明日参観日のため、どの学年もどの子も発表のための作品や作文づくりに精を出して…いや出さされております。


 悩ましいのが来日したばかりで満足に文はおろかひらがなも書けない子にも日本人の子と同じクオリティの作品が要求されること。

 

 最初の最初なんて1年生だろうが6年生だろうが、ほんとうは好きなものをひらがなで羅列できただけで万々歳!と思ってるんですが、学校の先生は許してくれません。「どうして好きなの?もっと詳しく!思ってることなんでもいいから書いて!」と要求してきます。日本人の子でも文を書くのが苦手な子は頭を抱える要求です。とはいえ、後で子供がせめられるのもかわいそうだからせめて、好きなものはどんな色なのか、何を食べるのか、などサバイバル日本語でもやりとりできることを付け加えて書かせます。

 

 1年生の作文テーマは「先生に伝えたいこと」。「好きなもの」でいけそうです。ラッコくんに一番好きな動物を聞くと「りす。りすね、くるみたべる」いつの間に言葉を覚えたのか、自分から動物名だけじゃなくてくるみを食べるんだよ、ってことまで教えてくれました。「じゃ、『ぼくのすきなもの いちばんはりすです。りすはくるみをたべます』って書こうね」と提案。書き終わるか終わらないうちに「きりん!水飲む」と言い出したので「そっか、じゃ『にばんはきりんです。きりんはみずをのみます。』って書こうか」…そりゃ、どんな動物だって水は飲みますが、彼の中では、水を飲んでいるきりんが印象に残っているんだから、これでいい。さらに「うさぎ!にんじん食べる!」「すごい!じゃ、それも書こうね」これで3種類の動物についてかけました。すごくないですか?4月に来たばっかりですよ?

 

 一息ついて教科書をペラペラとめくり、すずめを見つけたラッコくん、「あのね、すずめ、さわった」「へぇ、どこで?あ、国で?どうだった?」「手、ウンチしたの!」これは聞き逃せない、外せないネタです。「ほんと?これも書こうよ」厳密に言えば「好きだ」とは言ってません。でも子供から、このシーンが心に残ったからこそ自主的に出た言葉です。これは拾っておきたい。

 

 清書の指導は別の先生が担当することになったけど、しっかりノートに書いてあるから大丈夫だな、と思っていました。そして今日、清書の日。私は別の子を指導中、横でラッコくんとB先生の清書が始まりました。「きりん」のところまで進んだようです。声に出しながら書いています。そこへC先生が現れ「きりんが水を飲むのは当たり前だから、長い首を曲げて水を飲みます、か何かにしようよ」と言い出しました。

 

 …これが一番嫌いです。

 

 ラッコくんは長い首のことなんて一言も言っていないのに付け加えさせる。ましてや彼の言えない表現。

 

 「長い首」を付け足したおかげで、うさぎやすずめのことまでいかないうちに分量は足りたようで、発表の練習が始まりました。すらすら読めるようになるまで練習するようです。

 

 でも「長い首を曲げて」がなかなか言えません。そりゃそうです。自分の口から出た言葉じゃないんだから。

 

 簡単すぎるから、短すぎるから、みんなと違うから…

 

 つまんない作文になっちゃったな、と朝からとてもブルー。