彼が何気なく話す会話の端々から嗅ぎ取ってしまうもの。
その一言ひと言に潜んでいるものが
一瞬で私の表情を曇らせる。
それは
奥さんの存在。
そして
その奥さんとの結婚生活。
「俺、朝は和食派なんだよね」
奥さんが毎朝おいしい和食を作ってくれるんだ…?
「オリーブ大好きなんだよ。家にも置いてあるんだ」
へぇ…奥さんが彼の好物を買い置きしてくれてるんだ…
毎日それをつまみながら、奥さんと晩酌してるの?
「マッシュポテト好きなんだよね。キッシュもうまいよね~」
あなたの口から「マッシュポテト」「キッシュ」だなんて…
奥さんがそういう料理を作ってくれるから覚えたの?
「ちゃんとダウニー使って洗濯してるよ。ダウニーってすげーイイ匂いじゃない?」
へぇ… あなたの家ではダウニーで洗濯してるんだ…
奥さんが、あなたのと二人分、ダウニーでね。。
だから
私は彼には和食を作りたくなくなった。
意地でも作らない。
彼の好物のオリーブを
間違えたって買い置きしたりなんか、しない。
マッシュポテトもキッシュも作らない。
あの人が泊まりに来た時に差し出している
バスタオルも、Tシャツも
ダウニーで洗ったりなんかしない。
うちでは、あえて違う柔軟剤を使うの。
比べられたくない。
同じ歳の、その女の人と。
その女の人との結婚生活と、私のひとり暮らしを。
ぬくぬくと送っている裕福な結婚生活と
必死に働きながら生きている、私の生活を。
あの日、友達から聞いた
彼の奥さんのことや、彼らの結婚事情。
あれを聞いてから、ますますそう思うようになった。
これは
対抗心…?
バカげているのかもしれないけど
これは きっと
私の、愛人の、くだらない意地。