日本から届いた荷物を気の短い配達員に持ち帰られてしまった私は、再配達の依頼をした。


そして配達予定の月曜日
私は荷物を確実に受け取るために
わざわざ仕事を休んで自宅で待機していた。

しかし、
お昼を過ぎてもなかなか荷物が届かない

嫌な予感がした私はオンラインで配達記録を調べてみた。

するとそこには
at post office
の文字が。

そう
今日配達予定の荷物は
最寄りの郵便局に放置されたままだったのである。

怒りに任せてカスタマーセンターに電話をしようかと思ったが、「翌日以降の再配達しか出来ない」の一点張りになることは目に見えている

どうせ仕事を休んで家にいるのである。
私は最寄りの郵便局に出向くこととした。


郵便局は混んでいた。

イギリスの郵便局員はわざとやっているのかと思うほどゆっくりと客を捌いていくため、郵便局は常に長蛇の列ができている。


私は忍耐強く待った。

列に並んでいる間に辺りを見回すと、カウンターの後ろに一つのダンボール箱を見つけた。


私は確信した

アレが私の荷物であると。


遠目からでも分かる。

そこにはカタカナで
コーンフレークの文字



そして
Saturday deliveryのシール



やっと自分の番になったので、
窓口の女性に荷物番号を伝える。

その女性はまるで美術品を鑑賞するかのようにじっくりと時間をかけてと一つ一つの荷物のタグを確認していった。

そして件のダンボール箱を手に取り、
舐め回す様に箱を見た後に、
手ぶらで私の元に戻って来たのである。

そして奴はこう言った


残念ながらここには荷物はありません


私は自分の耳を疑った。
同時にこの女の頭を疑った


だが私は怒らなかった。
私は謙虚な日本人である
そう頭の中で唱え、
自らの心を落ち着かせた。


私はダンボール箱を指さして
「あの箱をもう一度確認して下さい」
と伝えた。

もう一度じっくりと時間をかけてダンボール箱を確認する女。

やっとその箱を手にして戻って来た女は
私にこう言った。

「見つけたわ。名前が2つ書いてあったから最初は分からなかったわ」


お前はToとFromの違いも分からないのか?
と心の中で悪態を吐きながら
私は笑顔で
「thank you」と言い
荷物を受け取った。


家に帰った後に
一連の出来事についてクレームを入れようかとも考えたが
辞めておいた。

どうせまた不愉快な思いをするだけである。


私もイギリスに来て少しは学習したのである。

『イギリスの郵便局員は酷すぎる』
そんな風に考えるのは辞めることにした

彼らが悪いのではない

日本の郵便局員、クロネコヤマトや佐川急便の配達員のサービスが良すぎるのだ。
日本の宅配サービスは世界一なのである。


そう
悪いのはイギリスの郵便局員ではない、
最高のサービスに慣れ過ぎている私が悪いのだ


気付いたらもう年の瀬である。
来年は広い心でイライラせずに過ごそう
イギリスの文化を受け入れよう
そう心に誓う私であった。