中高生や青少年のメール相談をしていると、

中には特殊な相談事もあります。



お金にまつわる話や、

異性との関係に関わる話、

それこそここでは書けないような内容の相談も、

ひとつやふたつじゃありません。



そして僕が特殊だなと思う相談の中で、

あまり口外はしないようにしていながらも、

本人が『ブログに書いてくださいよ』などと、

事が解決したので、

それを残しておきたいという依頼もあったりします。



今日はそのうちの1つ。



世にも奇妙なお話をアップしたいと思います。



この話の性質上、

1日公開して、

明日のこの時間にはアメンバー限定記事になるようにします。

ご了承ください。










あの日もいつも通り、

夜7時頃にメールボックスを開いて、

400件近い相談メールに目を通し、

一つ一つに返事をしていました。



お気に入りのフレイバーコーヒーをいれて、

少し休憩を挟み、

時計を見ると、

もう深夜0時。



あと190件だなぁ…



よし!

と気合いを入れて、

もう一度パソコンに向かい、

メールを開きました。



その内容は、

当時の文面そのままにコピペしますと…




『こんばんは。

 私は平野区に住んでいます、

 アヤコと言います。

 相談したい事がありまして、

 適切な方を探していたところ、

 谷川さんの名前が聞こえてきましたので、

 お忙しいとは思いましたが、

 失礼を承知でメールしました』



とても理路整然としていて、

とても相談者とは思えない文面でした。


僕はその先を読み進んでいきました。



『信じ難い事だとは思うのですが、

 どうか先入観なく、

 私の感じたままの話を聞いていただきたいと思います。


 私の父は、

 ラブホテル経営で有名な企業の社長です。

 友人が経営するホテルが経営悪化し、

 何とかして助けてあげたいという事で、

 父は友人のラブホテルを買収しました。


 私達家族は反対したのですが、

 昔気質な人間の父は、

 私達の反対を押し切り、

 友情を優先しました。


 それが異変の始まりでした』



なにやら、

雲行きの怪しい話になってきたなと思い、

先を読むのに躊躇しましたが、

好奇心が先立ち、

僕はそのメールを最後まで読む事になってしまいました。



『買い取ったホテルの外観が悪いと、

 父は外装工事を決断しました。

 しかしながら、

 着工のその日、

 新調したばかりのクレーンが壊れ、

 吊っていた鉄筋が落ち、

 業者の方が何名か大怪我を負いました。


 それからしばらくは普通に工事は進んだのですが、

 ホテル内のただならぬ雰囲気や、

 奇妙な出来事が続き、

 いよいよ業者が撤退してしまいました。


 父はそれでも、

 他の業者に頼み、

 工事を進めました。


 そして後任の業者もまた、

 組んだ足場が突然崩れ、

 死者が出てしまい、

 作業が中断。


 何名かの作業員が、

 急な発熱、

 体調不良に見舞われ、

 監督を残して、

 誰も作業員がいない状態になる異常事態になりました』



思わず、

メールを読み進んだ事を後悔しそうな内容に、

額から汗が滲み出てきました…



『業界の噂は一気に広まり、

 買い取ったホテルをたたまないといけない事態になり、

 父は心労が祟って倒れてしまいました。


 入院中も、

 何度もうなされては、

 「タカトシ…許してくれ…」

 と、友人に謝罪する声をあげていました。


 私達家族は、

 そのホテルを壊そうと思ったのですが、

 業者がどこも手をつけたがりません。


 仕方なく買い手を捜しながら、

 営業も続ける事にしました。

 もちろんお客さんはまばらで、

 一部の風俗関係の店舗しか利用してもらえず、

 そのお店で働く女性からも、

 ホテルを変えてほしいという希望が出ている次第です。


 そこで谷川さんにお願いしたいのです。

 あの呪われたホテルには何がいるのか、

 調査していただきたいのです。


 無理を頼んでいるのは承知の上ですが、

 十分な報酬も用意しています。

 お願いできませんでしょうか』



僕の頭には『できません』という判断がすぐに下り、

返信をしようと思ったのですが、

その時、

僕の携帯が鳴りました。



何となく誰かわかる気がしました。

きっと家族のうちの誰かです。



携帯の液晶画面を見て、

弟からの電話とわかり、

返信を待ち、

電話に出ました。



『おう、兄貴。

 元気?』



軽快な弟の声が聞こえ、

少しホッとしました。



『あぁ、元気やけど、

 どうかしたんか?』



『いや、別に用はないねんけど、

 急に何か心配になってさ』



何度も申し上げていますが、

ウチの一家は霊感一家でして、

父は霊は見えないけど触れますし、

母は予知夢をよく見ますし、

妹は住所や写真から、

その建物に霊がいるか探知できますし、

何よりもこの弟は尋常ではない霊感の持ち主です。



クッキリ見えるのは当然ですが、

聞こえる、

感じれる、

触れれるという状態でして、

昔から僕には見えない誰かと話をしていました。



そんな弟が、

僕の事が気になって電話をしてくるときは、

決まって僕に良くない事が起きているときです。



『実はな…

 変なメール相談が一件あってさ…』



弟は少しの沈黙の後、

言いました。



『また霊的なやつかいな?

 兄貴、いい加減にしなアカンで?

 兄貴には霊感は一切ないんやから、

 その手の相談に乗るってことは、

 俺を引っ張り出す気あるって事やろ?

 かんべんしてくれよ。

 俺は便利屋じゃないんやからさ』



わかってはいます。

それはわかってるんですが、

この手の問題に関わる時、

弟は首を突っ込んできます。



好奇心ではありません。

彼には霊がいるというのは日常ですから、

今更、

この世のものではないものを見たい好奇心などありません。



むしろ関わりたくないというのは、

本音だと思います。



『じゃぁ相談に乗らんようにするわ。

 私じゃ力不足だって言うとく。

 ま、お前の力を借りるような事はせんから、

 安心してくれ』



『そ、そうか?

 ホンマに?

 それやったら良いんやけど…』



僕は電話を切り、

メールを返信しました。



『申し訳ございません。

 僕は霊媒師ではないので、

 その手の相談を賜ってはおりませんので、

 できましたらその筋のプロの方にお願いしてください。

 力になれなくてすみません』



少し申し訳ない気持ちもありましたが、

弟が絡まないこの手の相談を、

僕一人で何とかできる自信はありません。

無理です。

申し訳なさと、

なぜ僕を選んだのかが気になりながらも、

他のメール相談に答えて一日を終了したのは早朝3時でした。






それから一週間ほどして、

僕もこの事を忘れていたのですが、

僕の職場にお客さんが来て、

僕の記憶は甦りました。



『谷川くん、

 お客さんやで』



職場の人に言われて、

施設の玄関口に行くと、

見た事のない女性が立っていました。



彼女は丁寧に、

そして優雅にお辞儀をし、



『その節は、

 大変無理な相談をしてしまい、

 まことに申し訳ありませんでした』



と、深々と頭を下げられ、

何の事かわからずに慌ててしまいました。



『どうしたんですか!?

 申し訳ないんですが、

 あなた様がどちら様か、

 思い出せないんですよ…

 なのにそんな謝罪されると困りますよ』



すると彼女は顔をあげ、



『一週間ほど前に、

 ホテルの一件で相談した者です』



思い出しました。



『あぁ!あのメールの!?

 いや…どうしてここがわかったんですか?』



『ブログも拝見させていただきました。

 色々と情報が載っていましたので、

 調べて来ました。

 ご迷惑とは思ったのですが…』



と言うなり、

彼女は号泣し始めました。



職場内だったので、

申し訳なかったし、

急いで休憩をいただいて、

外にお連れして話を聞きました。



『実は、

 あれからずっと父の容態が変わらず、

 意識が戻りません…


 でも「タカトシ…」といううわ言は続いてまして、

 最近では「来るな…来るな…」と言うんです…

 不気味に感じ、

 言われた通りその筋のプロに頼んだのですが、

 それでも一向に良くならず、

 挙句の果てには、

 ホテルでも異変が起こるようになったんです…』



『異変?』



『はい。

 実はお客様ではなく、

 お向かいのマンションの住民から、

 防音設備はちゃんとしてるのかという苦情がありまして…』



『防音ですか…

 何か工事でも?』



『いえ、工事はもうやってません。

 苦情担当の者は、

 その方が「毎晩叫びやがって」と言っていたというんです』



ラブホテルですから、

色んな趣味の人もいるだろうと思いました。

それを察したように彼女は言います。



『ちなみに、

 苦情があった日は、

 誰もご利用になっていません…』



『え…』



『誰もいないはずなんです…

 なのに…』



『そのホテルじゃないんじゃないですか?

 別のところとか?』



『それも調べましたが、

 その方はウチのホテルだとおっしゃられまして、

 ホテルの部屋の電気がついていたとも…』



『本当に誰もいなかったんですか?』



『はい。

 間違いありません』



背筋に冷たいものを感じ、

色々と原因になりそうな事象を考えたのですが、

どれもこれも決定打になりそうにありません。



『それと…

 その…』



『…何です…?』



『その苦情をくださった方が、

 「その客の出入りを禁止しろよ!

  名前を叫んでたし、

  照合して出入り禁止にしろ!」

 とおっしゃるので、

 その名前を聞きました…』



『…もしかして…』



『はい…

 タカトシって奴だって…』









vol.2に続く…