今、川崎の暴行事件が連日大きく報道されている。
事件はおおよそ予想どおりに展開するも、その無残な行為に憤りを感じる。
では、こんな行為は特異的なことなのだろうか?
実は数年前にも、似たような事件があった。
同世代の少年が一人の少年を集団暴行し、それがエスカレートして死に至ってしまった。
自分たちの行動が、一人の人間の命を奪うことなど考えておらず暴行を加えたようだ。
少年が動かなくなり、慌てた少年たちは、遺体を隣町の公園まで運び、置き去りにした。

少年の遺体が置き去りにされた公園は、H ちゃんが毎日お散歩をしていた公園だった。
H ちゃん達は、おばあちゃんの家に逃げてきてから、お父さんが連れ戻しに来ないかビクビクしながら過ごしていたが、この公園は比較的人通りが少なく、目立たない場所にあったため、お散歩コースになっていたそうだ。
H ちゃんは、朝、お母さんに公園に行きたいと言った。
ところが、お母さんは言葉を濁し、今日は別の場所に行こうと提案した。
H ちゃんが理由を聞いても、答えてくれない。
そこで H ちゃんは、おばあちゃんに理由を聞いた。
「ねえ?今日はどうしていつもの公園に行ったらいけないの?」
おばあちゃんも事件のことを知っていたので、答えに困ったが、正直に本当のことを伝えようと思いこう答えた。
「そうだねぇ、今日はその公園でね、、
大きいお兄ちゃんが、一人のお兄ちゃんをぶったり蹴ったりしたから、そのお兄ちゃんが死んじゃったんだって、可哀想だね、、」
H ちゃんは、一瞬黙ってこう言った。
「あたしは死ななかったね!」
4 才の H ちゃんの口からこんな言葉が出るとは。
H ちゃんがお父さんから暴行を受けていた時、H ちゃんは死ぬ思いだったのだ。
H ちゃんは、絶命の思いでお父さんに暴力を振われていたことを、ちゃんと認識していた。
抵抗すればさらに殴られ、泣き叫んでももっとひどく殴られるので、H ちゃんは
押し殺したような小さい声で
「やめてーーー」
としか言えなかったと聞く。
どれほど心細かったことだろう。
自分の親から、死ぬ思いの暴行を受けるなど、どれだけの絶望感を味わったことだろう。
H ちゃんが命を落とす可能性もあったと言う。
幸い死ぬことはなかったが、万が一命を落としたなら、H ちゃんのお父さんは犯罪者になっていたはずだ。
犯罪者になる可能性はあったが、H ちゃんのお母さんは被害届を出すことはしなかった。
誰かが血を流さなくては、このような暴行の事実は埋没してゆく。
被害を受けている人を守ること。
人に暴行を加えてしまうほど心が壊れている人をケアすること。
両方が解決されなければ、このような事件はなくならないであろう。