王妃が懐妊した…喜ばしい事だと思っていたが
正直言って実感は無かったが納得させて
その夜は広間で呪言の宴が賑やかに開かれた
目の前には彼が演奏しているが…気鬱のまま
何故こんなにも不快なのか?自分でも分からない
仮面をずっと付けているのが気に入らない
そんな自分の気持ちを察しているらしく
王妃も俯いて何も言わずにただ視線を時折り
その時…舞姫の一人が袖を強く振りかざし
仮面が勢いよく外れた瞬間…王妃の空気が
間違いない…あの男だと一瞬にして分かった
髪の長さこそ変われど頽廃的な美貌も
あの時は陛下に抱き抱えられていたから
分からなかった…どうしてくれようか?
突然姿を消してしまったあの男が憎いのに
絡み合う二人の視線を壊してやりたい
見ているがいい…!堕としてやるからまた
懐妊した実感が無いままだが…構わない
腹の子には愛情など一瞬たりとも持ち得てない
