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マターリして行ってね⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン

三条通りの一角にあるその喫茶店から、少し離れたところにある


京都市役所前のベンチで僕は斉藤を待つことにした。


喫茶店は暖房が効いていてとても暖かかった為、外に出るとその気温差に


思わず身震いする。突き刺さるような冷気が、火照った顔を


刺激し、ぱちぱちと音を立てるかのようだ。


僕は、ベンチに腰掛け、しばらくの間、ぼんやりと空を眺めていた。


そういえば、昔、こんな事があった。


確か、小学校4年生くらいの時だったと思う。


僕とその男の子、たぶん仲がよかった友達だったと思うが、


で公園で激しい喧嘩をしたことがあった。


喧嘩の理由は、とてもくだらない内容で、確か、ゲームの勝敗に関する


ものだったはずである。


どっちが勝った、負けた、ということで言い争いになり、最初は口論だった


けれど、時間の経過とともに、それはエスカレートしていった。


最初に手を出したのは、その子だったように思うが、


僕の左頬に彼の右ストレートが炸裂した。


幼い頃から争いごとを好まない穏やかな性格だった僕だけれど、


この時ばかりはさすがに頭に来て、彼の左太ももに蹴りをお見舞いした。


なんだよ、やるのかよ。そっちがその気ならやってやるよ。


ということで、齢10歳の男同士の本気の戦いが幕を開けた。


もう喧嘩の理由なんてどうでもよくて、互いのプライドをかけた


根性戦みたいになっていて、僕もその子も、負けてたまるもんかと


がむしゃらに闘った。


数十分後、結局、その喧嘩は互いのスタミナ切れという、思いがけない形で


幕を閉じることとなった。


ほぼ同時に二人して地面に倒れこんで、勝利とも敗北ともいえない微妙な


結末に顔を見合わせ、思わず吹き出してしまった。


「変な顔」「うるせぇよ」


そこでまた笑い合い、仰向けになったまま空を見上げる形になった。


真っ青なキャンパスには白い雲なんて一つもなくて、


雲のない空ってこんな風に見えるんだ、と僕は妙な感動を覚えた。


そのままじっと僕は空を見つめていた。


隣を見ると、その子も何も言わず同じように空を見上げていた。


きっと同じことを感じていたのだろう。


そんなこともあって、僕には時折、空を見上げる習慣が出来た。


日によってまったく異なる表情を見せてくれる空は、見飽きるということが


なく、いつ見ても新鮮だった。


一人でいる時や、時間を持て余した時などは、本や音楽に頼るよりも


こうして空に頼ることの方が多く、お金のかからない建設的な方法だと


僕は思っている。


「あの…」


だから、それが自分に向けられている声であることにしばらく気付かなかった。


「すいません…」


彼女の何度目かの応答により、僕はようやく自分が呼ばれていることに


気付いた。


「え、あ、はい」と思わず間抜けな声を出してしまう。


見ると、先程の喫茶店で相席をしていた女性だった。


「すいません、これ忘れ物だと思うんですけど…」


と遠慮がちに差し出された彼女の手のひらには、指輪が一つ


転がっていて、その指輪には見覚えがあった。


「あ…由里子の…」


その指輪は去年、僕が由里子にプレゼントしたものだった。


きらりとルビーが光るシンプルなデザインで、由里子には


こういった指輪が似合うだろうと、旅行先で衝動買いしたものだった。


婚約指輪としては少々安すぎる値段だったが、衝動買いするには


少々高い値段で、かなり悩んだけれど、彼女の喜ぶ顔見たさに


購入を決意した思い出の品だった。


おそらく、由里子が、先程の別れ話の最中に外して帰って行ったのだろう。


「すいません。わざわざありがとうございます」


別に捨てておいてもらってもよかったんですよ、とは言えず、彼女から


指輪を受け取った。


またお前のところに戻ってくるなんて、と指輪も思っているに違いない。


「それじゃあ私はこれで」


その場から去ろうとする彼女を引き止めておきたかったから、だとか、


もう少し彼女と話をしてみたかったからという理由からではないのだけれど、


自然と彼女を呼び止める形で、僕は声を掛けていた。


「空って好きですか?」


彼女は質問の真意をはかりかねる様子で、じっと僕を見つめていたが、


やがて、ふっと笑顔になり、


「えぇ、好きですよ」


と答えてくれた。


その笑顔は、僕の心に深く突き刺さり、もやもやとした気持ちをときほぐすかの


様に、じんわりと広がっていった。


もしこの場に、僕以外の男が大勢いたら、一瞬で虜になっていたに違いない。


「ありがとう」


彼女に聞こえるか聞こえないか、ぎりぎりの所で僕は去ってゆく彼女の背中に


向けて、そう言った。


ふと、空を見上げると、さっきまで雲に覆われていた空は真っ青な青一色の


空へと変わっていた。


その空と彼女の笑顔がなぜか重なって見え、僕はしばらくの間、立ったまま


空を眺め続けた。





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