自分を傷つけることで、
他の誰かにダメージを与えたい。
そう思っているのか、
考えてはいないけど、
自然とそういう方向に走るのか、
個人によって道は違うと思う。
僕は
『不幸や災いは、
それを乗り越えれる人にしか訪れない』
という言葉が、
およそ一部の成功者だけが信じている、
迷信だと思っています。
年間10万人近い人が、
自らの命を絶つ昨今、
それが事実なら、
乗り越えられるはずです。
でも知ってます。
たくさんの子ども達の苦痛の声を、
10年以上聞いてきた僕は、
人の力では、
到底乗り越えられない不幸や災いは存在し、
得てしてそれは、
乗り越えたくても乗り越え方もわからない、
まだ大人になりきれない子ども達に降りかかる可能性が高いこと。
アサミが言ってました。
彼女はリスカを2年続けて、
ボディーカットに発展し、
気づけば自分で首を絞めて、
ギリギリのところで力を緩めるという、
危ない遊びに行き着きました。
ジサツゲームと言われる遊びです。
酸素の供給量が減った脳が、
その苦しみを忘れるために、
脳内麻薬と言われる物質を多量に放出し、
クスリでとんだような感覚を得るという、
10年程前にアメリカで流行った危ない遊び。
アサミは言います。
『どうやって抜け出すの?
私の親父、
警察の偉い人なんだよ?
どこに逃げたって、
すぐに見つかるんだから、
どうしようもないよ』
彼女の家系は、
代々警察という家系で、
男女問わずに警察官になるのが当たり前という家。
そこに、
ダンサーになりたい夢を持ったアサミは生まれ、
やりたい事もできず、
反発して生きていました。
その反発もエスカレートし、
彼女を縛るルールもエスカレートしました。
気づけば、
警察官にならないお前は、
家の恥だと言われ、
生んだ事を後悔してると母は言ったそうです。
リスカが始まったのは中学1年の頃。
そして現在、
高校中退。
首に縄らしきものの痕があり、
ジサツゲームをしている、
もしくはSMの趣味があると思われ、
学校に行けなくなりました。
両親はいよいよ、
彼女を施設に入れる、
もしくは出家させる覚悟をし、
彼女をさらに縛りました。
他でもない。
単にダンサーになりたいという夢を抱いただけで、
こうなったんですね。
アサミから相談を受け、
僕は両親と根気よく話し合い続けました。
結果、
彼女はダンサーの道を歩める事になったけど、
彼女の
『生んだ事を後悔してる』
と言われた心の傷は、
いつまでも癒されません。
僕はアサミの相談に今でも乗っています。
ご両親は、
直接ではなく、
僕を通じてアサミとコンタクトを取ろうとし、
自分達の言った言葉に後悔しています。
乗り越えられる災いであるなら、
アサミは今後どうなるんでしょう。
リスカは依存症です。
病気を患ったんです。
それも長年放置されたため、
かなりの病み具合です。
40歳?
50歳?
いつ乗り越えられるんでしょう。
両親が
『俺らが間違ってた』
と言えば、
全てがチャラになるんでしょうか。
一度傷ついた心は、
一秒ごとに傷を深くしていきます。
時間が解決するのは、
互いの精神状態が安定しているからで、
アサミは病んでしまっています。
乗り越えられる者にしか訪れない?
僕はそうじゃない事を、
たくさん知っている。
アサミの相談に、
僕は根気よく乗っていき、
治療と家族関係の改善のため、
僕にできる事はします。
でも必要な全てを僕一人ではできない。
だからこそ、
僕は間違った言葉につけたしたい。
『不幸や災いは、
出会い、つながりによって、
乗り越えられないものから、
乗り越えなくて良いものに変わる』
人間一人の力なんて脆弱なものです。
だから誰かとつながっていくんです。
そこに光明はさします。
アサミのこれからに必要なのは、
僕の相談じゃなく、
それを通じてたくさんの人と出会い、
つながり、
乗り越えなくてもいい事なんだと気づく事だと思います。