子供向けのお芝居っぽいから観に行くの躊躇していたが
山内圭哉さん好きだし、山下リオちゃん久しぶりだし、ストーリー良さそうだし、何より料金がお安いし…

ってワケで行ってきました↓




音楽劇『死んだかいぞく』@ハレノワ中劇場
(2024.8.25(土)14:00〜)1階12列センター

【上演時間】100分(休憩なし)
【料金】一般/3500円、U18/1000円(全席指定)

【スタッフ】
原作:下田昌克(絵本『死んだかいぞく』/ポプラ社)
脚本・演出:ノゾエ征爾
音楽:田中 馨
美術・衣裳・小道具デザイン:下田昌克

【キャスト】
カイゾク:山内圭哉
アンナ、バーの女、他:山下リオ
母、家政婦、リリー、他:家納ジュンコ
フライング・ペイン、セーラーマン、他:竹口龍茶
囚われ船長、ジャッキー、他:熊谷拓明
キング・ジョージ、医者、他:片岡正二郎

楽士(ミュージシャン):田中 馨東郷清丸

【あらすじ】
えらそうなかいぞくが殺され、海に投げ出された。体が沈みゆく中、海の生き物たちが次々と現れ、かいぞくが身につけているものを一つ、また一つと取っていく。帽子、宝石、服、そして……。
「ああ、オレの大切なものを持っていかないでくれ!」
その一つ一つから見えてくるかいぞくの人生。そうしてさかのぼっていった先にたどりつくのは……。
(公式より)

(公式よりお借りしました)


チケットは発売開始からだいぶ経って購入したが、3列目や5列目など前方席にもポツンポツンと空席があった(←家族連れが連番で購入した結果ハンパになったっぽい)。
私は舞台全体一目瞭然が好きなので、12列目センターブロックをGET。段差が大きくてメッチャ観易かった。

客層はほぼ家族連れ。子供の年齢は未就学児〜小学生低学年かな。
始まる前からグズってる子いるし、座席で立ち上がったりするお行儀悪い子もw
なだめたり、叱ったり、、、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、ホントお疲れさま。

もちろん、大人だけで来られている方もチラホラいらっしゃいました。ワタシ含む。


舞台上には、木を組み合わせて作ったような「死んだかいぞく」の大きな文字。写真撮影NGで残念。
この文字をバラして組み替えて、壁にしたり通り道にしたりトンネルにしたり、と変幻自在。
よく考えて作ってある。

そして、その文字の組み替えや、薄いビニール(?)をヒラヒラさせて波を表したり、
海の生き物たち(サメ、タコ、アンコウ等々)のパペット操作だったり、という それら全て人力(しかもたぶん出演者による)。

このアナログの温かみ、絵本っぽさが生きてて良き。

美術・衣裳・小道具デザインを原作者の下田昌克氏が手掛けているだけのことはある。



音楽は、奏者2人だけで。穏やかなメロディーに優しい歌。歌詞は絵本の文章そのままかな。
ノゾエ征爾さんが追加したというカイゾクの過去を描く場面で歌われるのはオリジナルっぽい。




物語は、
のっけから主人公が腹を刺されて死んでいる。

(初日記事よりお借りしました)

腹に剣を突き立てたまま海に沈んでいく、カイゾク。
動けない彼のからだから、帽子を、爪を、髪を、歯を、目を、海の生き物たちが奪っていく。

初めは「俺のものを奪わないでくれ」と嘆いていたカイゾク。
でももう自分には必要ないことに気付き、全てを受け入れていく。

最後には小さな魚たちのエサとなり、彼の骨は海の底に沈んで珊瑚になる。
彼の全ては、誰かの、何かの一部として生き続ける。


そんな原作の物語の合間に、ノゾエ征爾氏が追加したカイゾクの過去が挿入されている。

少年時代のこと、なぜ海賊になったのか、武勇伝、愛するアンナ。


ラスト、船上で海賊の仲間が「酔っ払って誰か刺した気がするけど覚えてないんだ」「大丈夫、みんな揃ってる」などと暢気な会話をかわす場面があったが

これは原作がそうなっているのか、それともノゾエ征爾さんの加筆か?


この会話をどう受け止めればいいのか、ちと考える。

サラッと聞き流すとブラックジョークにしか思えないが、

人は自分のことなど それほど気にしていないということの誇張表現なのか、

だとしたら、自信満々だったカイゾクにとっては嫌われて憎まれて殺されたほうが納得できたのではないか、

理不尽に殺されたカイゾクの存在意義は?彼の死は無意味だったのか、

更には、人生にはこんな不条理や理不尽な出来事があるのだよ、と我々に示しているのか。



笑える場面や考えさせられるセリフもあり、大人も楽しめるように考えられているのはわかるが、ちょっと盛り過ぎかも。
冗長的に感じられる場面もあり(周りの子供たちがダレてダレて親御さんが大変そうだったw)
ワタシ的には、もう少しシンプルでも良かったな〜と思う(ぶっちゃけ私も若干ダレた←)。
そのほうが、「生」と「死」がストレートに心に刺さる気がする。



山内圭哉さんは、映画『パコと魔法の絵本』('08)以来のファンで、何度か出演舞台も拝見している。
強そうなビジュアルに反して、うっすら漂う哀愁が何とも言えず。この物語の世界観そのものだった。
タコに髪の毛を奪われて坊主頭になっちゃうとこ、いちばんハマるポイントwww

久しぶりに観た、山下リオちゃん。相変わらず八頭身で美しかった。
綺麗な歌声を聴けたのが嬉しい。またミュージカル出てくれないかな。

片岡正二郎さんは、初めて観た時(『キャバレー』(’17))その芸達者っぷりに驚いたが、やはり演技巧者。

家納ジュンコさん、歌がお上手だった。リオちゃんとのデュエットがメッチャ綺麗。調べてみたら劇団四季に出演歴あり。ナルホド。

熊谷拓明さんはタコの被り物して踊ったり、身体能力が凄くて。と思ったら元々はダンサーさんで、シルク・ドゥ・ソレイユに出てらしたとか。

竹口龍茶さんはノゾエ征爾さん主宰の「劇団はえぎわ」所属。すごく若く見えたが、キャリアのある役者さんだった。上手いはずだわね。




「死」に向き合い、「生」を見つめなおす物語。

綺麗なのに仄暗く、温かいのに もの哀しく。


完全な子供向け、ではない。
て言うか、大人にこそ響く物語かもしれない。

原作の絵本を読みたくなった。
どこか無料で読めるサイトとかあるかな?(買わんのかい)

 



公演は、残すところ8/31の長野公演のみ。
台風の影響が心配。
無事に大千秋楽を迎えられますように。


【公演スケジュール】
[終了]埼玉:彩の国さいたま芸術劇場、7/20(土)〜28(日)
[終了]長野:サントミューゼ、8/4(日)
[終了]富山:オーバードホール、8/7(水)
[終了]福井:ハーモニーふくい、8/10(土)
[終了]兵庫:神戸文化ホール、8/17(土)
[終了]福岡:J:COM北九州芸術劇場、8/21(水)
[終了]岡山:ハレノワ(中)、8/24(土)・25(日)
長野:まつもと市民芸術館、8/31(土)