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挿入曲入り連載小説『 クラスメイト 第3話 White 』


クラスに、軽度の身体障害を持つ男性がいた。

日常生活に大きな支障があるわけではない。だが、身体の動きには独特のぎこちなさがあり、言葉も少しもつれる。

特に初対面では、彼の話す日本語は聞き取りづらかった。

それでも彼は、驚くほど明るかった。

積極的に話しかけ、笑い、自分から輪の中へ入っていく。

たぶん、そういう性格でなければ、彼のように発音のハンデが目立つ人間が、英会話スクールのような場所へ来ようとは思わないのだろう。

僕には、重度の脳性麻痺を持つ妹がいた。

妹は施設に預けられていて、僕も時々そこへ顔を出していたから、障害を持つ人たちに対して特別な抵抗感はなかった。

むしろ気になったのは、周囲の反応だった。

クラスメートの多くが、彼にどう接していいか分からないようだった。露骨ではない。だが、どこか一歩引いている。

あるいは、彼が話すたびに微妙な沈黙が生まれる。

そんな空気のほうが、僕にはよほど居心地悪く感じられた。

彼は熱狂的なジャイアンツファンだった。

そして往年の助っ人外国人選手、ロイ・ホワイトから取って、自分のことを“White”と名乗っていた。

そのネーミングのセンスが、なんだか妙に彼らしかった。

その日の東京は異常な暑さだった。

昼間の最高気温は三十五度。夜になっても三十度を下回らない。

教室には冷房が効いていたが、みんな明らかに疲れていた。

集中講座も中盤に差しかかり、寝不足気味の者も多い。

僕自身も、風邪が治りきらないまま通っていた。

そんな中、授業の途中でMaryが声を上げた。

「What’s wrong, White? 大丈夫ですか?」

見ると、Whiteの顔色が明らかに悪かった。

額には汗が浮かび、唇の色も薄い。

「そ、そーりぃ……ト、トイレに……」

そう言いながら立ち上がったWhiteの身体が、大きくふらついた。

その瞬間、隣にいたJunが反射的に彼を支えた。

僕もすぐ席を立った。

「大丈夫?」

Whiteの両脇を、Junと二人で支える。

彼の身体は思ったより軽かった。

「ゴ、ゴメンナサイ……だ、ダイジョウブだから……」

本人は必死にそう言う。

だが、とても一人で歩ける状態には見えなかった。

僕はWhiteを支えながら、教室の外へ出た。

冷房の効いた廊下は静かで、教室の英語混じりのざわめきが遠く聞こえる。

トイレまで付き添う途中、Whiteは何度も「ダイジョウブ」と繰り返した。そのたびに、少し申し訳なさそうに笑った。

どうやら貧血を起こしただけらしかった。

しばらくして用を済ませたWhiteは、照れくさそうな顔でトイレから出てきた。

「スミマセン…カッコワルイところ、ミセちゃって…」

「こんな暑さなんだから、誰でも倒れるよ」

僕がそう言うと、Whiteは少し安心したように笑った。

その笑顔を見たときだった。

ああ、この人はきっと、ずっとこうやって気を遣って生きてきたんだな。

ふと、そんなことを思った。

その出来事以来、Whiteは僕に親しみを感じるようになったらしい。

休み時間になると、よく僕の席へ来て話しかけるようになった。

そして不思議なことに、Junも自然とそこへ加わることが多くなっていったのである。

                               つづく


Essayみたいなもの211( 最大の効果をもたらす目標とは? )


あなたの目標は、本当に自分の価値観に合っているでしょうか。

人は、自分の価値観に沿った行動をしているとき、自然と充実感を覚えます。

そして、その状態では集中力も高まり、行動のエネルギーも持続しやすくなります。

逆に、価値観に反した目標を追い続けると、心のどこかに無理が生まれます。

たとえば、営業という仕事自体は好きでも、事実を偽って商品を売らなければならないとしたらどうでしょう。

良心を大切にする人ほど、強いストレスを感じるはずです。

本来、価値観とは、人を動かす“根っこ”のようなものです。

だからこそ、その根っことズレた目標は、どこかで自分自身を苦しめてしまいます。

また、目標はできるだけ具体的であることも大切です。

「お金持ちになりたい」

というだけでは、実際に何をすればいいのか見えにくい。

でも、「不動産投資の分野で経済的に安定したい」となれば、必要な知識や行動が少しずつ具体化してきます。

さらに大切なのが、“数字”と“期限”です。

たとえば、「1年後に資格試験へ合格する」「そのために毎日1時間勉強する」というように、行動レベルまで細かく落とし込めるようになります。

数字や期限のない目標は、どうしてもイメージがぼやけやすい。

それは、的を見ずに矢を放つようなものです。

では、目標の難易度はどうでしょうか。

高すぎても、低すぎても、人のモチベーションは上がりにくいものです。

自分なりに考えて、

「頑張れば届くかもしれない」「でも簡単ではない」

そう感じられるくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

感覚的には、“成功確率50%くらい”です。

五分五分だからこそ、本気になれる。

そして、それを達成できたとき、人は大きな自信を得ます。

その成功体験が、次の挑戦へのエネルギーになるのです。

結局のところ、人のやる気や潜在能力を引き出すのは、

「自分にとって意味がある」と心から思える目標です。

そして、その目標は、少し背伸びをした先にあるくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

次回は、目標を追いかけるうえで避けて通れない、“利益と代償”について考えてみたいと思います。

墓参りに来る猫85( 2026.05.20 朝食に引き続き… )


遅い朝食のあと、お昼ご飯にもやってきたノラクロです。


BGM
ノラクロのテーマ

企画・制作:KenChan
SUNO用プロンプト:チャットGPT
作・編曲:SUNO


再生リスト 墓参りに来る猫
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墓参りに来る猫84( 2026.05.20 お久しぶりのノラクロ )


ノラクロが久しぶりに来てくれました。


BGM
ノラクロのテーマ

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SUNO用プロンプト:チャットGPT
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Q&A 歌に関する質問をチャットGPTにしてみた163( 息漏れを減らす )


チャットGPTに次の質問と私の回答について、回答と評価をもらいました。


Q.裏声の練習をしているのですが、息漏れが激しいみたいでなんかシャーシャー聞こえます。

 あと、地声で高い音を出す時もそうなります…

 この息漏れを減らす方法はないでしょうか?


A.声帯の閉鎖が足りないのかもしれませんね。

 トレーニングにエッジボイスを取り入れてみては如何でしょうか。

 エッジボイスとは寝起きのときに出やすい「あ"---…」というプチプチした発声?で、声帯をピンポイントで閉じる練習になります。

 やりすぎは良くないと言われていますが、実際の歌唱練習の前に2~3分やっておくといいかもしれません。


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レッスンを無料体験できるとしたら…

見学はいつでも歓迎していますが、やはり実際にレッスンを受けてみるというのが一番ではないでしょうか?

そもそも、合う合わないということはよくあることです。

あのイチローですら、入団当時の球団の指導は合わなかったらしいです。

そこで、初回限定ですが、無料体験レッスン希望者を募ります。

レッスンを体験されたい方は…

申し込みは、私への Facebook Messenjer、メールなら ken1956chan@gmail.com その他、コメントへの書き込みでも構いません。


毎週水曜日 19:00~20:00 開催!カラオケボイス発声トレーニング
会場 南小岩コミュニティー会館 1F 和室 :JR小岩駅より徒歩5分( 定例会場が押さえられない場合カラオケBOXでの開催となります。参加ご希望の方は事前にお問い合わせください。※参加費2,000円 )
https://map.yahoo.co.jp/v2/place/APpOA47Ghik?from_srv=loco_web


X(旧ツイッター)
https://x.com/oAUmywGeDWY8yPD

墓参りに来る猫83( 2026.05.16 この日もゴル )

このところ、ゴルしか来ません。

まぁ、撮影のタイミングの問題かとは思いますが…。


BGM
ゴルのテーマ

企画・制作:KenChan
SUNO用プロンプト:チャットGPT
作・編曲:SUNO


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挿入曲入り連載小説『 クラスメイト 第2話 Jun 』


盆休みに入った途端、僕は風邪をひいてしまった。

熱はたぶん無い。少なくとも、そう思いたかった。

実を言うと、僕はめったに熱を計らない。数字で現実を突きつけられると、それだけで気持ちが負けてしまう気がするからだ。

だが、咳だけはひどかった。

胸の奥に貼りついたような咳が、夜になるほど止まらない。

それでも、八月十六日から始まる夏季集中講座を休むつもりはなかった。

せっかく申し込んだのだ。しかも、Maryが「二学期に大きな差がつきますよ」とまで言っていた。

負けたくない。

そんな意地もあった。

昼間は、冷房の効いたオフィスで電話営業をこなす。景気が良かった時代とはいえ、電話一本で簡単に契約が取れるほど甘くはない。

喉を酷使したあと、一時間ほどDM発送の残業。それを終えると、僕は岩本町の会社から神田駅前の英会話学校まで歩いた。

十分ほどの距離だったが、それが風邪をひいた身体には妙に長く感じられる。

外へ出るたび、むっとする残暑が全身にまとわりつく。冷房の効いたオフィスとの気温差が、弱った身体をさらに消耗させた。

途中、駅前のドラッグストアに立ち寄る。

栄養ドリンクを一本買い、家から持ってきた風邪薬を流し込む。

苦い薬と甘ったるいドリンクが胃の中で混ざり合い、なんとも言えない味がした。

――まるで、無理やり元気を作っているみたいだ。

そんなことを思いながら、僕は教室へ向かった。

集中講座の教室には、コの字型にテーブルが並べられていた。二十人ほどの受講生の顔が、互いによく見える配置だ。

開講式では、Maryが日本語で注意事項を説明した。

普段は“English only”を徹底している彼女が、日本語で話している姿は少し新鮮だった。

受講生の半分ほどは、いつものレギュラークラスの顔ぶれ。残りは、この学校自体が初めてらしい生徒たちだった。

新しいメンバーが加わるだけで、教室の空気はずいぶん変わる。

少し緊張感があり、少し浮ついていて、どこか文化祭の準備みたいな空気だった。

やがて、順番に自己紹介が始まる。

皆、たどたどしい英語で名前や仕事、趣味を話していく。

高校生。商社マン。専業主婦。定年後に挑戦しているという初老の男性。

年齢も職業もばらばらだ。男女の比率もちょうど半々くらいだった。

そんな中で、一人の女性が妙に気になった。

はす向かいに座っていた、二十三歳のOLだという女性。

小柄だが、どこかアメリカ漫画のベティちゃんを思わせる愛嬌がある。大きめの瞳は、いつも少し潤んで見えた。

名前は、Jun。

英語で自己紹介するたび、緊張しているのか語尾が少し上ずる。その声まで可愛らしかった。

要するに、僕のタイプだった。

咳で苦しいはずなのに、不思議と教室へ向かう足取りは軽くなった。

Junがいる。

それだけで、十六日間の集中講座は、急に特別なものになったのである。


                               つづく


Essayみたいなもの210( The Power of Dreams 夢の力 )


ずいぶん前になりますが、昔からの友人が出演するライブへ行ったことがあります。

ステージのほとんどは、ギター一本の弾き語り。

その音を聴いているうちに、私はまるで、四半世紀前へ戻ったような気持ちになっていました。

久しぶりに会った友人は、驚くほど若々しく、不思議なくらい昔と変わっていませんでした。

もちろん年月は流れているはずなのに、どこか、あの頃の空気をそのまま残していたのです。

ライブの最後に彼が歌ったのは、“アイアンマン”というオリジナル曲でした。

それは、彼自身の夢、「アイアンマンレースを完走し、“アイアンマン”の称号を手に入れる」という想いを歌にした曲でした。

トライアスロンだけでも十分過酷です。

一般的なレースでも、

スイム1.5km、バイク40km、ラン10km、合計51.5kmを走り抜かなければなりません。

ところが、アイアンマンレースはさらに桁違いです。

スイム3.9km、バイク180.2km、ラン42.195km。

まさに“鉄人レース”という名にふさわしい競技です。

そんなとんでもない挑戦を、四十代も後半に差しかかった友人が、本気で目指している。

その事実だけでも、私は胸を打たれました。

たしか彼は、歌の中で、レースを人生になぞらえていました。

苦しくても前へ進むこと。自分の限界に挑み続けること。途中で立ち止まりそうになっても、また走り出すこと。

人生も、どこか似ているのかもしれません。

大きな夢には、人を動かす力があります。

人間だけが、遠い未来を想像し、そこへ向かって努力できる生き物なのだと思います。

そして、その“夢を見る力”が、文明や文化を生み出してきたのでしょう。

夢は、私たちの背中を押してくれます。

「もっと先へ行けるかもしれない」

そんな可能性を引き出してくれるのです。

ただし、夢そのものは大きくても、そこへ向かう目標は、現実的である必要があります。

もちろん、「小さな目標しか持つな」という意味ではありません。

大切なのは、自分を前へ進ませる“効果的な目標”になっているかどうかです。

では、本当に力を引き出してくれる目標とは、どんなものでしょうか。

次回は、“人を成長させる高い目標”について、考えてみたいと思います。

少なくとも、すでにトライアスロンを完走している彼の、アイアンマンへの挑戦を笑う人はいないでしょう。

スポーツにはいつも、人生を前向きに生きるヒントが隠れている気がします。

須野愛と素の歌劇団『 紅き祈り(La Vendee)』


藤本ひとみ著『聖戦ヴァンデ』上下巻を読了し、以下のような感想文を既にSNSに投稿しています。

(ここから)
http://amzn.to/2iDnr1y

フランス革命の最中起こった内戦。反革命勢力、貴族と農民で構成されたカトリック王党軍と共に乳飲み子から女老人まで皆殺しにした史実を元に書かれた長編小説です。

ベルサイユのバラは読んだことはありませんが、勝者によって作られたイメージとは異なる現実は、いつの時代にもあるものでしょうね。

小説として十分読みやすいし、歴史の勉強にもなる良書です。

超、お勧め!
(ここまで)


AIによる“あらすじ”

(ここから)
藤本ひとみによる歴史小説『聖戦ヴァンデ』のあらすじです。

フランス革命の陰で起きた悲劇的な内戦を描いています。

出会いと運命:革命初日、バスティーユ陥落に沸くパリで、貴族の騎兵隊士官・アンリ、その副官・ニコラ、そして革命に傾倒する若者・ジュリアンの3人が運命的な出会いを果たす。

それぞれの信念:やがてフランス革命は過激化し、国王の処刑や徴兵制への反発から、敬虔なカトリック教徒が多いヴァンデ地方で大規模な王党派の反乱(ヴァンデ戦争)が勃発する。アンリは農民軍のリーダーとなり、ジュリアンは革命政府の闘士となる。

過酷な結末:立場が違えば良き友人になれたはずの3人が、激動の時代の中で翻弄され、友情と信念の狭間で壮絶な戦いと悲劇的な運命に巻き込まれていく。
(ここまで)

< La Vendéeとはどういう意味か? >

「La Vendée(ラ・ヴァンデ)」は、フランス西部に実在する地名です。日本語では通常「ヴァンデ県」あるいは単に「ヴァンデ」と訳されます。

そして『聖戦ヴァンデ』の「ヴァンデ」は、単なる地名ではなく、

フランス革命に抵抗した土地カトリック信仰を守ろうとした地域革命政府による大虐殺の舞台

という、歴史的・象徴的な意味を持っています。

「La」の意味

フランス語で、

Le = 男性名詞の「その」

La = 女性名詞の「その」

なので、

La Vendée= 「そのヴァンデ地方」

というニュアンスになります。

英語なら “The Vendée” に近い感じですね。

歴史的には何が起きたのか?

1793年、フランス革命政府が

王を処刑、教会を弾圧、徴兵制を強行したことで、敬虔なカトリック農民が多かったヴァンデ地方で大反乱が起こります。

これが「ヴァンデ戦争(War in the Vendée)」です。

革命政府はこれを徹底弾圧し、村の焼き討ち女性や子供を含む虐殺“地図から消せ”というレベルの殲滅作戦を行ったとされます。

だから『聖戦ヴァンデ』は、単なる歴史ロマンではなく、「正義の革命の裏側で何が起きたか?」を描いた作品なんですね。

ちなみに、『紅き祈り(La Vendée)』というタイトルはかなり雰囲気があります。

「革命に消された祈りの土地」という響きが出ていますし、宝塚風とも非常に相性がいいです。( チャットGPT…談 )


ということで、宝塚歌劇団をイメージした曲を創ってみました。


歌:須野愛と素の歌劇団

企画・制作:KenChan
作詞:チャットGPT
作・編曲:SUNO

でお届けします。


オリジナル曲 再生リスト
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挿入曲入り連載小説『 クラスメイト 第1話 Meary 』


平成に変わった年、僕は転職を機に、会社の最寄り駅に隣接した英会話学校へ通うことにした。

英語には昔から漠然とした憧れがあった。高価な教材を買い込んだこともある。だが、結局は本棚の隅で埃をかぶったままだった。

今度こそ続けたい。そう思えたのは、“仲間がいれば違うかもしれない”という期待があったからだ。

年間の学費は、当時の僕にとって決して安くなかった。ほぼ一ヶ月分の給料に相当する金額を、ローンで支払うことにした。

入学手続きの日、受付に大きく掲げられた文字を見て、思わず足が止まった。

“NO JAPANESE!”

冗談半分の演出なのだろうが、英語が苦手な僕にはかなり威圧的だった。

もっとも、入学手続きそのものは日本語で丁寧に進められた。

そのあと、クラス分けのための簡単な面接が行われた。若くて綺麗な女性スタッフに、英語で質問される。

ただでさえ英語が苦手なのに、緊張で頭が真っ白になる。

質問の意味を聞き返し、しどろもどろに答えた結果、僕はあっさり最低レベルの“入門コース”に振り分けられた。

だが、実際に通い始めると授業は意外なほど楽しかった。

週二回、夜七時半から九時まで。仕事帰りの疲れた頭に英語を詰め込むのは楽ではなかったが、新しい職場に慣れようと神経を使い続けていた僕にとって、火曜日と金曜日の授業は、むしろ気分転換になっていた。

クラスには十五人ほどの生徒がいた。年齢も職業もばらばらだが、皆どこか「今の自分を変えたい」と思っているように見えた。

三ヶ月は驚くほど早く過ぎた。

そして夏休み前、担当講師のMaryが教室で告知をした。

「八月いっぱい通常授業はお休みですが、その代わりに十六日連続の夏季集中講座を行います。レギュラーコースの生徒さんは、通常六万五千円のところを五万円で受講できます。この講座を受けるかどうかで、二学期にはかなり差がつきますよ」

最後の一言を、Maryは少しだけ微笑みながら強調した。

Maryは色白で、長い髪がよく似合うスレンダーな女性だった。教え方はきびきびしていて、時に厳しい。だが説明は分かりやすく、男女問わず人気があった。

日本人講師だが、この学校では生徒も講師も全員アメリカ風のニックネームで呼び合う決まりになっている。

普段の授業では、日本語をほとんど使わないMaryが、このときばかりは営業モードで堂々と日本語を話していたのが少し可笑しかった。

「二学期に大きな差がつきますよ」

その言葉は、思った以上に効果があった。十五人のクラスのうち、半分以上が申し込みを済ませた。

ちょうどその頃、僕の営業成績は珍しく好調で、思いがけない報奨金が入っていた。

勢いもあったのだろう。僕もほとんど迷わず申し込み用紙に名前を書いた。

ところが、開講直前になって夏風邪をこじらせてしまった。

ただの風邪だと甘く見ていたが、咳はなかなか止まらず、ついには気管支炎と診断された。


                               つづく

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