それはそう、今日みたいに寒い日のことでした。
私はいつものように家から会社までの道を歩いていました。
会社までは歩いて20分もかかるので私は音楽を聴いています。
この日もいつものように大好きなバラードを聴いていました。
いつもの道をいつもの音楽と一緒に。
この日もいつもの通勤をするつもりでした。
しかし、いつもの通勤と一つだけ違うことがありました。
その日、私は奇妙な男を見たのです。
私は普段から周りを気にする方ではありません。
音楽を聴いていますので他人に注意を払っていないのです。
不注意すぎて上司が横を通っても気づかないくらいです。
しかしそんな私が気づいてしまうほど、その男の出で立ちは異様だったのです。
赤いニット帽をかぶり、赤いパーカー、靴もパンツも赤でした。
全身が赤なものですから意識をとられるのも無理はありませんでした。
センスの悪い男だな。
私がその男に抱いた印象はそれだけでした。
奇妙だとは思いましたが、他人に無頓着な私はそれ以上男のことを気にせず、
イヤホンに注意を戻し歩を進めました。
目の前には男がいます。
ほとんどの人は気味悪がって男を避けて通ります。
けれど私は男を避けず真っ直ぐに歩きました。
他人が立っているからといって自分の進路を変えたくない、
と言う信念があったからです。
みんなが男を避けるから空いていて歩きやすいじゃないか、
寧ろラッキーだと思いながら私は男の脇を通りました。
その時です。
男から激しい視線が送られてくるのを私は感じました。
普段の私ならそれでも気にせず歩きます。
しかし異様な男に異様な視線を送られていることが気になって、
その時の私は男の方を振り向いてしまいました。
すると、
ドーン!!
真っ赤に充血した目が私をするどく睨みつけていました。
それに恐怖したのか私の足がカタカタと震えます。
今すぐこの場を去りたい。
私は思いました。
しかし、男が私の腕をガッと掴み私は逃げられなくなってしまいました。
私は気がおかしくなりそうでした。
そんな私に男は語りかけます。
「オレがなぜ赤い格好をしているかわかるか?」
音楽を聴いているので男の声は聞こえません。
しかしあえてゆっくり話す男の口元からそう言っていることは理解できました。
私は恐ろしくなってウワーッと叫びました。
すると体に力が入ったのか、男から腕をはらうことができ
その場から一目散に逃げることができました。
助かった。
私は会社に逃げ込み、
やっと自分の安全が確保されたのだと安心することができました。
会社の入り口ではセキュリティーがしっかりしているので、
部外者であるあの男は入ってこれないとわかっていたからです。
男が私を追ってきたかどうかなんてわかりません。
ただこの日私はそれ以上男の脅威を感じることなく、
いつものように仕事をすることができました。
そして夜になりました。
残業を追え、会社をでたのは23時でした。
夜風が身にしみるので私はコートをギュッと肌に密着させて帰りました。
音楽を聴くと歩くのが遅くなるので帰り道はいつも音楽は聴きません。
駆け足で帰ると、私は今朝赤い男と遭遇した地点にさしかかりました。
その時朝のことが鮮明に思い出されましたが男の姿はもちろんなく、
私はそれ以上気にすることなく家路に着きました。
そして家に着き、扉を開けると、
「これが答えだ」
私は男が赤い格好をしている理由を知りました。