2024年2月25日(日)

✕(twitter)を見ていると、海外だけでなく日本でも、ガザ停戦、平和の集会デモ行進やスタンディング、、が 行われているのが分かる。ガーディアンによると英国も世論に押されてイスラエルへの武器支援を止めるかもしれないらしい。ブラジルのルラ大統領はガザで行われているのは戦争でなくジェノサイドだと再々糾弾した。

 

4か月以上も続くイスラエルの大虐殺を止められないのは、ホロコーストのトラウマだけなのだろうか?

 

同じく✕の投稿で紹介していた記事から抜粋。

 

######

ドイツ現代史研究の取り返しのつかない過ち――パレスチナ問題軽視の背景 京都大学人文科学研究所准教授・藤原辰史 | 長周新聞 (chosyu-journal.jp)

 

京都大学で13日におこなわれた公開セミナー「人文学の死――ガザのジェノサイドと近代500年のヨーロッパの植民地主義」【既報】より、藤原辰史・京都大学人文科学研究所准教授の基調講演「ドイツ現代史研究の取り返しのつかない過ち――パレスチナ問題軽視の背景」の要旨を紹介する。

***

「アウシュヴィッツ」という言葉は、ナチスのシンボルのように語られ、現代社会における最悪の歴史的事実として認識されている。たしかに最悪であり、どんなことがあろうとも二度と繰り返してはならない大惨事だが、それを中心に歴史観が構築され、あまりにも上位に置かれているため、ナチズム研究者自身が実はホロコーストやナチズムと十分に向き合い切れていないのではないか、というのが私が今日問いたいことだ。

 

 それはとりわけ「いないこと」「なかったこと」にされるものに対して関心がとても弱いことに表れている。ナチスが迫害したのはユダヤ人だけでなく、ロマ(かつてジプシーという蔑称で呼ばれた)もいる。そのような研究がもっとたくさんあっていいはずなのに、基本的に「ナチスの虐殺」といえばユダヤ人に対するものに収斂(れん)される。

***

 それは、西側社会への復帰を急ぐ西ドイツが「人道的な国家」へ生まれ変わったことを世界に示すとともに、イスラエルにドイツの工業製品を届けることによって戦争で荒廃したドイツ経済復興も可能にした。その物資の中には、「デュアルユース(軍民両用)」という形で利用される軍事物資が入っていた。

 

 それだけでなく、西ドイツ首相アデナウアーは、1957年から、国交不在のなかでイスラエルの軍事支援を極秘で進めた。機関銃から高射砲、対戦車砲、戦車、潜水艦を含んでいたともいわれる。これはドイツ憲法に違反するが、明るみに出るまで長く続けられた。

***

また、ドイツがナチズム時代に起こした「悪」とは、もちろんドイツ国内もだが、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ベラルーシ、ウクライナなどの中東欧やソ連で起こしたことは圧倒的に凄まじい。なおかつ、それはスターリンからのさまざまな暴力と常に重ね塗りのようにしてもたらされたにもかかわらず、ドイツ現代史研究者は「ドイツの東欧への侵略は過ちだった」と狭い範囲の「歴史記憶」では正しいことをいっても、別の視点からその場にあった中東欧の歴史を見切れていない。

***

そもそもイスラエルは、ナチスによるホロコーストがおこなわれた時代に国家として存在していなかった。その後に生まれたイスラエルが、ユダヤ人虐殺の賠償をドイツに求めることは、国際法上、通常は認められない。

 

 それを例外的に認める「論理」が、ユダヤ人虐殺の世界史における「唯一無二性」だといわれている。

***

私たちは歴史学で「奴隷は解放された」「奴隷制はなくなった」と教えられた。だが、コロナ禍であきらかになったのは、低賃金労働者や5000万人といわれる現代奴隷――賃金を与えられず、身体拘束を受け、性奴隷あるいは農業奴隷にされる人々――が東欧から供給されていた現実だ。これは私見ではなく、国連組織ILO(国際労働機関)と関連NGOが報告していることだ。奴隷制は終わってなどいないのである。

 

 この現代奴隷市場は、難民キャンプができればできるほど活況を呈する。たくさんの性奴隷の女性たちが勧誘され、西欧に輸入され、西欧や東南アジアなどから日本にも連れてこられている。このように長く続く触れたくないことを見て見ぬふりをしながら、ドイツの文明的な記憶文化を大事にするということに、私はものすごい落差を感じる。

シオニズムは、西欧植民地主義が結晶化したものだ。かつて日本が中国東北部につくった満州国では、日本から「未開の地を切り拓く」というプロパガンダで農民たちが渡っていったが、そこにはすでにきれいな田んぼがあったといわれている。なぜか? それは朝鮮の移民たち、場合によっては日本の植民地主義のなかで追われた人々がその地を切り拓いていたからだ。その地を二束三文で買い叩き、武力で奪い、そこへ日本の貧農を入植させた。そのとき、その地の中国人、朝鮮人を「土匪」「共匪」と呼び、これらの暴力が怖いからと言って銃を持って入植を進めていった。これはパレスチナでユダヤ人がやっていることと重なる。

***

反省を込めていえば、ナチス研究は、1980年頃から経済の視点が抜け始める。マルクス主義経済学の研究者が減ったことも背景にあるが、経済史のなかにナチズムを位置づけられないことは大きな問題だ。奴隷制問題、イスラエルがパレスチナの人々を極端な低賃金労働者としてしか見ていないこと、西ドイツとイスラエルの関係にも経済問題がある。

 

 ウクライナの戦争でたくさんの若い人が亡くなっているのに終わらない状況に心を痛めている人がいらっしゃると思うが、あのとき一体どこの株価が上がったのかを私はチェックした。潜水艦やボーイングなどの戦闘機の企業の株価が爆上がりしたことは想像通りだが、穀物メジャーの株価も高騰した。カーギルなど欧米の大手5社だけで世界の穀物の7割以上を独占し、これらの企業は穀物を倉庫におさめ、世界を巻き込むような大事件が起きて穀物価格が上がるタイミングを見計らって売りに出して莫大な利益を上げる。

***

そもそも収容所には、南アフリカにイギリスが作った強制収容所やソ連の収容所列島などさまざまなものがある。収容所は常に人体実験の対象であり、栄養学者は「被収容者をぎりぎり生かすための実験」をしていた。それは殺すということに加えて、労働者としていかに効率よく食事を与えて働かせ、病気になれば殺すという、労働を通じた虐殺がおこなわれていた。第一次世界大戦前、すでにドイツ=西洋文明の象徴であるローベルト・コッホ(細菌学者)が、アフリカで人体実験に加わっていたということも明らかになっている。

 

 さらにいえば、EUが現代奴隷制資本主義の罪、現代の「地球規模の身分制社会」ともいうべきものと向き合えていない。かなりの部分がもう動くことができず、この地域で労働し、死んでいくという人々。一方に、富を独占してタックスヘイブン(租税回避)をしている大金持ちがいるという越えられない壁が世界全体を覆っているなかで、欧州やアメリカの人々はある意味の身分制的状況にある。

############

 

イスラエルのパレスチナ人大虐殺とドイツの関係、ひいては植民地主義(日本の満州開拓)、難民と現代の奴隷制度、世界経済(武器や戦争による穀物などの高騰、、、、)と、内容は多岐に広がっているので、抜粋も長くなってしまった。原文(と言っても要旨)を読むともう少し理解が深まると思うが、、。