10年前に相談で関わった子ども達も、
今や22~27歳。
女の子達の多くは結婚しており、
男の子達の多くはまだ結婚はしていない。
もちろん結婚が全ての幸せの頂点だとは思わないし、
結婚する事で全てが水に流せるわけでもない。
でも、10年前に、
イジメやリストカット、
ドラッグや暴走族がらみの相談を受けていた子ども達が、
結婚式に僕を呼んでくれるのはとても嬉しい。
僭越ながら、
親のような気持ちではにかむ笑顔を見ている。
純白のウェディングドレスやタキシードは、
子ども達の
『栄チャン、もう大丈夫だよ』
というメッセージのように、
僕の胸は熱くなる。
相談を受けた中で一番困難だったケースというのはないが、
一番苦労したケースはあった。
9年前、
僕は風俗店に乗り込み、
ボコボコにされた事があります。
未成年を働かせる店は、
もちろん摘発対象ではある。
しかも、未成年を働かせるという違法行為を働く店舗が、
それ以外の違法を行っていない事は少ない。
ホテルヘルスという業種があるが、
もちろん本番行為は禁止です。
しかし、それはあくまで表向きの話であり、
少なくともホテルの個室という空間で、
2人でいるわけですから、
一夜限りの恋に落ちて、
本番行為に至ったというのは仕方のない話とされています。
悪質なのは、
建前上は本番行為を禁止しておきながら、
業績の思わしくない女の子に、
本番をしてでも稼いで来いという指令を出す店舗です。
少ないのかと思いきや、
意外に多いんですね。
ある程度売り上げを出している女の子には言わないが、
そうでもない子には恫喝する事もあると聞いています。
開店のミーティングで、
本番行為をしてでも稼いで来いと言う店舗もあります。
しかも、
そういう店の多くは、
未成年とわかっていて雇うケースも多いのです。
一つ違反をしている店舗が、
他は円滑に法律を守って営業する事などありえない。
未成年に本番行為を強要し、
しかも、ドラッグ&ゴムなしの○万円コースを提案してきたというケースがありました。
僕は怒りに身を任せ、
店舗まで乗り込んでいき、
警察に通報するという事を伝えました。
店を出ようと思った時には遅かった。
僕は金属バットで暴行を受け、
病院に運び込まれました。
風俗店は、いわゆる暴力団の資金源ですから、
乗り込んでタダで済むはずもありません。
しかし、手を出した以上、
未成年を働かせていた以上、
相手もタダでは済みません。
その店舗はすぐに取り締まられ、
営業停止になりました。
夜の世界は、
高額の金額が動く世界です。
たかが1店舗だと言っても、
億単位のお金を失う事になるんです。
その原因が僕とわかれば、
もちろんその後も危険な目にあった事もあります。
しかし、それでも許せなかった。
相談者が風俗で働くようになったのは、
あるホストと知り合った事がキッカケです。
そのホストは、
組事務所に出入りしている若者で、
バイニンでした。
相談者は彼にハマり、
ドラッグを覚え、
風俗店で働くようになったのです。
僕は彼を追い回し、
事情を聞く事ができました。
そしてその働いている店舗の悪質な行為を知り、
乗り込んだわけです。
入院中、
彼女は見舞いに来てくれました。
どういうわけか、
そのホスト君も来ました。
僕は彼、彼女を叱りませんでした。
『今まであんな奴ら相手に、
泥沼やったんやなぁ。
よう頑張った。
もう頑張らんでいいよ』
そう微笑むのが精一杯でした。
彼と彼女はその後、
夜の世界から抜け出し、
中毒禁断症状の治療に専念し、
何とか社会復帰に至りました。
そして先々月、
やっと2人は結婚しました。
そのスピーチでのこと。。。
『僕はどうしようもない人生を歩んでいました。
今は後悔ばかりですが、
あの頃はそれしかなかった。
自分を認めてくれる世界はそこにしかなかった。
でも、そうじゃない世界に、
僕を認めてくれる人が現れた。
僕を叱らずに、
もう頑張るなと優しく抱きとめてくれた人ができた。
僕は寂しかった。
誰も愛してくれなかった。
でももう大丈夫。
栄チャン、ほんとにありがとう』
僕はよかったと思う。
もちろん苦しい時代があり、
その時に受けた傷は治りにくい。
でも、その苦しみがそのままの姿で10年続く事はありえない。
人は必ず出会うからです。
人とのつながりは、
人を確実に成長させるからです。
10年ずっと同じ状態、
同じ感性で生きる方が難しい。
僕は出会った子ども達に、
今はそれでいい。
頑張らなくていい。
逃げていい。
これからもそういう言葉をかけて行こうと思います。
諦める必要はないから。