夢36 | ゆうきの話

夢36

この星を離れるために宇宙空港へと向う。
そこは、数多くの宇宙船が離着陸をしており、その多くはこの星へやってくる観光客を乗せた船だ。
この星は原始の自然が保たれているので、その観察ツアーが人気なのだ。
この星を離れるための宇宙船を探す。
空港の隅に、見慣れた船を発見した。
それは紛れも無く今まで乗っていた水面を進む船の形をした宇宙船だった。
空港を管理している人間によると、この船は、この空港ができる前からここにあり、誰ものかはわからないという。
もちろんこの船は紛れも無く私の船だ。
その証拠にあの青い鳥がいる。
宇宙で見つけた青い鳥、それが相変わらず舳先に止まっている。
船に乗り込み、いよいよエンジンに火を入れる。
音も無くゆっくりと地面を離れ、数秒後には大気圏を離れていた。
宇宙コロニーの横を通り過ぎ、月を超えていよいよ宇宙空間へと飛び出した。
この星の周囲は、比較的交通量が多く、様々な宇宙船を見ることができる。
さすがに船の形をした宇宙船は無いが、アダムスキー型と呼ばれるUFOにそっくりなものや、葉巻型、SFに出てくる進化したロケットの様なモノもある。
まさに宇宙船の博物館のようだ。
しばらく進むと宇宙船もまばらになり、広大な宇宙の雰囲気を満喫する。
宇宙は広く、そのほとんどの空間には何も無い。
その中にある星のかけらも、ほとんどが空っぽだ。
星と星との間には僅かだがいろいろな物が浮いている。
人工物も時々浮かんでいる。
今横に浮いているのは、一台の車だ。
見たことも無いような古いタイプの車で、シルクハットを被った紳士が降りて来そうだ。
新品同様に輝いているが、もちろん誰も乗ってはいない。
それに船を横付けして、乗り込んでみる。
車の運転方法はわからないが、何と無くハンドルを握ってみる。
ハンドルは固定されていて動かない。
アクセルやブレーキも踏み込むことができない。
この車はおそらく模型のようなものだろう。
なぜこれがここに浮いているか、全くわからないが、宇宙は広いのでこんな物が浮いていてもおかしくは無いと、何となく思った。
たぶん宇宙には、人間の想像したあらゆる物が存在している。
今ではないかもしれないし、未来かも、過去かも知れないが、人間の想像したものはそのどこかに必ずあるはずだと感じている。
だから、宇宙の果てには、人間の創造したあらゆる物が流れ着いているかもしれない。
ならばそこは、人間の思考の産物が無数に溜まっている、実体化した人間の精神そのものだろう。
宇宙の果てには実体化した人間の精神が存在する。
実体化した精神は長い年月をかけて宇宙の果てに流れ着き、そこで別の宇宙を生み出しているのかもしれない。
別な宇宙は人間の精神を元に造られる。
その宇宙ではまた人間のような知的生命体が生まれ、その意識・精神がまた実体化して宇宙の果てに溜まって別の宇宙を生み出す。
こうして宇宙は意識によって無限に生み出され続ける。
今旅をしているこの宇宙も、知性が生み出した無数の宇宙のうちのひとつに違いない。
宇宙を生み出した創造主がいるとすれば、それは知性、個々は我々と変わらない知性の集合体こそが創造主であろう。
私は創造主の存在は否定も肯定もしないが、いてもおかしくないし、いないかもしれない。
その宇宙の中にいる私にはその外のこと、つまり「あの世」のことは想像を絶する。
勝手に夢想する事はできても、それを証明することなど不可能だ。
道端の石ころが、どういう経路を通ってそこまで来たかを知る術がないのと同じである。
たぶんビッグバンと呼ばれる現象も「あの世」の知性の想像によるものかもしれない。
「爆発から宇宙が始まるのもいいな」などと誰かが考えたので、我々の宇宙がそれから始まったのかもしれない。
ならば私の想像も、他の宇宙を生んでいるのかもしれない。
毎晩夢を見るたびに新たな宇宙が生まれている。
眼が覚めると記憶からは消えてしまうが、この宇宙とは違う宇宙を生み出す。
それが無限に広がって、その宇宙の中から生まれた知性の見る夢がまた違う宇宙を生み出す。
宇宙の果てには何がある、宇宙の果てには自分がいる。
果ての向こうの別の宇宙を夢を見ながら創っている。
その自分に会いに行こう。
旅の目的がまた一つ増えた。