免許を取って9年。
あちこち廻ったが、友人などとの旅行ゆえ、自分の過去を振り返るような場所には一度も近づいていなかったーというか。親に聞けばわかるのだが、あえて行こうともしていなかったというのが事実。
今回も特別向かうつもりはなかったが、ソバ屋で、厚岸までの行き先を調べていたら、すぐそばに聞きなれた地名が。
すぐにおばあちゃんとおじいちゃんの家があった場所と気付いた。いわば母親の生家になるのか。幼少期はよく遊びに行っていた。
けど、二人とも亡くなって家があった場所が何かに建て替えられるなんて話をずいぶん前に親から聞いていたもんで、まさか、自分で誰に住所を聞くわけでもなく、姿かたちのない場所へ向かえるのか。とね。
鳩みたいなもんですね。
近くに行ってびっくり、見覚えのあるボロボロの公園。近くのお墓。景色こそ変わっていたけど、町はずれということもあって、そんなに現代化してなかった。
もう家はなくって、今は団地の駐車場になってしまっていたけど、確かにそこに記憶の中の景色はあった。同じ海の匂いがしてて驚いた当然だけど。
道路は舗装されていて見た目は違ったけど、地形はそんなに変わってないのが救いだったように思う。家の隣の斜面にはツツジやら色んな草木が植えてあって、持ち手が木で先は黄土色の金属で出来た柄杓一杯に入れた水を、おばあちゃんと一緒に水やりしたんだよな。
どうしても小さいころの思い出だから、記憶が少なくて、でもこの水やりはすごく楽しくて、おばあちゃんの家に行けば必ずやらしてもらってたはず。
玄関前の砂利道、理由はわからず地面にめり込んでる毛布。ぼっとん便所。部屋の匂いや屋根裏に上るためのはしご。蜘蛛やワラジムシ。触っちゃいけないおじいちゃんの机と奥の棚に並んだゴルゴ13。よくわからないがマンガだからとペラペラめくったゴルゴ13。部屋の隅のルームランナー。爪楊枝を一本取り出す仕掛けのキツツキの置物。寝る前に布団を温めてくれた黄色か赤色の機械。
蛇口についていた白い綿。ストーブの反射板にうつったっていう心霊写真。スーパーやまじゅうで買ったおいしい魚。やまじゅうの帰りおばあちゃんがこっそり買ってくれたガチャガチャやカード。鉄棒とブランコぐらいしかなかった、当時すでにボロボロだった公園。ヒロっていうけど、シロって聞こえちゃうおじいちゃん。
凄く色んなことがあったはずなんだけど、書ききれるくらいしか思い出せない思い出。
思い出の斜面の上に立って360度見まわしてみたけど、意味はない。
だいたい最後に来てから20年以上経ってるはず。
おじいちゃんとおばあちゃんも家もないけど、帰ってきたと思って思いっきり息を吸ってみて。
さっきも言ったけど、すごく懐かしい海の匂いがして。
俺は釧路で生まれて育ったんだっておもったのさ。感傷的になってしまったのです。