大島渚監督の「愛と希望の街(鳩を売る少年)」、「日本の夜と霧」を続けて見る。前者はともかく、後者について現時点で有意義な映画評、あるいは的外れでない感想を書ける人物が存命しているとは思えない。60年安保闘争とそれに先立つ10年少しの間の民主あるいは革命闘争の現場を知らなければ、どんな批評も皮相なものにしかなり得ないだろう。映画の中で誰も日本共産党とは言ってなかったのではないか。前衛党とは言っていた。党派内部に体制側のスパイがいるのではないかと疑心暗鬼にかられるのはすでに歴史の必然か。役者は大抵の役を演じられるとは言え、津川雅彦のその後の役者人生の中で階級闘争に関する台詞をしゃべる場面が一度でもあったのだろうか?日本の社会はあまりにも変わってしまった。戦前と戦後の違いと同様に、戦後しばらくと高度成長期以降との間には断絶と呼びたくなるほどの相違がある。高橋和己の小説でも読めば、少しは当時の雰囲気が偲べるだろうか?現時点の政治常識に基づいてアナクロニズムを指摘したり、スターリン主義批判や社会主義国の失政をあげつらうのは全く的外れでしかないだろう。