夢38
真空管ラジオを聴きながら宇宙の船旅を楽しむ。
色々な放送が流れている。
今日の音楽、スポーツ速報、近所の星のニュース。
今日の音楽は18世紀の地球の音楽だ。
突然音楽が中断される。
臨時ニュースが入る。
どうやらこの周辺に未確認の宇宙船が存在するという。
人間が今まで接触した事の無い未知の宇宙船だと言う。
それがこの船に接近している。
いよいよそれが肉眼で確認できるようになった。
その船は、立方体だ。
凹凸も無い、ただの立方体。
全体が黒く、反射がほとんど無い。
全ての光を吸い込む、完全な黒体だ。
入り口も無ければ窓もない。
それがこの船の目の前でぴたりと停止した。
こちらもその場に停止してしばらく様子を見ることにする。
ラジオではこの謎の宇宙船についての情報が繰り返し流れている。
敵意は無いようだが、どのように接してよいかもわからない。
しばらくじっとしているが、このままでいても仕方ないので、あちらの船にさらに接近してみる。
手が届きそうなほど接近したところで、表面の色が変化を始めた。
黒かった表面が徐々に白くなってきた。
そして、見る見る明るくなり、眼を向けられないほどの光を放ち始めた。
徐々に光は落ち着き、何かの映像が表面に映し出されているようだ。
それは、どこかの山の奥の寺のような場所だ。
手を伸ばしてみると、その映像のようなものの中に手が入る。
そして全身がその中に入り込むことが出来た。
そこは、どこか山奥の寺のような場所だ。
おそらく日本の寺と同じものだろう。
ここがどこかはわからないが、何と無く懐かしい感じがする。
この寺は山の斜面に設置されており、観光客がけっこうみられる。
長い階段を上ると、巨大な杉の横の広場に出た。
そこでは、出店があって、いくつかの食べ物などが売られている。
たこ焼きを買って食べる。
宇宙の真ん中でこんなたこ焼きを、しかも寺にある広場の出店で食べられるとは思っても見なかった。
たこ焼きを食べると、広場を見回してみる。
人が何人かいるが、皆無口だ。
一人の老人が私に話しかけてきた。
この山の頂上にある寺からの眺めはとても良いから是非見てみると良い、とのことだった。
山頂まではここから数キロはあると言う。
その途中には様々な建物があり、どれも歴史的な建造物だ。
その中のひとつに入ってみる。
中には仏像か一体座っていた。
それは、今まで見たことの無いような、それでもどことなく見覚えがあるような仏像だ。
奈良や鎌倉にある大仏がよく似ている。
ただ、黄金色に輝いている点だけが違う。
おそらくこれは創られて間もない仏像なのだろう。
それをしばし眺める。
周りにも何人かの人がいて、見とれていた。
建物の外では、絵葉書を売っている。
一枚をにとって見る。
そこには奈良の大仏の写真が印刷されている。
他にも鎌倉の大仏なども売られている。
何枚かの絵葉書をお土産に買って、山頂を目指して再び階段を上る。
深い森を石の階段がどこまでも続く。
時間は午前中、薄い霧が漂い、湿った空気が体を取り巻く。
森の空気を吸い込みながら軽快に石段を登り続けた。