白い髭(コレが防寒対策になる)で鼻から下を覆い、赤いサンタクロースの格好で道路工事の交通誘導をする!
いわゆる〝片側交互通行〟だが、誘導し通り過ぎるクルマの助手席から、まるで遊園地の着ぐるみキャラクターに向かってやるように手を振られる。
だから、ボクは手を振り返す。
……サンタクロースだから。
長い時間立っていると、この格好も寒さ対策にはアリだな!…とか感心しながらトイレに行きたくなる。
いつもコンビニのトイレを借りるのだが、この格好はなかなかトイレが不便! ひと手間ふた手間ぶん小便器のまえで漏れそうになるのを我慢して、
ようやく
「ハぁ~…」と気持ちが楽になる。
……。
そしてまた…(ひと手間ふた手間)…!
それから鏡で自分の姿を確かめる。顎まで下げていた白いネックウォーマーの髭を鼻まで戻すと馬鹿げた現実に〝ボク〟が顔を出す。
(…なんで警備員がサンタなんだ?)
目が潤んで、ちょっと混乱して、手を洗わずトイレを出る。
何も買わずにはコンビにを出るほど図々しくないので温かいココアドリンクを選んでそれをレジカウンターに置くと、
サンタの赤い〝帽子〟を被った店員がそれを手に、
「157円になります!」
「えっ、ナナ?」
棚には150円と表示されていた。だからボクの手には150円しかない。残りの小銭はサンタ服の下、自前のズボンの後ろポケットの財布の中……、
(マジ!)
「…ちょ、ちょっと待ってね、」
ボクはトイレでやったことをレジカウンター前で繰り返す。(でも…出すのはサイフ!)
(?……)と店員。
ゴソゴソっと分厚い服の下の自分の本体を探すサンタクロース。ズボンの後ろポケットになかなか手が届かない。
「……」と店員のサンタ、無表情でやり過ごす。
……。
なんとか〝7円〟を10円で払うと店員がお釣り渡す。
「メリークリスマス!」
「あ、メリークリスマス!」
ボクは下げたズボンをズルズル腰で安定させて、上着の装いにひと手間掛ける。それから扉に手を掛け外気を感じてふたたび仕事にもどる。
……プレゼントを渡すんじゃなくて〝交通誘導〟の!
(ボクに聖夜は関係無い)!