今日は正月休みの最終日とあって、
めちゃくちゃダラダラ過ごしました。


とはいうものの、
メール相談は結構来てまして、
返信したり、
緊急性高い相談者には電話したりと、
あれこれする事はいっぱいでした。


それでも小説を読む時間もあったし、
楽器のメンテナンスする時間もあり、
ゆっくりできたかなと(^-^)


今日の小説のお供は


『ヘイゼルナッツのフレイバー・コーヒー』


でした。
香り豊かで、
時間を楽しむにはちょうど良いアイテム。


そうこうしていると、
元風俗嬢のアイが、
我が家に子どもを連れて来ました。


顔を見るなり


『パパ、
 ユーリがお年玉欲しいってさ』





……


そ…そうか…


偶然にも一枚余ったお年玉袋に、
3000円入れて渡しました。


ユーリは


『ジィジ、
 あーとー(ありがとうの略)』


とニコニコ。
まぁ、
子どもの笑顔にゃ勝てませんわ。


アイは父親に風俗で働かされ、
身も心も荒んでいました。


学生時代には、
父親がバイト先に来て、
バイト代を奪って行く、
そんな父一人子一人の父子家庭に育ち、
18歳で風俗店に連れていかれ、


『今日からコイツを働かせてくれ』


と、
知り合いだったオーナーに預けられ、
泣いて拒むアイを、
父親は何度も激しく殴りました。


嫌とは言えず、
アイはパン屋で働く夢を失い、
自暴自棄になり、
働いて稼いできたお金を、
ギャンブルで使い果たす父親を、
20歳の夏に包丁で刺しました。


一命は取り留めたものの、
アイは服役する事になり、
出所後、
再度風俗店で働く事になりました。


店で知り合った客と、
個人営業と称して会い、
店を仲介せずにお金を稼いでいた頃、
ユーリがお腹に宿りました。


父親は誰かわかりません。


アイからメールをもらったのは、
妊娠6ヶ月の頃でした。


頼れる身内がおらず、
お酒に手を出し、
アイはここでも自暴自棄になっていました。


その時に、
同じ店で働いていた別の相談者、
ユキにすすめられ、
僕の所にメールをくれたんですね。


彼女は何度も


『死にたい』


と言っていました。
自棄になり、
大きくなったお腹を、
自分で殴り付けるほどの状態。


僕はアイに会いにいきました。


アイは大きなお腹とは裏腹に、
頬がコケており、
栄養をちゃんと取っていないのがわかり、
すぐに病院へ行きました。


保険に入っておらず、
入院費などが払えない状況でしたが、
それを知ったユキが、
店の女の子達からカンパを募り、
出産費用を用立ててくれました。


夜の世界には、
色んな傷を持つ人がたくさんおり、
もちろん

『身一つ、
 自分の力で生きていく』

という思いなどもありますが、
同じような傷を持っていたり、
その傷の痛みがわかる人がたくさんいます。


アイの父親を捜し出し、
費用を払わせようと思い、
手詰まりの状態でした。
最悪、
僕が負担しようと覚悟していた矢先でした。


ぶ厚い封筒を、
照れ臭そうに

『はい。
 もう二度とこんなことせんからね』

と言って渡してきたユキに感謝し、
アイは治療を受ける事ができました。


アイは


『余計な事すんなよ…
 こんなことされたら、
 意地でも死ねんやんか…』


と涙を流し、
養生しながら出産の瞬間を待ちました。


お医者さんからは


『お酒やタバコの影響があるかもしれない。
 最悪のケースも考えておいてほしい』


と言われ、
アイと二人で落ち込みました。


そんなアイを元気付けてくれたのは、
やはり仕事仲間でした。


僕は週に2~3回面会に行ったのですが、
毎日誰かがそこにいました。


アイは言いました。


『何か不思議やね。
 働いてた時は全く仲良くなかったのに、
 皆こうして来てくれるなんて、
 妊娠ってそういうモンなんかなぁ?』


僕は言いました。


『みんな過去に色々抱えてて、
 それで夜の世界に飛び込んで、
 色んな事を諦めたり、
 奪われたりしてるやろ?
 俺は単純に、
 アイに頑張ってほしいから、
 わざわざ見舞いに来てくれてるんやと思う』


アイは言いました。


『…そっか…
 みんな色々あんねんなぁ…
 ユキちゃんがさぁ、
 みんなでお金出したんやから、
 みんなの子やでって言うねん。
 ウチ、
 みんなの子を生むんやね…』


そういって、
アイは恥ずかしそうに笑いました。


入院から2ヶ月ほど経ったある日、
その日は僕と、
お店の友達であるミサキさんがいた時、
突然アイが腹痛を訴え、
緊急で治療室に搬送されました。


僕もミサキさんも初めての事だし、
何より予定より一ヶ月以上早いとあって、
何かの病気かと慌てふためきました。


治療室に入ってから数時間、
ミサキさんは店の女の子に電話し、
僕はただただ治療室前で、
落ち着きなく歩き回ってるだけでした。


そして深夜1時、
店の女の子が何人か来た時、
治療中の電気が消え、
先生が出てきました。


『出産予定よりだいぶ早かったので、
 未熟児ですが、
 母子ともに無事です』


腰が抜けそうになりました。

店の女の子達も、
抱き合って喜んでいました。


僕達がアイの赤ちゃんに会ったのは、
出産から2ヶ月を過ぎた頃でした。


真っ赤っかで、
小さくて、
目元口元がアイそっくりな、
とっても可愛い赤ちゃん。


アイは言いました。


『栄チャン、
 ありがとう。
 やっと抱っこさせれるわ。
 名前ね、
 みんなと話し合って、
 ユーリにしたよ』


僕は首の座らない赤ちゃんを、
泣かないようにそっと抱き上げました。


なぜか涙が出てきました。


『アイ、
 よう頑張ったなぁ。
 お前は凄い奴やで。
 こんな可愛い子を生んだんやで。
 ホンマすごいわ』


アイは一緒に泣いて言いました。


『みんながおらんかったら、
 こんな感動も感じれんかった…
 これから目一杯ユーリを可愛がって、
 立派に育てるからね』


僕とアイは、
間にユーリを挟んで、
抱き合って泣きました。





退院して、
しばらくは生活保護を受けて生活し、
大きくなったら仕事を探すというアイに、
その手の相談に乗ってくれる人を紹介し、
引っ越しの手伝いやら何やらと、
可愛いユーリのためにせっせと手伝いました。


『栄チャン、
 お願いあんねん…』


『ん?何?』


『ウチさぁ、
 親父が最低な奴やったやん?』


『…まぁな…』


『今までずっと、
 栄チャンが親父役やってくれてたし、
 これからもウチのパパやってほしいねん』


『え!?』


『だからぁ!
 私のパパ、
 ユーリのおじいちゃんをしてほしいねん!』


『お願い!』


そう言った横で、
ユキに抱っこされていたユーリが泣き出し、
アイはミルクをあげました。


何となく、
おじいちゃんしてる自分を思い浮かべ、
正式な養子縁組ではない、
心のパパ&おじいちゃんなら、
引き受けても良いかなと思いました。


『アイ、
 お前とユーリさえよかったら、
 何ができるかはわからんけど、
 パパ&おじいちゃんやらしてくれや』





その日から、
僕とアイは心の親子になり、
ユーリは僕をジィジと呼ぶようになりました。


アイが忙しい時は、
ユキ達がユーリの面倒を見て、
誰も手が空かない時は、
僕が面倒見に行ってます。


ユーリももう3歳。


保育園に通い、
毎日お友達と元気一杯遊んでます。


アイは、
パン屋で働く夢を復活させ、
修業の毎日。


ユーリにはお姉ちゃんが20人ほどおり、
血のつながらないおじいちゃんもいる、
そんな支援の中で、
元気に育ってます。