夢11
ジャングルの朝は、サルの鳴き声が合図で始まる。
それを聞いて鳥たちが鳴き出す。
虫たちは一晩中徹夜をしているらしく、もしかしたら眠ることをしないのかもしれない。
昨日の夜の空飛ぶ円盤は、あれから、いつの間にかに消えていていつどうやって消えたのか全く思い出せない。
体の一部に奇妙な傷跡があったら人体実験をされている証拠らしいが、そのようなものはとりあえず見当たらない。
きょうは、このジャングルの更なる奥地、そして何かを探して歩き続けることにする。
テントをたたんで出発の準備を済ませる。
するとテントを置いていた地面に小さな穴が開いているのに気が付いた。
昨日、テントを置く前にはこんな穴は無かったはずだ。
その穴は、ちょうどCDと同じくらいの大きさで、奥は何も見えない。
その穴を覗いていると、何とその穴に落ちてしまった。
どう考えても、人間の体が入るようには思えないが、どういうわけか落ちてしまった。
どれくらい落下しただろう。
何分も落ち続けていたが、やがて地面らしきところにふわりと着地した。
周りは真っ暗で何も見えなかったが、目が慣れてくると、周りがぼんやりと見えてきた。
そこは、全くの人工的な建造物で、最新のマンションの玄関のような感じだ。
地中なので、外に出る扉は無いが、上に通ずる穴が、出入り口の代わりのようでもある。
よく見ると、周りにも何人かの人間らしき生命体がいて、それぞれがそれぞれの行為をしている。
ポストに手紙を取りに来ているひと。
管理人と立ち話をしているひと。
掃除をしているひと。
そのほかにもボーっとしているひとも何人かいる。
何かを待っているかのようである。
すると、上の穴から、一人の元気のいい男性が落ちてきた。
「皆さん、お待たせしました、ただいまから物件案内を行います」
どうやら、このマンションらしき物件を案内する不動産屋らしい。
そして、ここにいる人間は、物件を見学に来た人たちらしい。
私もどうやらその一員に組み込まれているらしく、面白そうなので一緒について行ってみる事にした。
「それでは、エレベータにお乗りください」
マンション玄関の奥に大きなエレベータがあり、50人は乗り込める大きなものだ。
それに皆が乗り込み、エレベータで56階まで行く。
「ここがワンルームです」
不動産屋がその階の扉のひとつを開けた。
キッチン、バス、トイレ、一通りは付いているが、何やら妙に細長い。
幅は2メートルもなく、奥行きが6メートルくらいの細長いへやだ。
「この部屋は、エレベータを設置した時に出来た空きスペースを活用した部屋で家賃は月に2000円です」
たしかに安いが、寝返りを打つのも大変そうである。
それにしても、エレベータを設置した時の空きスペースと言うのがいまいちよくわからない。
しかし、その説明を聞いていた誰もが何の疑問も持っていないようだ。
「続きましては宝探しゲームです」
突然宝探しゲームが始まった。
この56階にある部屋の中のひとつになにか景品が隠されているらしく、それを制限時間内に探し出すともらえるらしい。
何が隠されているかはわからないが、これは面白い企画だ。
家の隅々まで見れるし、景品までもらえるかもしれないのだから、どこぞの不動産会社もやればいいのに、と思った。
皆が一斉に散らばって、おのおのが別々の部屋の中には言っていった。
わたしは、エレベータから一番遠い部屋を選んだ。
中は、極普通の部屋に見える。
ただ、唯一普通の部屋と違うのは、窓が無いという点である。
地中なので仕方が無いが、これは長く生活するうえでは結構大変だろうと思った。
しかし、不動産屋の説明によると、壁前面がディスプレイになっていて、あらゆる映像を映し出すことが出来るので圧迫感は無いという。
換気面でも、壁全面が空気を通すようになっていて、大草原の真ん中に立っているかのようであるという。
確かに何となく清清しい。
設定によっては風を吹かせることも出来、そよ風を部屋の中に通すことも出来る。
こんな部屋なら住んでもいいかな、そんな気持ちになった。
しかし今は景品である。
この部屋の中にあるかどうかは判らないが、とにかく部屋中を探し回る。
据付の箪笥などもあり、その中もくまなく調べてみるが、景品どころかゴミひとつない。
やはり無いのか、そうあきらめかけた時、壁の一部に微妙な歪みがあるのに気が付いた。
全体はマッ平らの壁だが、その部分だけ少しくぼんでいる。
その部分を触ってみると、その部分の壁が消えて、中に小さな棚が現れた。
そこに、「粗品」と書かれた箱が入っていた。
「おめでとうございます」
不動産屋が言った。
中身はと言うと、小さな人形だった。
人間では無く、二足歩行をする、人間のような外見を持った生き物の人形で、銀色の金属で出来ている。
非常に軽く、プラスチックよりも軽い感じだ。
その生物は、空を見上げている。
とてもよくできているので、家にでも持って帰って飾ろうと思う。
「今日の見学会はここまでです」
もしここに住みたければ、後日実連絡をくれとの事だ。
私は旅を続けるが、いずれ、こんなところに住むのも面白いかもしれない。
マンションの玄関まで行き、落ちてきた穴の真下に立つと、地上へと吸い出されるようにして一瞬で移動できた。
もしかしたら、地上にはジャングルしかないが、地下にはこのような感じで広大な都市が広がっているのかもしれない。
今度は地面に気をつけながらジャングルを歩いてみよう。