あたしがドロップアウトした彼の誕生日が、刻々とせまっている。
年の瀬の超忙しい時期に生まれた迷惑な男。それが彼。
2ヶ月ほど前に、ドロップアウトを決めて、けれど、デートをしても、セックスをしても、ちっとも頭から離れない。
兄が「男の恋は名前をつけて保存 女の恋は上書き保存」だと言っていた。
なるほど、ポン という感じでひざを叩いてしまうほどに的を得ている。
どんなに他のデータを並べても、上書き保存がエラーになるのはどうしてだろう。
話したいことも色々ある。
あげたいものも色々ある。
してあげたいことも、まだまだたくさんあるのだ。
彼がすきなのはヴーヴークリコとかいうオレンジ色のラベルのついた、辛口なシャンパンで、2人で酒屋に立ち寄ると、必ずといっていいほど「これ、俺が好きな酒…」と人差し指を指していた。
彼は今年、酔っ払いすぎて車や職場のロッカーや、自転車の鍵すべてをなくすという失態を犯し、心底へこんでいたのだけど、運よく警察に届けられていたことを思い、彼のイニシャルであるHというアルファベットの、ブリキのキーホルダー(500円)をつけて、シャンパンを一緒にあげようかな、などと、考え出したらきりがない。
知って欲しいことも、知りたいことも、あとを絶たない。
もうつらい恋はいやだと思ってるのに、けれど欲しいものは、どうしてもひとつなのだ。
どんな手段を使っても、手に入れたいものが出てきてしまったら、人はどうするの?
彼に恋をして、2年と2ヶ月。
年月が解決される手段になるならば、この先5年も10年でも好きでいられる。
けれど、そんな保障はどこにもないし、そしてたぶん、年月は解決してくれないことを、あたしは知っている。
誕生日は、誰にとっても特別な日で、おめでとう、と言われると、心の底から嬉しいと思う。
まして、自分のことを心底好いてくれる相手から言われたらなおさらだ。
自分がこんなに好きになった人の誕生日を祝うのは、自分の心も大事にしてあげるってことには繋がらないだろうか。
やめたから、プレゼントもメールも、おめでとうも無し!というのは、どう考えても自分をごまかしているのではないだろうか。
そもそもこう考えること自体が、もう「終わった恋を未練たらしく引きずってる」ことになるのだろうか。
自問自答はエンドレス。
彼への誕生日は、知り合って今年で3回目。プレゼントも、みっつ目。
来年は、彼の誕生日にプレゼントを贈ることなんてたぶんない。
後悔するのは、あげるほうか、あげないほうか。
後悔するならやっての後悔!と人は言うけど、それはこういう場合も、当てはまるものなのかな。
って、なんか自分に言い訳を繰り返して、納得させてるってゆうのも、変な話だけど。
いつになったら上書きできるんだ、この恋。
あたしって、ホント、嫌になるくらい女。げんなりする。