夢41 | ゆうきの話

夢41

今日は宇宙船の掃除をすることにした。
この船を手に入れてから一度も掃除をしていない。
もっとも私一人しかいないのでそれほど汚れたりはしないが、それでも開けたとの無い部屋などはほこりを被っているに違いない。
宇宙船とは言ってもそれほど大きくないので、部屋も全部で5つほどである。
ひとつは船長室、ひとつは寝室。
残りの3つは一度も入った事の無い部屋だ。
掃除機を持ってその部屋のひとつに入ってみる。
中は、何も無い部屋だった。
全く何も無いただの空き部屋で、ほこりひとつ無かった。
ここは掃除する必要がないので、次の部屋を掃除することにする。
次の部屋には、ピアノが一台置いてあった。
私はピアノは全く弾けないが、とりあえず鍵盤を叩いてみる。
聞きなれたピアノの音がする。
調律がどうのと言うことは私の耳ではわからないが、聞いた感じでは音に狂いは無いようだ。
何の変哲も無いピアノなので自動演奏機能なども付いていないが、時々ピアノの音楽が聞こえて聞いた。
あれはこのピアノの音だったのだろう。
誰がひいていたのかは、想像もつかないが、私で無いことは確かだ。
すると目の前でピアノが突然演奏を始めた。
懐かしいメロディーで、子供の頃よく聞いた曲だ。
誰かが弾いた音楽が、時間が経ったのでまた鳴り始めたのかもしれない。
時間と言うのは輪であり、宇宙の始まりと宇宙の終わりは繋がっている。
そして、宇宙の終わりの時間の振動が宇宙の始まりの時間へと伝わって微妙な、又は大きな変化を与える。
その変化が一つ前の宇宙と違う宇宙を生み出す。
時間の輪の振動が永遠に輪を振動させ続け無限の宇宙を生み出す。
そして今、時の輪の振動がピアノの弦に伝わって、昔の音楽を奏でているのだ。
しばしピアノに聞き入る。
そう、掃除をするとなぜかそれ以外のことが気になってそれに気をとられてしまう。
だからいつまで経っても掃除が終わらない。
この部屋も全く汚れてはいないが、とりあえず掃除機を形だけでもかけておく。
そして次の部屋へ行く。
次の部屋はぎっしりと物が詰まっていた。
見たことも無い物体から、見覚えのある様々なものまで、この世にある全ての物が詰まっていそうなほど何でも詰まっていそうだ。
部屋の片隅には小さなジュースのビンが転がっていた。
これは確か、薬みたいな味のするジュースのビンだ。
もう何年も見かけてはいなかったが、こんなところに転がっていた。
昔店で売っていたもの、最近売られだしたもの、そしてそれらが進化したらそうなるであろうと言うような形のもの、ここには何でもある。
この部屋のサイズはそれほど大きくは無いが、棚に目をやるたびに違うものが次々と見えてくる。
自分の記憶と願望とが棚に物を詰め込んでいるようにも見える。
それならばこの部屋の掃除は必要無いだろう。
私はゴミなど望んではないのだから。
ここはそのままそっとしておこう。
そして、必要なものがあればここに来ればなんでもあるに違いない。
ただ、今の私に必要なものはここにあるようなモノではない。
私に必要なのは謎であり、時であり、宇宙である。
掃除ばかりしていても、謎は解けない、ものは謎の結果であるが謎そのものではない。
掃除を早々に切り上げて、早く旅の続きをしよう。
掃除機をこの物置小屋に押し込めると、早速操舵室へと向った。
ちなみに操舵室は甲板に設置されていて、いつも風が入るので埃ひとつ無い。
操舵室には、舵がひとつ付いているだけで、他には何も無い。
速度の調整などは、自動で行ってくれる。
ここで意識を集中するだけで、大抵の動作はボタンなどを押すことも無く行うことが出来る。
この船を誰が創ったのかは不明だが、きっと無精者だったのか、よっぽど進んだ科学力を持っていたのだろう。
操舵室でとにかく前進をすることを念じると、甲板に出た。
甲板には、何も無かったはずだが、いつの間にかに大きな箱が置かれていた。
木で出来たその箱は、フタなどは無く、ただ釘で打ち付けられているだけのようだ。
中に何か入っているのだろうが、素手で開ける事は出来ない。
物置から金テコを持ち出してきて、箱をこじ開けてみる。
中には、おがくずが詰まっていたが、その中から一体の人形が出て来た。
それは、動物のようだが、少なくとも地球上には存在しないと思われる。
体はライオンのようであるが、頭が二つ付いていて、それぞれ人間のの頭である。
尻尾も2本あり、これもライオンの尻尾のように先に筆のように毛が密集している。
今にも動き出しそうな感じだが、明らかに人形であり、実際に動くことはなさそうだ。
とりあえずこれを舳先に飾ることにした。
昔の船の舳先には色々な人形が付いているのを見たことがあるが、このような奇妙な動物の人形が付いたのは見たことが無い。
また、これが何と言う生き物なのかもわからない。
ただ、何となく強そうなので魔よけになりそうな気はする。
人形の頭に青い鳥が止まってさえずっていた。
それからしばらく、航海は順調に進んだ。
もちろん人形が動き出すことなどもなく、順調な旅だ。
青い鳥はあの人形をすっかり気に入ったらしく、時々飛び回る以外はいつもあの人形に止まっている。
最近気が付いたことだが、あの鳥が鳴くと、船室にあるピアノが鳴り出す。
もしかしたらあの鳥がピアノを不思議な力で弾いているのかもしれない。
青い鳥がさえずると流星が落ちてくるが、相変わらず変なものばかり落ちてくる。
ほとんどがガラクタのようなものばかりで、物置に直行するものがほとんどである。
その中で、真空管ラジオだけはいつも使っている。
今日も他愛の無いニュース、天気予報、その他色々な宣伝なども入ってくる。
この周辺に無人の人間が住める惑星があると言うニュースを聞いた私はそこへ行って見る事にした。
その星は、人間こそ住んでいないものの、動植物は既に地表を覆いつくしていて、まるで大昔の地球のようである。
この星に降り立って、少し観察でもしてみようと思う。