■TPPに舞い上がる人々 | ◎ 浮輪浮遊録 ◎

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★「では、どうするか」が、視点のブログです。/ ★ 更新:【 第2 水曜 】、他・随時更新。(2010年9月15日 開設)

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このたびのTPPを国難の如く捉えて、反対しない者に対し売国奴と言い放つ論者までおります。
そこで本日は、あらためて交渉とは何かという原点に立ち返って、TPPについて述べたいと思います。


◆危ないのはTPP以外の交渉も同じである。
交渉は、交渉当事国が最大限の成果を目指す以上、全ての交渉が油断ならないものになります。
ですから特にTPPを危険とすることに疑問を覚えます。
巷間TPPの、多岐に渡る交渉項目や「毒素条項」が懸念されておりますが、我が国の国益を守れば良いのです。
どのような条項であれ、「飢餓貿易」を選択しない限り「片務条項」はあり得ず、『 相互適用 』 すればよいだけの話です。
また紛争解決機関の“公平性”と“有効性”については、別途考慮すべき問題ではあります。


◆「TPPは実質的に日本と米国の二国間の問題だ」との論調について
数字の上ではそのとおりであるからこそ、大きな割合を持つ日本と米国の合意案件については、その他の諸国は無視できないことになります。
このことを、最大限に活用することも考慮すべきです。
例えば、日米両国が相互にISD条項を適用した場合は、これまで共産中国において我が国企業が「不利益」を被ることが多々ありましたが、将来的にその抑止へ向けての一助になることでしょう。


◆交渉の期限について
「交渉の期限に間に合わない」との論調があります。
交渉は一話完結では無く、攻守所を変えて果てしなく続くのです。
したがって、今回の“期限”に間に合わないからといって焦る必要は無く、後発参加による不利等が無き様強く要求し、それが通らなければ国益を損じてまで妥協する必要は無く、粘り強く交渉を継続すれば良いのです。
そもそも、
現在の加盟国だけの交渉自体妥結するか決裂するかは予断を許さないのです。
交渉とはそういうものです。
双方の妥協できる範囲で逓進するのが交渉で、極めて地味で気の長い話なのです。


◆交渉の目的について
交渉で我が国の目標があっても、相手がこれに乗ってくるという単純なものではないのです。相手には相手の目標があります。
あくまで相手の出方との兼ね合いになり、その折衝により変化していくものです。
そして、決裂はつきもので双方の妥協により小さな進展であっても貴重な成果となります。
そもそも、貿易関連のルールは常に改善の余地があるので、交渉に参加して少しでも改善を目指す方が得策です。


◆『メリットが無いから参加してはいけない』との論調について
これは、我が国が是正を求めたい分野があっても相手国が同じく『メリットが無いから参加しない』とした場合を考慮しておらず、危険な考え方といえます。
なお、双方とも相手があることなので、一方的に主張が通ることはあり得ず、決裂も通常のことに過ぎません。


◆何故交渉を行うのか
国際間において問題は尽きぬことは無く、その改善に終点は無いのです。
したがって、改善を行うためには交渉に参加し 『 橋頭保を築く 』 事が必要です。
だからこそ、当該官庁や財界はその改善に注力するのです。


◆交渉加盟後に、離脱してもなんら問題は無い。
交渉参加後は離脱できないとの論調がありますが、その根拠は何処にもありません。
そもそも、交渉において決裂や離脱など普通のことに過ぎません。
また、妥結が前提の交渉などあり得ません。


◆開発途上国の特定産業優遇の『飢餓貿易』による悪条件甘受を、我が国が踏襲するという極めて悪質な論調について
我が国が『飢餓貿易』を選択する必要はありません。
我が国は既に開かれている分野が多々あり、このことは相手国の譲歩を引き出す大きな強みを持っています。


◆国民皆保険が破壊される等の、国民生活が犠牲になる等の論調について
これこそ、国民皆保険制度は国家主権に絡む事なので国益を盾に譲れぬことなので、制度の維持のために安易な妥協はすべきでありません。
本件についても、負けを前提とする論調には、その背景に強い疑念を抱きます。
(なお蛇足ながら、現行の公的医療保険や公的年金はその継続的運用に困難がありますので、TPPの如何に関わらず税と社会保障の抜本的改革を急ぐ必要があります。なお一部に『改革は景気回復の後で』とする論調がありますが、改革の先送りは不都合の先送りでしかありません。)


◆TPPで農業は壊滅するという論調について
高齢化した零細農家が多数存在し次世代の担い手自体に事欠くのが実情です。
TPPの有無に関わらず、抜本的に改革することが急がれます。

なお、関税低減の適用期限については、現在の加盟国の中でも交渉の結果、国毎に対応が分れており一律一斉に適用される訳ではありません。
そして時間を稼ぎつつ、
関税低減により不利を強いられる農家には所得補償を行うのです。
農業補助金は、有効に使えば決して悪いものではありません。本来大規模化推進のため転業補償を行うべき兼業零細農家に至るまで“ばら撒く”からいけないのです。
農業補助政策と関税の低減は各国とも極めて難しく、一朝一夕にはいきません。
したがって、交渉の余地は十分にあります。粘り強く交渉しより良い条件を引き出せば良いのです。


◆終わりに
今回野田首相がISD条項について知らなかったことを指弾する論調があります。
確かに好ましいことではありませんが、地方から国政に至るまで保守革新を問わず、当該分野の「族議員」以外の政治家は概ねこのようなものです。
しかしながら、「役人」が機能しておる限り心配はいりません。
蛇足ながら、今回のTPPを比較的に正しく捉えておるのは、相も変わらず「役人」と「財界」だけだと筆者は思うのです。


後世の史家が今回のTPP騒動を検証すれば、TPP反対派が国家主権を無視してまで負けを前提として語った事を不思議に思う事でしょう。
このように国際間において、『最初に脅すだけで良い』との誤解を与えることこそ、最大の損失であるとともに、重大な利敵行為なのです。


前述したとおり、交渉は形を変えて延々と続きます。
このたびのTPP交渉“騒動”よって、政治家や評論家等の“偽物”が鮮明になったことは喜ばしいことではありました。

特に、国益を守る立場にありながら『負けを前提にTPPを語る』政治家には今後とも注意が必要という思いを強くした次第です。


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