セックスするもの同士の最低のルール | Fuck and Shit

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朝起きて、顔をあらって、ご飯を食べて、仕事して、お風呂につかって、次の日のためにベッドで眠る。

そんな日常が、うれしかったり、さみしかったり、悲しかったり、退屈だったり、愛おしかったり。

「今日は、俺がどのくらい鬼畜かってことを、お伝えしようと参りました。」


犬みたいな彼は、ビール片手にタン塩をもぐもぐ食べるあたしの目を、大きくくりりんとなっている目で見つめてそう言った。


うん。○○君が鬼畜ってゆーのは知ってるよ。

相変わらずご飯とタン塩を食べながらあたしは言う。


「俺はね、前回U子ちゃんとセックスしたけど、付き合うとか、どこかに落ち着くとか、そういうこと、まったく考えてないの。」


うん。


「最低でしょ?」


そだね。


「だったら、お前、他の女の子に、手をだすなって感じでしょう?」


そうね。


「だから俺のことは、好きになっちゃだめです。」


…いや、たぶん大丈夫だから、安心して。


「あらそぉ?それなら、いいんだけど。」


うん。たぶん大丈夫だと思う。好きだけど、本気で好き!にはならないと思うから。


「あらそぉ?お前、優秀だな。」



そんな感じで犬みたいな彼の『俺がどのくらい鬼畜かどうかを語るための焼肉デート』はあっさりと終了し、9時ころお互いじゃーねー じゃーなー とそれぞれタクシーで家に帰宅した。
























ってことがあるわけがないでしょう!



実際は、お肉をたらふく食べて、「これからどーする?」のあたしの質問に、「今日はU子ちゃんうちに行きたい。歯ブラシ買ってく。」としれっと彼は言う。額にレ点つけられてるし、拒む問題じゃないけど…と考えながら「いいよ。」としれっとあたしは答える。そうして2人でなんでもない様子でタクシーに乗って、実に何でもない様子で家の前で降り、「俺シャワー浴びてくる」と自ら切り出す彼に何の疑問も持たずにバスタオルと新しい歯ブラシを差し出し、今日M-1だった!ビデオ撮るの忘れたー!とか言いながらベッドに入り、前戯もたけなわにさしかかり、そろそろ… という瞬間に差し掛かったが、彼の仔犬は元気がない。どしたの?と例によりできるだけ傷つけないようにあたしは尋ねる。うーんと苦笑いする彼に、来る前にオナニーでもした?と聞いてみたけど、事実は冗談よりもヘビーなものだった。


「いや、しない。けど…。まぁ…。似たようなものかな…。」と彼は言う。


もしかして、あたしとの前に、誰かとセックスしたの?とあたしは尋ねる。



「………」


無言の回答とはまさにこのことである。


しゃべり倒す彼が初めて口を閉ざしている。



なにそれ!


なにそれ!!


なにそれ!!!



もうとたんにセックスのやる気は急降下。萎える。本当に萎える。萎える。本当に萎える。


なんか、非常にくやしい。くやしすぎる。



いや、マジでごめん。ホントごめん。俺、ほんと最低だと思うんだけど、けどウソはついたら逆効果っていうか…。マジごめん。とかなんとか言ってたけど、もうその言い訳すら聞きたくない。


なんかほんとに涙がでそうになる。ってゆーか、もう泣いている。



「俺、最低だと思うけど、鬼畜って言うのはそういうことなんだ。U子ちゃん、傷つくんだったら、もう俺と会わないほうがいいと思うし、傷つけたくないって言うのは、ほんとの気持ちだし。」と素っ裸なあたしの尻をなでながら、耳元で声が聞こえる。


ってゆーか尻を撫でるな!




もう何でか分からないけど、何がなんだか分からないくらいショックで、彼の顔も見たくない。何にも聞きたくない。



「俺ね、ほんとにU子ちゃんのこと、いいこだって思ってんの。だから、いい人と出会って、いい彼氏ができればいいって、応援してるわけ。だから、それまでの期間、寂しいときとか、エッチしたいときとか、そいういうときに、俺に電話して、たまに会ったり、そういう風であればいいと思う。けど、それがU子ちゃんを傷つけるなら、もうやめよう。会わないほうがいいと思う。」



それってまさに都合のいい相手!

これぞ!まさに!


そんな彼の文句を背中ごしに聞き、どうしてあたしは、いつもいつもいつも男の人からそういう相手としか認識されないのだろうかと考え込む。


あたしは最近、満身創痍の片思いを無理やり終了させて、疲れている。元気がない。


余計に傷つけられたり、したくないのだ。感情がむき出しで、ナイーブなのだ。


都合のいい相手なんて、そんな元気はない。そういうのが成り立つのは、元気で、エネルギーがありあまっているときでないと、きっとダメなのだ。



どうして?何が悪いの?


あたしだって、この人のこと、本気で好きとか、好きになりそうとか、ちっともこれっぽちも思ってない。背だってあたしより小さいし、センスだって悪いし、先っちょのとんがった靴を履くような人だし、グッチの財布だって持っている。あたしが嫌いという男の、すべてをかき集めたような外見なのに。


けれど、だけど、あんなに強引に口説いて、そしてあんなに楽しいセックスをして、初めてのデートなのに、その前に他の人とセックスをして、しかも勃起できないなんて、あまりにも、あまりにも、あんまりじゃないか。


あたし、そんなに悪いことしたっけ?初めての男とのセックスなのに、軽く股を開いたから?



ちくしょー くやしい。ほんとにくやしい!めちゃくちゃくやしい!!!




あたし、そんなのばっかだなぁ… なんか。とついポロリと出た言葉が、自分でもびっくりするほど虚しく、悲しく響く。


お前、そんな悲しいこと言うなよ… と彼は言っていたけど、言わせてんのはお前だろーが!!!



もうどうしていいかわからないくらい悔しく思って、それならそれで、そんな男の挑戦も、受けてみようじゃないかと違うベクトルでがんばったほうがいいじゃないかと思えるようなことを思いつく。


みんな、酸いも甘いも苦いも辛いも経験して、大人になっていくのだ。




涙目でじっと考えるあたしを、彼は覗き込み、そして機嫌を確かめるようにキスをする。


あぁ 男の人に機嫌を確かめるようなキスをされるのも、ずいぶんと久しぶりだ。



ずったずたに傷つけられたプライドを掲げて、まっすぐに彼の目をみて、あたしは言う。


「あたし、○○君のこと、好きだけど、好きじゃなかったら2回もセックスしないし、けど、ほんとにすっごす好き!ってほど、全然好きじゃない。他にいいと思う人だっているし、デートする相手だっているし、好きな人だって、いる。だから、酔っ払って寂しいときとか、誰かとセックスしてーなーって思ったときとか、○○君に電話できるのって、ほんとに救われるとき、あると思う。」


「おぉ。お前、優秀だね。それ100点満点。俺の正しい使い方です。と彼はちゃちゃを入れる。


思わず、ぶはっと笑ってしまう。彼はこういう人なのだ。


「けど、そういう関係にも、最低限のルールがあると思う。今日みたいなのは、問題外。だって、セックスするんだから、お互いがお互いを思いやれないと、楽しい関係なんて、続かないよ。今日みたいに不必要に不愉快な思いをするくらいだったら、嫌だ。○○君が、そういうところ、ちゃんとしてくれるんだったら、いいよ。」


これがホントのあたしの気持ちだ。


だってセックスをするのだ。


傷つけるためにセックスするなんて、一人で朝から晩までオナニーでイキまくったほうが、何倍も満たされる。


わかった。今日は、ホントごめんな。俺が悪かった。最低です。と彼はよく通る素敵な声で、そして真剣に見える表情で、そう言って、あたしに丁寧にキスをする。




愛も、恋も、へったくれもない。ちっともない。悲しくなるほど、腹がたつほどにちっともない。



それでも、それから、あたしたちはたくさんのキスをして、抱き合って、エッチなことをして、彼の腕に抱かれて、浅い眠りについた昨日。





あーぁ なんだかなー なんでなんだろう。なんでなんだ?



Fuck and Shitって、自分でつけたこのブログのタイトルだけど、うまいことを言うな、と自分で思う。



裸であたしを抱きしめながら、うとうととする彼に「てゆーか、勃起すらできないのに、誘ってんじゃねーよ」と髪の毛を撫でながらあたしは言う。


彼は眠りの淵から這い出てきたような声で、ごめんな。お前、ほんとに優しいよな、と言いながら、あたしのくちびるに、またひどく優しいキスをした。