ブンケイと牛若丸(29) | ウカの小説掲示板(仮)

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マターリして行ってね⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン

マジかよ、とあまりの急展開に俺が動揺している間にも、朝霧渚は、


あきらかな敵意とナイフを持ち、こちらに向かってきていた。


俺はわざとベッドからずり落ち、渚ちゃんのナイフをかろじてかわすと、


すぐさま態勢を立て直し、落ちていた本を盾に(ハードカバーのため、


ナイフくらいなら防げるだろう)、彼女へと向き直った。


「一体、何の冗談だよ。そんなもん持ってたら危ないだろうが」


俺は、説得できるとも思っていなかったが、一応、言葉をかけてみる。


「うるさい。秘密を知られたからには、あんたにもそれ相応のリスクを


 負ってもらわなきゃ」


一体全体何がどうなっているのか。


秘密?俺が薫ちゃんから聞いた渚ちゃん本人に関する情報だろうか。


だとしても、俺が得た情報は断片的だし、第一記憶で読み取った情報については


彼女は知る術がない。


俺が思考を巡らせていると、ナイフを持ち直した渚ちゃんがタイミングを見計らうよう


に、こちらを見ながらじりじりと間合いをつめてくる。


気付くと、大して動いていないのに、俺の寝間着は汗でしっとりと湿っていた。


たかが女性が果物ナイフを振り回しているだけじゃないかと思うだろうが、


渚ちゃんには覚悟したような鬼気迫る迫力があり、その様子が何が起こるか


分からない得体の知れない異様な雰囲気作りに一役買っていて、迂闊に手を


出せない。


「ニュートンって本当はりんごを見てないんだよ?」


俺はそう言いながら、持っていた本をぺらぺらとめくる。


一瞬、彼女が「え?」という顔つきになったのを俺は見逃さなかった。


すぐさま持っていた本を彼女の顔面目掛けて放り投げ、そのままダッシュで


渚ちゃんの足元めがけてタックルをする。


隙がないのなら自ら生み出せばいい。


「くっ…!」


本が顔に当たり、渚ちゃんの口から漏れた音に続いて、


すばやく俺が彼女にタックルを決めた。


渚ちゃん、俺の順に折り重なるように、地面に倒れこむと、俺は彼女の持つ


ナイフをすかさず取り上げ、窓際の方へすべり投げた。


がっちりと両手と脚をロックし、さらにマウントポジションを取っているので、


渚ちゃんはどうみてもこの状況をひっくり返せそうにはない。


しばらくじたばたと暴れていたが、やがて観念したかのように、


あきらめて動かなくなった。


ようやく、俺も一息つき、胸を撫で下ろす。


まだ病み上がり(性格には病み中)の中で、


これだけの修羅場はさすがに体力的にも精神的にもきつかった。


本当にやれやれだ。


俺がふと気を抜いた瞬間、握っていた彼女の手首を介して、一気に


脳内へと膨大な量の情報が流れ込んできた。


まずい、と思った瞬間には、すでに遅かった。


おそらく、無意識のうちにかけているロックを外してしまい、彼女の情報を


取り込もうとしたのだろう。


すぐに情報流入をストップさせたおかげでクラッシュするまではいかなかったが、


それでもかなりの情報が入り、脳内で再生される。


目の前がブラックアウトした。





――――――――――――――――――――――


最初は靄がかかったように真っ白だった映像も、徐々に霧がはれるかのように


鮮明になっていく。


ここは病室だろうか。


ベッドの上に、一人の少女が寝ている。体には無数の機器が取り付けられ、


さながらロボットの整備のような光景だ。


よく見ると、その少女には見覚えがあった。薫ちゃんだ。


今と顔つきがさほど変わっていないので、おそらく少し前の時期であると


思われる。


しばらくすると、病室に一人の女の子が入ってきた。


彼女の顔はその病室で寝ている女の子と瓜二つで、渚ちゃんであることは


疑う余地はなかった。


渚ちゃんは、おもむろにベッドのそばへと近づくと、たっぷりと時間を置いてから、


薫ちゃんにつながれている機器の一つのプラグを抜いた。


それは生命に直結するようなものだったのか、すぐに薫ちゃんの表情が苦悶へと


変わる。


だが渚ちゃんはそれを直すどころか、次々と機器をいじり出し、本来あるべき


状態とかけ離れた状態にしていく。


こちらからでは渚ちゃんの表情を見ることは出来ないが、いったい彼女がどんな


心境でこの作業を行っていたのか、俺には到底想像できなかった。


しばらくして気が済んだのか、彼女はまた機器をいじると、元の状態に戻し、


薫ちゃんの方へは一瞥もくれないで、そのまま病室を後にした。


まるで、仕事を与えられた工場員が作業を終えて帰っていく時のような、


無機質な空気感がそこにはあった。


そして映像はふいに途切れ、次の場面へとシフトしていった…


――――――――――――――――――――――




はっと気がついた時には、目の前は俺がいる病室の見慣れた風景へと


変わっていた。時間にするとどれくらいだろうか。


感覚的にはかなり長く感じたのだが、


実際はそれほど時間は経っていないのかもしれない。


俺の足元では渚ちゃんが怪訝な様子で、俺の方を見ていた。


俺が情報の脳内再生を行っている間、他人からはどう見えるのか、激しく


気になった。今度しずかに付き合ってもらって検証するしかない。


「できるなら手荒な真似はしたくなんだけどね」


そう言いながら、俺は彼女の両手首をひねり上げながら起き上がり、


同時に渚ちゃんも起きるよう促す。


適当なロープが見当たらなかったので、代わりにベッドのシーツで


両手をしばり、おかしな行動に出られないようにさせてもらう。


さすがに観念したのだろう、大人しく俺の行動に従う様は、まるで


戦に負けた兵士そのもののように見えた。


俺の頭には一つの答えが導き出されていた。


渚ちゃんから得た情報と、薫ちゃんから得た情報とをつなぎ合わせて


出されたので、


かなり正当性の高い答えであることは間違いないようにみえた。


だが、もしこれが真実なら…。


なんて残酷なんだ。


俺は、自分の得た答えに絶対の自信を持っていながらも、心のどこか


ではそれを否定して欲しいと願ってもいた。


そんな複雑な俺の心境を知ってか知らずか、渚ちゃんは俺に向かって


不敵な笑みを見せた。


「なんか、あんた普通の人間じゃないね。


 わたしの過去についても知ってるみたいだし。


 何者なんだい」


俺が真相を知ったのは渚ちゃんからの情報があったからで、そこは


誤解しているようだったが、説明するのも面倒なので(第一、普通に話した


ところでおいそれと信用してもらえる類の話ではないので)それには


答えないでおいた。


「そうだね。とりあえず、異能の力がある、とだけ言っておこうか」


どこから説明するのが正しいのか分からなかったが、二人だけで事を


進めるのはおかしいように思えたので、


「それより、もう一人君に会って欲しい人がいるんだ」


と、俺は病室の虚空を指差した。


渚ちゃんと俺の会話は全て彼女の耳には聞こえているだろうし、


状況は把握しているはずだった。姿が見えないかもしれない、


という考えは全く浮かばず、当然のように渚ちゃんにも見える、そんな


風に感じていた。


「は?」というような表情を渚ちゃんは見せながら、明らかに不愉快になった。


俺の言葉で状況を察したのか、すぐに俺の隣に薫ちゃんが具現化して


登場する。


渚ちゃんの呆気にとられた表情で、彼女も見えているということはすぐに


分かった。


にこりとした笑みを浮かべながらの薫ちゃんと、恐怖に取り付かれたような


表情の渚ちゃん。


姿かたちがそっくりな姉妹だが、初めて、


二人は案外似ていないかもしれない、そう思った。







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