某有名ホテル内にある日本料理店の厨房に長く勤務され、最近主に年齢に伴う体力的な事情から退職された人から聞いたハナシである。
差し障りがあってはイケナイので店名とかは明かせないが、かなり費用のかかる「高級」な店で、税引き前の経費でなければ私などは絶対に行く気がしない店なのである。

しかし、経費であっても、行く気のしなくなるような話を聞いたのである。
先生によると、「高級なんて、錯覚」であるらしい。
こんな店ばかりでもなかろうが、参考までにお伝えしよう。
以下は先生のハナシの要約である。

(ここから)
兎に角、薄味にするのが秘訣でしてね、うんと薄い味付けにしときゃあ、「高級だ」「上品だ」「ヘルシーだ」ってことになるんでさあ・・・。
素材にしたって、家庭料理で日常よく使うようなものじゃなくって、魚でもなんでも珍しいのを仕入れとけば、お客は味をよく知らないわけです。
最も重視するのは色や形、飾り付けといった「見た目」でしたね、味とか新鮮さじゃなかったですよ。
お代が高いぶん、逆に納得されるんじゃないでしょうか?費用のぶんの価値はあるはずだ、っていうふうにね。
(ここまで)

かくいう私も、ダシの中で瀕死の状態の透明な小魚を食わされたことがある。
哀れな小魚を噛み殺す覚悟などないので、ダシの薄い味しかしないのである。
金箔入りの日本酒の如く、無意味なことであった。