放射性物質で汚染された牛肉や野菜が問題になっている.確かに,放射線で汚染されているという牛肉や野菜をあえて食べたいとは思わないが,実際のところ,科学的に見てどの程度の問題なのだろうか?日経メディカルにそれに対して科学的に答える面白い記事が載っていた.以下,要約.

 現在,被曝線量と固形癌発生の疫学調査として最も信頼性が高いとされているのは,長崎と広島の原爆被爆者を対象としたものである.これによると1Svの被爆線量で固形癌の相対過剰リスクは0.5(相対リスクは1.5倍)となり,被爆線量とと相対過剰リスクは直線的な関係を示した.そうすると100mSvあたりでは0.05となる.この0.05という数字を30歳日本人の生涯癌死亡率である20%に当てはめると,1%の増加になる.ただ,これは一瞬で多量に受けた被爆を基にしたデータから算出しており,慢性的に少量の被爆を受ける場合には適応できない.国際放射線防護委員会では慢性的の少量の被爆した場合はリスクは1/2になると仮定し,「100mSvの放射線を累積で緩徐に受けた場合に生涯癌死亡リスクが0.5%増える」と算出した.一方で,被爆線量と相対リスクが直線関係にあることが示されているのは100mSvを越えるような高線量の場合であって,これより少量の被爆では発癌率が上昇すると言うデータはない.例えば,世界的に見て高線量地域であるイランのラムサールでは10mSv/年の被爆がある(日本は1.25mSv/年)が,癌死亡リスク上昇などの健康影響は確認されていない.現在,日本で問題となっている食品などについては,判明した中で最高レベルである4000Bq/kgの牛肉を年間10kg食べると0.52mSv,規制値である200Bq/lの水を1日2L,1年間飲み続けると1.9mSv,規制値である500Bq/kgの野菜を年間100kg食べると0.65mSvの被爆である.上記のデータに基づけば,いずれも実質的にはほぼ問題ないレベルであることがわかる.

参考:放射線被ばくの早見図(放射線医学総合研究所)

 様々なリスクに曝されて僕たちは生きている.固形癌発生の相対リスクは喫煙で1.5,大量飲酒で1.5,肥満で1.2,高塩分食で1.1,野菜不足で1.06と報告されている.つまり,わずかに放射線で汚染された牛肉よりも,タバコやカロリー摂り過ぎの方がよっぽど健康に悪いってこと.ふと,Googleでガイガーカウンターを検索してみたら,販売サイトが山ほど出てきた.「ガイガーカウンターは楽天」って...「被爆,汚染」という文字が現在の日本人のセンチメントに影響を与えるのはやむを得ないし,それを抑えるどころか,火に油を注ぐ無能な政府には失望させられるが,もう一度立ち止まって冷静になってみる必要がありそうだ.

電脳医師の研究日記