僕は与えられた〝16分〟で彼女に話しかける。
「トレッキングには僕も興味があるんですけど」 と僕は〝お尻〟に話しかけ、「でも周りに誰もいなくて行きたくても行けないんですよ」 と不憫な状況を訴える。
「なら私がいっしょに行きましょうか?」 とお尻に代わって顔がようやく僕の話し相手に出てくる。
「本当ですか?」 と喜ぶ僕に、
「嘘です!」 と女、
初対面にしては大胆なコトをする。
「……」 と僕、(コイツ、なんか怪しいぞ!)
僕は、初対面の僕をからかう彼女の意図が読めないで困惑する! そして彼女の目をみて、しっかり読もうとする。
それに対して彼女は、まるでひとつ先のコトを知っているような安心した笑顔を浮かべ、その目は〝答えはすぐに見つかる〟と僕に伝えているようだった。
「お前は!」 僕は確信した。 「なんなんだいったい!」
「お久しぶり!」
「いや、…そうでもない!」
たしか2、3週間まえにも会った。あの時は人間の女じゃなくべつの〝モノ〟だったけど。
「相変わらずだね!」
「何が?」
女は笑いを堪える。
「パンツのラインは見つかった?」
「……」(うわ!)
「なんで〝線〟を探すのか、フシギでしょうがなかった!」
「あ、そ!」
早朝の5時に僕は思いっきり笑われている。
「パンツの線じゃなく、パンツ見せようか?」
「いや」と僕、「お前の見てもしょうがない!」
「元気そうで良かった」 と女、「触ってきたらもう2度と現れないつもりだった、合格!」
「触ればよかった!」
「それがキミには出来ない!」
そしてまた確信的な〝笑み〟を浮かべる。それが僕の癪に障る。
「で、山登りが趣味なんですか、今度は?」
「付き合いでそういうことになったのよ、この子がね!」
〝この子〟とは、この〝肉体〟の本来の持ち主のこと。僕が話しているのは別のモノ! 正確には僕にも分らないがお化けとか、そういう類のものではない(……らしい)。
うまく説明できないことが世の中には沢山ある。例えば〝iPhone〟!
「どう? ケイタイは使えるようになった? 神様!」 (そう、まえに会ったときは〝神様〟だった)
「あ~」と(今は登山服の)女、宿題をやったのかと聞かれた子供のように身の置き場がない様子で「ムリかもしれない!」
「は?」
「仕組みを理解しようと頑張ってみたけど…」 と女は首を振る。「もう限界!」
……。
電車が来た。