※追記 読み終えた感想 6/26(月)投稿
《樽とタタン》中島京子
妙なタイトル。表紙には赤い樽と可愛い女の子。少女は小学生。毎日学校が終わると坂の下のこの喫茶店にやってくる。
店の隅にある真ん中がくり抜いた大きなコーヒー豆を入れる赤い樽で、本を読んだり、常連客の話を聞いて創造の世界を広げて独り時間を楽しんでいる。
常連客の白ひげの老小説家が少女を『樽とタタン』と名付け少女はタタンと呼ばれるように。
サブタイトルは9つで構成され、登場人物は同じなので読みやすい。このサブタイトル、摩訶不思議なタイトルばかりですが、読み進めるとなーるほど💡そういう事ね、となる。
私が特に印象深かったのは、
【ぱっと消えてぴっと入る】
タタンは3才から12才まで団地で暮らしていて、共働きの両親の代わりに幼稚園から小学校になるまで祖母が面倒をみてくれていた。おばあちゃんは独特の死生観を持ち、ある日「おれはなぁ、死んだらそれっきりだと思っている電気が消えるみてぇに生きていたときのことが、みんな消えるんじゃねぇかとおれは思ってるんだ」と。
後におばあちゃんが亡くなりこの言葉の意味がタタンの心にぴっと入るのですが・・・。
あ~、何か懐かしいなぁ。
私にも子供の頃同居していた祖母(父親の母)がいました。私は保育園が大嫌いな子供だったので時々ズル休みしてました。そんな時おばあちゃんと一緒にゆったり流れる時間がすごく好きだったなぁ。
裏庭の軍鶏シャモに餌を作って与えたり、冬場の火鉢で暖を取りながら、かき餅を焼いてくれたおばあちゃん。一緒にお相撲さん見てたよね。何より記憶してるのは昔ながらの箪笥の一番上にはお菓子がたんまり入れられてて、無類の麦焦がしが好きだったおばあちゃん。私が20才頃に亡くなっちゃったけど《樽とタタン》を読んでおばあちゃんの記憶が蘇り懐かしさで、むせかえるようでした。
あとねこれ、
【サンタ・クロースとしもやけ】
しもやけって懐かしい響きだなぁって。
私が小学生の頃、凍りつくような冬場は午後からの授業はしもやけの足が痒くてたまらないの。しまいには赤黒くなった指を糸で縛り母が針で突いてくれてね・・・。遠き冬の夜🌃、懐かしすぎて 92才の母は覚えているでしょうか?私のしもやけ(笑)
あー、どれもこれもノスタルジック。
この本はどこか昭和レトロを感じる。
大切だった懐かしい人々を想い起こさ
せてくれる。
タルトタタンのように噛めば噛むほどホロホロ溶けてキャラメリゼがと甘く沁みてココロまで優しくなるような本でした。
*THE END*