読むときに、自分の頭の中で何が起こっているかを知れる、面白い本だった。
引用されてる文章も多くて、古今さまざま。
読んだことの無いもので、興味を引く文章にも、いろいろと出会えた。
そして、いくつか引用されていた、夏目漱石の文章。
その完成度の高さに、あらためてうっとりした。
(いまでも、一番好きな小説は、夏目漱石の「こころ」だったりする。)
昔から本を読むっていうのは好きで、
あんまり深く考えずに読んできたけれど、
たまには、こういう本で、本を読んでいる時の頭の中の働きを確認するのも面白い。
速く読める本と、そうじゃない本があるのは、
こういう「予測」の精度の差なんだろう。
よく知っている分野の本は、やっぱり速く読めるし。
同じ作者の本は、2冊目以降は、速く読めるし。
もっと沢山の本を読みたくて、そのためにはもっと速く読みたくて。
そのためには、予測の精度を高める必要があって。
そのために、もっともっと本を読もう、そう思える一冊だった。
![]() | 「予測」で読解に強くなる! (ちくまプリマー新書) 石黒 圭 筑摩書房 売り上げランキング : 226129 Amazonで詳しく見る |