成人してから発症し、ご家族は何年もうつ病と思っていた。
しかし、彼の独特な世界の存在に気付いたお姉さんが、統合失調症を疑った。
予想は当たった。
最初に受診した精神科の、明らかな誤診だった。
Z 君は大変苦悩した。
寝ても覚めても四方八方から、自分を攻め立てる声がする。
お前はダメ人間だ。
お前を死なない程度に苦しめてやる。
Z 君は優秀なため、秘密組織から疎まれ、嫌がらせを受けているのだと言う。
笑い事ではない。
Z 君は間断なく彼を責め続ける声と戦っているのだ。

四六時中、自分を責め続ける声が聞こえてきたら、人は平静を保つことができるだろうか。
彼は自殺未遂を何度か試みる。
が、死にきれない。
心配したお姉さんは、彼を知り合いから紹介してもらった病院に連れて行く。
お姉さんは、お母さんの育児下手が招いた悲劇だと思った。
いや、直接的な原因にはならなくとも、お母さんが命がけでわが子を守るような人だったら、もっと事態は軽かっただろうと。
そして、なんとか自分のかかわりで弟が元気にならないものかと考える。
ある日のこと、Z 君と付添いのお姉さんは、診察のあとコーヒーで一息ついていた。
Z 君はお姉さんの付添いに不満の様子だ。
しかしお姉さんは、とにかく、Z 君の心のケアをと継続通院を勧める。
すると、Z 君が怒って大声を出した。
「俺は動物じゃない!お母さんはわかっていないんだ!」
そして、店から走りだし、一人で帰ってしまった。
取り残されたお姉さんは呆然とした。
自分がどんなに心配しても、お母さんの代わりにはなれないんだ。。。
あんなクソ母親なのに。。。
悔しい。
それから数年たったある日、Z 君は大事故に遭遇した。
危篤状態となり、家族が病院に呼ばれた。
医師より、覚悟するよう言われた。
お姉さんは、耳を疑った。
この子は悪くないのに。
なんで一番苦しんでいるこの子が、苦しいまま死ななきゃいけないの!?
その怒りは、お母さんに向けられた。
「お母さん!何でまだ生きる希望があるうちに、死んだあとのことを心配するのよ!母親だったら、Z が絶対に生還することだけを考えなさいよ!!!!」
お母さんは、どうして良いかわからず、
「死んだらどうしよう・・・」とおろおろしていたのだ。
どうしようではないのだ。
死なせてなるものか!ではないのか。
Z 君の意識は数日戻らなかったという。
しかし、ご家族が交代で病院にかよい、声をかけ、奇跡的に一命をとりとめた。
お母さんも必死でかよったようだ。
Z 君は ICU で家族が真剣にかかわった記憶をなぜかすべて失ってしまったが、それ以来、重篤な状態から回復を見せ、日常生活が送れるようになったのである。
子供がどんな状態になろうとも、この子は断じて私が守るとのお母さんの毅然とした態度が、子供の未来を左右すると思えた一件だった。
また、別の側面から見ると、お母さんがお母さんらしくなるために、Z 君は命をかけたと言えるのではないだろうか。