いきなり脳内に映像が飛び込んで来たので、俺はうわっと漏らしてしまった。
一体何が起こってるんだ?
風太が楽しそうに走っている。
この映像は俺の願望の産物か?
それとも――――――?
俺が脳に浮かぶ映像について思考を掘り下げようとしたその時、
「お兄ちゃん大丈夫?」
としずかが聞いてきた。
俺がうわっとか言うもんだから心配してくれたんだろう。
そうだな、今は俺のことより風太が優先だな。
俺は風太に意識を戻した。
場の空気が再び張り詰め、
窓からの風だけがカーテンを揺らしビューと音を立てる。
俺は、意識を集中し、脳内のイメージが風太に伝わるように祈った。
歩けるイメージがわけば風太も歩けるに違いないと考えたからだ。
伝われ。
伝われ。
イメージよ伝われ!
「伝われーーー!!」
俺は自然と叫んでいた。
クールな性格からしたら信じられないことである。
熱くなりすぎたかな。
風太の足にあてた両手を離し見てみるとじわぁと汗をかいていた。
俺は風太の顔を見た。
呆然とした様子で壁を見ている。
「いきなり叫んだからびっくりしたか?
けどこれで超能力は終了だ。もう歩けるぞ」
自称超能力者の俺は超能力の完了を告げた。
俺が笑ったことで場の空気が少し和む。
やがて、三人が見守る中風太が口を開いた。
「お兄ちゃん、もしかして本当に超能力者なの?
俺歩けるような気がするよ。」
「本当かっ?!じゃあお兄ちゃんが支えるから立ってみようか!」
思いが通じたのか?
俺は風太の発言に興奮し立ち上がった。
そして風太の手をとり、もう一方の手を背中に回し風太が立つのをサポートした。
「よしっ、行くよ。」
風太がゆっくりと右足を床におろす。
そんなに震えてはいない。
片足をつけるのは余裕そうだ。
着いた!
いいぞ、あとは左足だけだ。
「がんばって!!」
ハナちゃんとしずかが声援を送る。
「おうっ!」
風太が威勢よく答える。
本当は怖くて仕方ないのに、立派なやつだ。
つないだ手から風太の震えが伝わってくる。
俺は、背中に回していた手を戻し、両手とも風太の手をとった。
風太が左足をおろす。
右足の時よりもゆっくりと。
立てる、立てるぞ!
俺は心の中で叫んだ。
風太のつま先が床に着く。
一同固唾を飲んで見守る。
かかとがゆっくりと地面についていく。
「やったー!」
ハナちゃんたちの喚起の声が聞こえる。
両足が地面に着いた。
風太は俺の支えのもとベッドの横に立つことができた。
あとは手を離し自力で立つだけだ。
「風太、手を離すぞ!大丈夫か?」
「う、うんっ!」
風太が返事をする。
「よっし、離すぞ!
大丈夫!風太は立てるからな!」
俺は気合を込めようと風太の手を強く握り、そして離した。
結果、風太は一人で立つことができた。
自分でも立てたことに驚いているようで、暫くじっと自分の足を見ていた。
よくやったぞ、風太。
俺は次にハナちゃんに目をやった。
ハナちゃんは嬉し涙をこぼしまくっている。
ハナちゃんもよく頑張ったな。
「さて、じゃあ俺たちは帰ろうか」
風太たちに感謝の言葉を告げられ、いくらか話をした後、
俺たちは病室へ戻ることにした。
「それじゃあ、二人とも元気でな!」
「おうっ、お兄ちゃんたちありがとう!」
風太が立って見送ってくれた。
帰り道、俺は、最後に風太たちと話したことを思い出していた。
風太は、俺の超能力のおかげで
自分が歩いていた時のことを思い出したと言っていた。
これで俺を本当の超能力者と思ったかもな。
ハナちゃんは、自分はお医者さんになると言っていた。
風太がまたケガしても今度は自分で治すだって。
いいもの見せてもらったな。
太ももやらをケガして歩きづらかったはずだが、
廊下を歩く俺の足取りは随分と軽くなっていた。
「あっ、母さんが心配してるんじゃないか?
トイレ行くとしか言ってなかったから。
しずか、急ぐぞー!」
「おー!!」
俺としずかは幸せな気持ちで病室へと戻っていった。