とりあえず私はそのままアキの胸の中で眠りこけてしまって、アキはそのまま見守っていたようでした。
時々苦しそうにする姿やうなされてるのか唸る私を撫でていた、と。
頭痛い…
飲みすぎたからです。
ひとまず顔を洗うために洗面台を借りてきました。
「ごめんなさい。好意に甘えてしまって…」
すると、また優しく頭を撫でて、ふーっとため息をつきながらアキは抱き寄せてきました。
昨日の事は夢じゃなかったんだ…
アキの洋服の香り、身体の温もりを感じます。
「アナタは居候。俺がそうしろって言ったんだから、悩みこまない。ハゲますよ?」
思わずフッ、と笑ってしまいました。
「すっぴんでも可愛い…」
ドキドキが再び襲ってきます。
こんなセリフに免疫ゼロなので脳内はアタフタ。
やはりアキには見抜かれています。
またそっとおでこにキスをされました。
そして、肩をぽんと叩かれてパスタを茹で始めたアキ。
「何か、手伝います?」
アキは首を振り、「だからぁ、アナタは居候なんだから家事も何もしなくていいんすよ。休んでなさい!」…諭されました。
なんだ、ドS様なのか…冗談ですが、そんな風に思いながら、はーい。と部屋で座って待つことにしました。
しばらくするとキッチンから二人分のパスタを持ってきました。
黙々と食べますが、私の口まで運ぶ速度に
「…遅くない?口に運ぶの」と突っ込まれました。
私は早食いだと思ってましたが、大事そうに食べていたためかゆっくりゆっくり食べていたみたいです。
「え、普通じゃない?遅い?」
「麺が冷めるわ!」と笑われました。
アキはその日バンド練習だと言い、身支度を始めます。
シャワーを浴び、衣服を着ながら部屋で涼もうとしています。
さすがに生娘ではないので男性の肌チラ程度では驚きませんでしたが、隣に座ってまたギターを触り始めました。
練習をしていて、ずっと私はギターや手元を見ています。
するとピタりと、弾く手を止めてピックをテーブルに起きました。
ギターを定位置に黙って戻すアキ。
「…俺、なんかうららちゃんの傍に今日はいたい気分になってきた」
またドキッとする事を言われ始めました。
「ライブ近いんだから、練習行かなくちゃ…」
「いい。風邪だって休むから。」
パタンと、その場で2人で倒れ込みぎゅっと抱きしめ合っています。
シャンプーの香りが鼻をくすぐり続けていて、
胸の鼓動も聞こえてしまいそうなほど高鳴ってます。
カチカチ…
アキはバンド練習の休みを連絡したようでした。
ますます抱きしめる力は強まります。
だめだ…頭がクラクラする…
私は脱力してしまいました。
優しく撫でられる頬、首筋…
でも知り合ってまだ数ヶ月…いいの?私いいの?
自問自答を心の中でしています。
呼吸が荒れていく一方です。
「…い…やぁ……」
声に出てしまいました。
アキはそのまま止めようとしません。
その時外の風に吹かれてガタンと鳴った音にフラッシュバックがいきなり起こり、
私の体が硬直しました。
悪夢が蘇るのです。
アキも私の体の硬直に気づきます。
すると優しく唇を重ね、耳元で囁きました。
「もう、怖い事ないから…大丈夫だからな。俺がいる。」
真剣で、優しい眼差しに涙が頬を伝いました。
ずっと私を見ていてくれている…
気恥しさと優しい言葉に顔を直視できません。
どれだけ時間が経ったでしょう…
一線を越えることなくずっと抱きしめ続けていました。
時折肌が触れるだけでも敏感になるほど、
私は身体の力も抜けてしまってます。
日も傾いて、あんなに明るかったはずなのに…
呼吸も荒いままで、過呼吸になってしまうと思うほど胸は苦しくて…
アキの愛や優しさが伝わってきます。
私はアキに尋ねました。
「私…本当に居候してていいんですか?…」
アキは頷きます。
「嫌な人を家に置く人って普通いないでしょうよ。」
そのまままた抱きしめ続けます。
甘美な時は刻々と過ぎていきます。
食事さえ忘れ。
手と手を重ね、2人で見つめ合ったり…
時折私の素肌にも触れますが嫌な気持ちにはなりませんでした。
「ねぇ、うららちゃんの声って本当に可愛い…」
身体中に電気が走るように言葉に反応します。
私はもう身を任せてました。
アキの優しさに心を重ねて。