週明け。


朝早くから両親は忙しなくどこかへ行ってしまいました。

朝ごはんがポンと置いてあるテーブル。


いつもなら「おはよう!!」と言わんばかりに私の周りを走り回っている無邪気な愛犬もいません。


静かすぎる朝です。


夜も、愛犬を想うと悲しさと寂しさで胸が苦しいままでした。


愛犬の歩く爪の音も何だかしますが、
姿はそこにはありません。


学校へ行き、いつも通り授業を受けます。


昼休みにビラから剥がしとった愛犬の写真を学生手帳の中へ入れます。
ぎゅっと握りしめて、今にもこぼれおちそうな涙をこらえます。


私の大好きな歌が頭に流れてます。
愛犬と自分の在りし日と重なって、
下校中に犬の散歩をしている人を見ると、
ふと寂しくなってました。


また同じ犬種を見ると面影を感じて、
「でも違うんだ……」と思ってました。


家に帰り、改めて凄惨な風呂場を見つめます。


怖かったよね…
悲しかったよね……


涙がポロポロ零れます。


犬のぬいぐるみで内蔵されてるボタンを押すと
「ワンワン!」と吠えるやつを私はもってたので
その声を聞いていると、歳の近い兄が言いました。


「それ、母さんの前で聞くなよ。声も似てるし…また母さん落ち込むから。」


私はぬいぐるみを部屋のクローゼットの奥へしまい込みました。


珍しく夜遅くに帰宅した両親。


「ふらら、入院したから」


黙り込んだまま兄と話を聞きます。


当然だ…


また静かすぎる夜を1人部屋で過ごします。


翌日の夕方。
父の会社へ歩いて行き、2人で話しながら帰宅しました。

途中で缶ジュースを買って、飲みながら長い道のりを歩きます。


「ごめんな。」

父が謝ります。

黙ったままの私。

「お父さんさ、ふららに入院する前聞いたんだ。本当は愛犬に手を出したなんて信じたくなかったから。もしそうなら黙って頷いてくれ、お前やっただろ?って。そしたら黙って頷いた。」


はぁー…と長いため息をついた私。


「予想はついてたよ。私かお母さんの大切な物が奪われるか、何か悪い予感がしてたから。」


父も頷いてます。


「でもさ、家族だから信じてあげたいって言うのが親なんだろな。うららの言い分、全然聞いてなかったな。本当に悪かった。でもお父さんはやっぱり愛犬にまで手を出すと思わなかったから、今回ばかりは許せなくってさ…一旦ふららに家を出てろって言って、昨日入院させる事にしたんだ。」

「…だからそれじゃ遅すぎたんだって。」と私は呟きます。


ふららが再入院し、家は再び静寂を取り戻しました。

受験も目前です。


その日は空や空気がやたら澄んでいて、
星空が綺麗に見えました。