教室には黒板がある。(なぜか〝黒〟ではないが誰も〝緑板〟とは言わない! …そんなことはどうでもいい)
黒板は持ち帰れないが、ポキリと折れ粉受けに残された白いチョークは持ち帰ってもいい。(嫌いな授業に耐えたご褒美としてそういう〝取引〟が芽生えるのは、小学生の男の子にはごく自然なこと)
で、先生がポキっと折ってしまった瞬間をボクは逃がさない。
(モライましたぁ~!)
下校途中にポケットの中から取り出し手のひらで転がし、指で摘んで眺める。指先が白く汚れる。半ズボンの尻に擦り取るが指の白は薄くなったものの汚れがさらにズボンに移った…、パンパンとズボンを叩いてももう遅い。
「なんか〝使い道〟あンのか? そんなモン!」 と友だち、価値がまるで分かってない。
「……」と考えるボク、「なんかないかなぁ~」と使い道など想定してなかったことに気づく。
そこはでも小学生、大人には思いつかないアイディアがすぐ浮かぶ。
「ここに死体を書こうぜ!」
「はあ?」と友だち、ちょっと鈍い。
「ドラマで床やアスファルトに書いてあるじゃん、事件事故後の〝現場〟に死人の最期を縁取った〝アレ〟!」
ボクは彼の目の前に〝白いチョーク〟を掲げる。
「…オマエ最高!」と友だち、「でも…オレ死体イヤだよ!」
「オレが道に寝る!」とボク「だから本物らしくちゃんと書けよ!」
「オーケイ!」
ボクは白いチョークを友だちに渡して邪魔なランドセルを脇に放り投げる。
そのまま寝転んで、それから関節を奇妙に捻って首を痛くなるほど逆へ折る。『ジョジョも奇妙な冒険』のような心を失った眼をして出来る限り全身の力を抜くと…なぜか口を開いてボクは舌をベロンと出した。
「おい、オメェ~ほんとうに死んでんじゃね~よ!」と友だち。
「早くしろよオメェ~」と死体、「車が来たら危ねぇ~じゃねぇかよ!」
「オウ、動くなよ死体!」
「……」
と死体。
つづく